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狂おしいほどの恋愛映画を行定監督がエロティックに描く「窮鼠はチーズの夢を見る」

映画「窮鼠はチーズの夢を見る」。9月11日より公開されました。

【あらすじ】大学時代の先輩後輩という仲の、今ヶ瀬(成田凌)と大伴恭一(大倉忠義)。久しぶりに再会したと思ったら、調査員である今ヶ瀬は大伴の妻から依頼されたと言って大伴の浮気現場の証拠写真を持ってくる。
大伴は妻には報告しないという約束で、今ヶ瀬のある提案に乗ってしまうのだが、そこからどうしようもない未知の世界に迷い込むことになる。

原作は何度読んでも飽きない、BL漫画の傑作

これは水城せとなさんのコミックの映画化。公開に先駆けて、全ての作品が入った「オールインワンエディション」というバージョンで予習はバッチリ。

原作漫画はなかなかディープな仕上がり。もちろん根底にあるのは、今ヶ瀬の一途な思いと、人から愛されることで自己肯定をしてきた大伴の、どうしようもない優柔不断さとの絡み合いではあるのだけれど、昔から想いを寄せていたという今ヶ瀬から迫られ、大伴が体を開き、心を開かれることになる過程が大胆なタッチで描かれているのです。
これは・・・ジャニーズだし、大倉くんがどこまでOKしたのか、という危惧があり、そこまで原作に忠実ではなくて二人の関係性が薄まって見えるのではないかと思いましたが、そんな心配は無用でした。

大倉くんは格好良くて仕事もきっちりこなすいい男だけれど、変なところで図々しくて、迫られると拒めない優柔不断な男をうまく演じていて、魅力的なんだけどムカつく仕上がりになっていました。

恐ろしい年代の、モンスター級エロティック俳優開花

そして特筆すべきなのが、愛されることを執拗に求めながらもノンケの男に惹かれてしまった悲哀を、濡れた睫毛にセクシーに込めた面倒臭い男の子今ヶ瀬を、失神しそうなくらいエロティックに成田凌くんが演じていました。

先日終了した「MIU404」で高い演技力が改めて評判になっていた菅田将暉くんと並んで、20代後半のモンスター級俳優です、成田凌くん。

今ヶ瀬はタバコを燻らせる姿が印象的な線の細いイケメン。適当に遊んだりもするけれど、結局大学時代に一目惚れをした大伴のことがいまだに忘れられない一途な男。
迷いがありながらも、大伴が自分を受け入れ、そして優しくしてくれる日々を享受し絶対に離したくないと思う。その一方で、いつか大伴は魅力的な女のものになってしまうことはわかっているし、そうなってほしいとも思う。
自分の世界に引き入れて我を通すのか、それとも大伴を本来の姿に戻すのがいいのか、迷い苦しむ。

行定監督が「ナラタージュ」に続き、ジャニーズ俳優をうまく器用

大伴は昔から、誘われると断れない性格で、仕事もできるし優しいのだけれど、足元がフラフラして定まらない。今ヶ瀬からの告白に最初は戸惑うのだけれど、居心地の良さと一途な思いに絡め取られ、自分でも知らないうちに別の世界に誘われてしまう。

これは2人の人間が自分の気持ちと相手の幸せを天秤にかけて、一生懸命悩み考えながら、愛し合う物語。

監督したのは行定勲さん。どちらかと言えばファンタジックな映像がイメージにあったのですが、そうか・・・思えば「ナラタージュ」も行定さん。
こんなにもエロティックに大胆にどうしようもなく惹かれ合う2人の関係性を、漫画にかなり忠実に描いていて非常に良かった。

かなりかぶるシーンも多いけれど、ラストは少し違う、かな。そして漫画だとテンポよく挟まれるコメディタッチの部分はうまく削ぎ落として、2人の俳優に寄り添った作りになっていた。

そういえばナラタージュでは嵐のスター松潤をちょっとダサく仕上げていたし、今回はどうしようもない流され侍(とニックネームがつくほどの)大伴に大倉くんをうまく化けさせていた。すごい手腕。

サイドストーリー、女性陣の際立つ魅力

原作でも女性は2人の仲をかき乱すエッセンスになっているのだけれど、中でも「チワワちゃん」で注目を集めた吉田志織さんが恵まれていない生い立ちでも可愛く強く育ってきた魅力的な部下たまきとして登場。大伴にとって重要な存在となる。

キュートだし、ちょっと舌足らずな話し方好きなので、これからも活躍してほしい!

また、大伴と大学時代一番長く続いた元カノで、今ヶ瀬から強烈にライバル視される夏生を演じたのは、ゲス極のさとうほなみさん(ほないこかさん)。サバサバしていて、優柔不断な大伴のことをちゃんとリードしてコントロールする頭の切れる女をうまく演じていた。

学生時代はお似合いカップルだっただろうな・・・

他、乙女のような可憐な仮面を持つ大伴の元妻、大伴と不倫関係になる女、周囲を彩る絶妙なグラデーションが大伴という人物の情けなさや残酷な優しさを際立たせている。

追伸

2人はとても幸せそうに見える瞬間がある。ところが、その安らぎは2人を迷いの道へと誘い込んでいく。一方は、去っていく背中に怯え、一方は自分の気持ちに戸惑う。

何はともあれとにかく成田凌くんの恋する横顔が美しくて何度も倒れそうになる。あんな顔されて見つめられているのがわかっていて、あえて知らないフリするのとか絶対無理。

ファンの方は必見、そうでなくとも狂おしい恋愛に浸りたい人は当然見て欲しい。

どうでもいいのだけれど、劇中によく登場するのが"ちょっと高めの"タイ料理屋さん(だと思う)。

そして今ヶ瀬と大伴がソファに座りテレビを見ながら頬張るのポテトチップス・・・よくタイドラマでも拝見するメーカーのものだった。調べると元はアメリカのブランドらしいからそこまで考えてないとは思うけれど・・・

BLドラマで熱いタイドラマを彷彿とさせる演出!

と勝手に反応。・・・本当どうでもいいP.S.でした。

追伸2

映画鑑賞後、グッズ売り場を何気なくうろついていたら、この映画のグッズを手にした女性たちの行列が見えた。

え?何だ?と一応全てのグッズを見てみて、一瞬欲しくなったものの、頭を冷やしつつとりあえず退散。後からSNSを確認するとおそらく大倉くんファンの子たちだろうか、グッズ購入報告をしていて一部では売り切れ続出なのだとか。

思わず「買っとけば○○カリで売れたのか?」などといういけない虫が騒ぐが、いやいやそれはアカンだろ、と思い直す。

ファンたちならではの盛り上がりに清々しい気分になってしまう。それにしてもどのグッズにも本人たちの写真など一つもない。それなのにエモいエモいと購入し、ある人などは「あった!良かった!」と涙を流さんばかりだった。貴重なシーンを見た。


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