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宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節

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槙 深遠(まき しんえん)は、時の流れの異なる空間を往来しながら結界の修復を続ける【脱厄術師(だつやくじゅつし)】。主従関係にある鷹丸家の娘、維知香は、その身に災厄を宿す【宿災(…
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#創作

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 春・壱1

あらすじ 槙 深遠(まき しんえん)は、時の流れの異なる空間を往来しながら結界の修復を続…

Luno企画
1年前
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宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・壱1

 深遠の鼻を突いたのは、逞しく息づく緑の香り。耳に流れ込むのは蝉の鳴き声。体全体が生ぬる…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・壱2

 墓前に手向ける花を求め、町へ。夏空の下、半里ほどの道のりを歩くのは全く苦ではない。体は…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・壱3

 顔面を覆うほど伸びてしまった前髪と、肩を過ぎてしまった後ろ髪を、ばさりと切り落としても…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・弐1

「私も、ついて行っていい?」 「駄目だと言っても、ついてくるんだろう?」 「ええ」  学校…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・弐2

「君は、どんな時に恐怖を覚えるんだ?」 「なあに? 急にそんなこと」 「怖いもの知らずが抱…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・弐3

 深遠の胸中など知らず、維知香は、ひと仕事終えた開放感に包まれている。ごく普通に、散歩にでも来たのかのように、大きく息を吸い込み、木漏れ日に目を細めながら木々を見上げ、緑の香りを楽しんでいる。 「ねえ、深遠」  維知香の手が、深遠の作務衣に触れる。ぐいと袖を引っ張り、顔を寄せ、他に誰もいないというのに声を潜めた。 「そろそろ、あそこの中を覗いて見たいんだけど……駄目かしら?」 「駄目だ」  即答。わざとらしく頬を膨らませた維知香を、深遠は無言で見据える。  維知香が

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・弐4

 灯馬の白は、洞窟の奥へ奥へと流される。苦悶に歪む灯馬の顔。その胸元には、維知香の姿。顔…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・弐5

 槙家の縁側。ヒグラシが夕暮れを告げている。座敷に敷かれた布団で、維知香が静かに眠ってい…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・弐6

 薄っすらと開いた、維知香の瞼。瞬き。続く瞬き。そして大きく目を見開く。深遠の姿を求めて…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・弐7

 深遠は背中にぶつかる維知香の泣き声を、意識的に耳から排除した。聞こえない。泣き声など、…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 夏・参1

 朝日が描く白い筋。カーテンの隙間から入り込む輝き。汗ばんだ体を起こし、維知香は窓辺へと…

Luno企画
1年前