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宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節

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槙 深遠(まき しんえん)は、時の流れの異なる空間を往来しながら結界の修復を続ける【脱厄術師(だつやくじゅつし)】。主従関係にある鷹丸家の娘、維知香は、その身に災厄を宿す【宿災(…
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2023年3月の記事一覧

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 春・壱1

あらすじ 槙 深遠(まき しんえん)は、時の流れの異なる空間を往来しながら結界の修復を続…

Luno企画
1年前
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宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 春・壱2

 砂利を踏んでやってきたのは、漆黒のハイヤー。門の前で停車の姿勢に入ると同時、後部座席の…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 春・壱3

 木枠にはめられた曇りガラスが軽快な音を奏で、それに反応した足音が、家の奥から近づいてく…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 春・壱4

 声を荒げず事の成り行きを見守った正一は、首を振り、やれやれといった動きを見せる。 「着…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 春・壱5

 盆を手にした割烹着姿の女が二人。同じく盆を手にした男が一人。一番に座敷に上がり、品の良…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 春・壱6

 頭を垂れ、戻し、音もたてぬ身のこなしで立ち上がり、深遠は廊下へ。何か言いかけた桜子の横…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 春・壱7

 二人が座敷に着くと、漆塗りの卓は賑やかな様相を見せていた。菊野は和やかな笑みを見せ、ほんのりと頬を赤らめた正一は、維知香に向かって声を上げる。 「維知香、お転婆が過ぎるんじゃないか? せっかく素敵な着物を着たというのに、それじゃあ誰が見たって、お転婆で聞き分けのない子ども、そのものじゃないか」 「ごめんなさい」 「私じゃなく、深遠さんに謝りなさい」 「私なら構いません」  深遠が言葉を挟むも、正一は右手を立ててそれを制し、言葉を繋げる。 「いいかい? お母さん達にも謝

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 春・弐1

「君に、友人はいるのか?」  麗らかな春の午後。草花の香りをふくむ風の中、並んで小川沿い…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 春・弐2

「ひとり……私は、ひとりだなんて思ってないわよ。思ったこと、一度だってない。家族、深遠、…

Luno企画
1年前

宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 春・弐3

 深遠の脳裏に、幼い維知香の姿が甦る。災厄と通じるのは早かった。三歳の頃にはもう、宿るの…

Luno企画
1年前