宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 春・壱7
二人が座敷に着くと、漆塗りの卓は賑やかな様相を見せていた。菊野は和やかな笑みを見せ、ほんのりと頬を赤らめた正一は、維知香に向かって声を上げる。
「維知香、お転婆が過ぎるんじゃないか? せっかく素敵な着物を着たというのに、それじゃあ誰が見たって、お転婆で聞き分けのない子ども、そのものじゃないか」
「ごめんなさい」
「私じゃなく、深遠さんに謝りなさい」
「私なら構いません」
深遠が言葉を挟むも、正一は右手を立ててそれを制し、言葉を繋げる。
「いいかい? お母さん達にも謝