ヒエタニエミの空に
黄昏の時間はゆっくりと流れる。
まるで、その美しい光のなかで囚われているように。
揺れる波、唄う鳥、ヒエタニエミの水平線。
夜の10時30分ころ。ヘルシンキの街から西に向かって——夕日の方へと歩き始めました。ビルの窓ガラスは斜めの光を鋭く反射して、低い空に浮かぶ白い月はちょうど半円を描いています。
大きな墓地の横を通り抜け、さらにしばらく歩くと穏やかな水の平面が見えてきます。
おだやかな。それはそれは、おだやかな。
まっさらな新雪の上を歩くかのように、鴨たちは、少しの音も立てずに水面を自由気ままに泳いでます。
さらに歩みを進めると、西に面するヒエタニエミビーチに行き着きます。夕陽を背負った人びとが、ボールを蹴ったり、投げたりと。
彩度を欠いた虹色の空。
飛び立つ鳥。
昇る月。
帰る頃には日付はもう変わろうとしていて、ボールを蹴る人も、投げる人もどこかへと消えていました。
帰路へ。
長い夜でした。
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