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アアルトを訪ねて




アルヴァ・アアルト。

「北欧の賢人」とも評されたフィンランドを代表する建築家/デザイナーのアアルトは日本での人気もとりわけ高く、多くの人が一度は耳にしたことがある名前ではないかと思います。また同時に、アアルトついての記事はもう書き尽くされていて、新たな視点を探すことはそう簡単ではないかもしれません。

しかし、現地に滞在をしていると思わぬところでアアルトの昔話やこぼれ話に出会うもので、それがなかなかおもしろかったりもします。今回は、アアルト大学への留学中に拾い集めた、アアルトにまつわるちょっとしたエピソードをお届けします。




アアルトベース / Aalto Vase

アアルトの名前をこのプロダクトから知った方も多いはず。元々はレストラン・サヴォイ / Ravintola Savoyのためのデザインされたもので、サヴォイベース / Savoy Vaseとも呼ばれています。


アアルトの名前でもある"Aalto" はフィンランド語で「波」を意味しているため、この花瓶は波をモチーフとしてるのかと思いきや、スケッチの段階では「エスキモーの革パンツ / Eskimoerindens skinnbuxa」とも呼ばれていたそうで、実はその由来は定かでないようです。(エスキモーとは、北極圏に住む先住民族のこと)


マイレア邸 / Villa Mairea

アアルトの最高傑作とも評されるマイレア邸。この豪邸の依頼主はハッリ・グリクセン / Harry Gullichsenで、Artekをアアルト夫妻と共に創業した実業家です。「マイレア邸」の名前は、奥さんのマイレ・グリクセン / Maire Gullichsenからきています。

グリクセン夫妻は芸術分野のパトロン的存在だったため、ほぼ制約のない予算でデザインをすることができたそう。インテリアは、妻のアイノ・アアルトが担当していたようです。また、内部にはピカソの絵画など数々の芸術品が(触れられるような距離に…)置いてあります。

また、マイレ・グリクセンはいくつかプロダクトをデザインしていて、この乳白色のグラスはそのうちのひとつ。Iittala から販売されていました。


アアルトの特等席

アアルトにはお決まりの場所が自宅やスタジオにあったそうで、そのひとつがアアルトハウス / Aalto Houseの仕事机です。建物の中で最も日当たりが良く、かつ景色もよい特等席。ここでのびのびと設計をするアアルトの姿が想像されます。


そしてもうひとつが、スタジオアアルト / Studio Aaltoの食堂のテーブルです。アアルトは、スタッフ全員の顔が見渡せる一番奥の席に座りながら食事を楽しんでいたそう。


アアルトの眠る場所

そして最後に、アアルトの眠る場所。アルヴァ・アアルトは綺麗な海辺の墓地の片隅に今も静かに眠っています。2人の妻アイノ・アアルトとエリッサ・アアルト、そして新婚旅行で訪れたイタリアの大理石と共に。(設計はエリッサ・アアルトだそう)



デザイン/芸術への情熱はもちろんのこと、社交的で人との繋がりも多かったアアルトは多岐にわたる活動を行なっていました。それらは独立後のフィンランド、戦災復興期のフィンランドに「モダンデザイン」というひとつのアイデンティティを、そして人々に大きな希望を与えたことでしょう。




以下、記事の参考として基本的な情報と写真を掲載しておきます。


アルヴァ・アアルト / Alvar Aalto

・1898/2/3 — 1976/5/11
・フィンランド/クオルタネ生まれ


アアルト大学 / Aalto University

・2010年設立(3大学の合併)
・前身はヘルシンキ工科大学/ヘルシンキ経済大学/ヘルシンキ美術大学





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