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予約した精神科へ行ってみた。

病院に通い始めてから既に19年間たったであろうか。
それ程までに付き合いが続くとは思わなかったのである。
ただし、この病院の今の先生がいたからこそ今の自分に至るわけである。
仮に違う先生だとしたらここまで先生を続けることはできなかったかもしれないし、どこかでやめていたのかもしれない。
色々な病院に何度も何度も電話をかけ続け、
やっと予約が取れたこの病院であった。


予約が取れた病院はできたばかりであった。
精神科専門の大きな病院の分院のような形で開業された新しい病院であり、
そこへたまたま私が電話をしてまだ埋まっていなかった予約枠を勝ち取れたわけである。
今その病院には多くの先生方が診察を行っているが、
できたばかりの当初はそれ程先生は多くなかったと思う。

初診で伺うと、
病院の院長先生が診てくれることとなった。
その先生に今でもお世話になっている。


初診ではこんな感じだったと思う。

まずアンケートのようなものを渡された。
大抵の病院で初診で書くようなアンケートである。
違うのは、家系図のようなものがあり、
誰かが何の病気になったか、また、精神障害系の病気を患っているかどうかまで書くようになっていたことであった。

家族や親族でそういう病気を患っている人はいなかったので、
その欄は書くことはなかったのだが。


お医者さんと対面して、
「どうされましたか?」
「毎日が辛いんです。私は小学校で先生をしているのですがもう限界のようです。」
「どのように限界なのですか?」
「毎日学校に行く気力がもうありません。授業をやっていても何をやっているかわからなくなります。人と話すのも億劫で、なんとか頑張ってやっている感じです。」
「寝られてますか?」
「一応寝られる時は寝ています。」
「仕事をしていて大変だと思うことはありますか?」
「とにかくしんどくて苦しくて辛いです。」

そういったやり取りを行ったように思う。
おそらくこんな感じだったと思う。
詳細なやりとりは忘れてしまっているが、
次のことははっきりと覚えている。

「うつ状態だから仕事を少し長めに休んだ方がいいと思います。」


お医者さんはそう言った。

その時の私は休むつもりなど全くなかったのである。
薬をもらえれば大丈夫だし働き続けられる、長く休むなんてもってのほかで、
そんな迷惑をかけることはできないと思っていた。

初めて病院へ行ったのは1年目が終わって2年目に入ってすぐのことだったと思う。
2年目は、3年生の担任になっていた。
つまりは1年目にもった子たちを再び見ることになったのである。
ただし、クラス替えをしたので同じメンバーではない。
そして一緒に組む先生も去年と同じだった。
今考えればこれ程やりやすい環境はないはずである。
子供たちは学年全体で41名程度。しかも持ち上がりで顔と名前もわかっているし、クラス替えをしたとはいえ半分程度の子たちは既に1年間担任をしたのでわかっている。
一緒に組む先生も同じ先生なのでよくわかっている。

今考えれば本当にやりやすい恵まれた環境だったのだろう。

しかし、私はもはや限界を既に通り越していた。
1年間はなんとかやり終えた。
しかし、「これをまたもう1年やるのか。」と絶望的な気持ちになっていた。

そして、
もうこれ以上はできない。
本気でそう思っていた。
去年1年間やってきたことをまたもう1年やるのか。
さらにこれが定年まで後何年も何十年も続くのかと。


軽い気持ちで東京の先生を受験した。
なんとか一番最後でギリギリ採用された。
赴任先は荒れてもなく至って普通の学校であり、受け持つ子供も20人程度、しかも2年生。
新規採用ということで校務分掌もあってないようなもの。
周りは全てベテランで困ったら聞いたり助けてもらえばよい環境。

今の私からすればこれ程までの好条件はないと思える。


しかし当時の私はもはや限界であった。
だけれども長期で休みを取るわけにはいかない。
それは恥であり、さらには休んだ後どうなってしまうのかもわからない。


「休みたくはないんですよねぇ。」
「でも、今のあなたの状態からすると働ける状況ではなさそうですがね。」
「しかしもうちょっとだけ頑張りたいんです。」
「…。では、お薬を飲んでみて様子を見てみましょう。」


薬が処方された。
これを飲めばまた元気に働ける。
そう思っていた。

初めにもらったのは2種類の薬だと思う。
その時はわからなかったが、
どちらも安定剤であり、抗うつ薬ではなかった。
ただし、当時の自分はこれで元気になって働けると思っていた。

ちなみにその2つの薬は今も飲み続けている。
加えて抗うつ剤を1種類と、睡眠導入剤も飲んでいる。


とりあえず精神科を受診できた。
お薬ももらえた。
これを飲めばなんとか頑張れるだろう。


そう思っていたのではあるが…。

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