見出し画像

エントロピーの減少とは、映画「TENETテネット」

公開当初、劇場で観たけれどもう一度絶対観たいと思っていた映画「TENET テネット」。アマプラで、100円レンタルに期間限定で上がっていたので復習鑑賞(現在は対象外)

正直、一度観ただけで理解したとは到底思えず、その上物理の知識など貧弱極まりないので、何度観ても上澄みの上澄み程度の理解具合かとは思うのだけれど、二回目の方がストーリーの記憶があったのでまだ観やすかった。

男は、とあるテロ事件に特殊部隊として突入するが、捉えられてしまい拷問の末毒薬を飲んで自死を図る。ところが男は死ぬどころか治療を施された上で覚醒し、あるミッションを伝えられる。キーワードは「TENET」。未来から届けられた時間逆行の武器の悪用を防ぎ、第三次世界大戦を防ぐという内容だった。

男はテロ現場でも、時間逆行する拳銃を目撃していたのだが、考えるよりも感じろという現象は、エントロピーの減少によって起こる。

エントロピーの減少?

これはあんまり上手く説明できないけれど、時間とともに進んでいく現象で(結びつけられて語られることが多い)、常識として私たちの中にある一度混ぜ合わされたものは元に戻らないという「不可逆」は、エントロピーが増大していくと表現する。
つまり、私たちが通常認識している世界は、時間の経過とともにエントロピーは増大するのが常で、絵の具の原色の赤と青を混ぜて紫にはなるが、その逆(紫が赤と青に分離する)はありえない。殻を割った卵は、一度箸でかき混ぜたら、2度と元の白身と黄身の分離した状態には戻らないのと同じことだ。

ただ未来にはそのエントロピーの減少によって作られた武器により、世界が滅びるような第三次世界大戦が引き起こされたのだと言う。

それを過去(と言う現在)に戻って防ぐと言うのが、男に課せられた任務、と言うわけだ。

幾重にも張り巡らされたミッションの矢印は、時間経過ともに混沌としてきて、それに時間逆行が重なるものだから、難解極まりないのだけれどクリストファーノーラン監督作品は、映画の中に「家族愛」「親子愛」などというキーワードが潜んでいることが多い(私の観た映画では)。

今回象徴的なのは、財を成して武器商人となったセイターの妻であるキャット。美しく、スレンダーなスタイルとは裏腹に、愛息子と大切な思い出を人質に取られ、愛想の尽きた男と別れることもできない悲しい女性。彼女の望みは、セイターから自由になり、愛する息子と暮らせること。その夫セイターは第三次世界大戦へとつながる武器を握る需要人物。お互いの思惑が一致した時、キャットはミッションを遂行する男の作戦に乗り、命の危険に晒されながら人類滅亡を阻止し、愛する息子の未来を守ろうとする。

スクリーンショット 2021-07-19 15.55.33

そのミッションに相棒として行動するのはニール。彼がどういう素性で、どんな経緯で関わることになるのか、あまりよくわからないのだけれど、最後に誰から依頼されたのかが明かされ、謎だった主人公である男の正体もわかるようになっている(ネタバレサイトにはこのニールの正体を推測する声もあるようだ。本当か否かは不明)。

実は物理学者の方が解説しているページなどもさらっとチェックしてみたのだけれど、物理学的に説明できるところと、演出上面白くしている(やや矛盾がある)ところと混在しているらしい。知識が薄いとその辺りの区別は容易にはつきづらいだろうけれど、順序に従って追えるようになればもう少し理解が深まるかもしれない。ただ、もう少し、と言う程度かとは思う。

途中、傷を負ったキャットが男の作戦に乗って時間を逆行するのだけれど「ん?これはもしかして時間逆行したら傷が治るのではないのか?」とやや期待を込めてしまった。ただ実際にはキャットの肉体の時間軸は戻っておらず(傷は元に戻らず、治療という形で治癒に向かう)、肉体の逆行(究極に言えば若返る)というべく現象は起こっていない。

演出上面白いと思う展開にと言う見解を借りれば、このキャットの傷はラストのほう、セイターと対峙する場面で割と重要な役割を果たすのでそのあたりは展開上の歪みなのか、理論上でも正論なのか、とにかくこのままの方が面白い。

が視聴者としては一瞬混乱してしまう。時間が逆行すると言うのは単純に過去に行く(移動する)と言うよりも、自分の時間が戻ると思ってしまう。これは映像で逆回転のような行動や現象を見せるこの映画だからこそ、かもしれない。

二時間半、ずっと頭がぐるぐる回っていて、何とか一字一句、時間軸、今どこにいるのか、考えながら観て、清々しい脳の疲労感に見舞われる映画だ。

これを見ると、クリストファーノーランの他の映画もまた再見したくなる。これはエンドレスだなとつくづく思う。

また時間があればあと数回は観たい映画だ。ちょっと頭使いたいな、思考に鈍さが出てきているので喝を入れたい、などと言うときには最適だと思う。

自分が信じている常識など表層的なものにしか過ぎず、幾重にも「真実」や「真理」は存在している。多角的な視点で捉えることができれば、もっと世界は広がり、立体的になるのだろう。


他の作品、アマプラだと見放題です。

個人的には「インセプション」の方が好き


この記事が参加している募集

映画感想文

サポートをいただければ、これからもっともっと勉強し多くの知識を得ることに使います。