ペンとチョコレート

約1カ月ぶりに職場復帰、しかも月末で期末という1番エグい週だったので、noteの記事を読む暇も、ましてや書く余力もなく平日が終わりました。

この1年間、特に今年に入ってからものすごいスピードで精神的に成長することができました。急速に大人の階段上った感。

そして、自分の心持ちや環境が変わると、好きな作品の見方も変わることがあるものでして。

土曜日に読み返した作品がちょうどそれだったのでご紹介。

ねむようこ『ペンとチョコレート』(全2巻、芳文社)

青年誌で描いてる女性漫画家と編集者さんのお話です。

連載の打ち切りを宣告された主人公フタバトワコ。
打ち切りを宣告したトワコの担当に「僕にフタバさん譲ってもらえませんか?」と担当を名乗り出た秋元のもと、トワコは新たに作品を作っていくことに。見た目はもっさい秋元だけど、だんだんトワコは彼のことが気になっていって・・・?
というのが基本的なあらすじです。

コミックスカバーの装丁もパステル調で可愛らしく、学生時代は恋愛漫画として読んでいました。

だって編集の秋元さん、さりげなくかっこいいんです。わかりやすいヒーローではないけど、大事なものはきちんと守ってく。優しく、でもしっかりと。1巻ラストで、トワコが酔っ払い編集に絡まれた時の対応とか!もう!

そして今回は秋元さんのかっこよさにジタバタばしつつ、お仕事漫画として見ることもできるようになりました。

そうしてみると、トワコ、プロとしてそれはないよ、、ってなる。業務姿勢と才能は関係ないとは思いますが、トワコはやっぱり甘いんです。

ある時トワコは、秋元が編集している売れっ子漫画家・鳶谷コゴローへ臨時のアシスタントに行くことになります。
このコゴロー、ペンネームのイメージとは裏腹にトワコとさして年齢の変わらない女性です。

トワコは彼女に背景を頼まれたものの、てんでダメ。
枠線やケシカケなど単純作業を頼まれるようになります。その原稿を見て、コゴローが一言。

「ねえ、あなたってこういうの気にならない人?」

そこには、角のところできっちり閉じておらず、横線がややはみ出ている枠線が。

自分が直しますというトワコに「あ、できるの?じゃあ最初からやってよねー」とそっけなく対応するコゴロー。

なにこの女、ムカつく!!とトワコがなるのがこのシーンなのですが、これトワコがダメだろ、と思うわけです。

自分が気にならなくても、他人の原稿なんだから自分の以上に気を配って丁寧にやろうよ。。

その後、コゴローは「最初から丁寧にやった方があとから直す時間が減るでしょ!」と作業姿勢だけでなく、トワコの漫画について「出てくる犬のトーンが途中で変わるとかありえない!」とダメ出し。

さすが売れっ子プロ、ド正論。
そしてトワコ、トーンが足りなくなったからってそこ惜しんじゃダメだろう。

そういった意識の甘さがあるあたり、トワコが今まで仕事が上手くいってないのも当然かもしれない…と読み返してみて今回思いました。仕事への態度が結果につながることって、なぜかあるんですよね。

そんなトワコですが、再び窮地に陥った時、仕事人として決断しなければならない時がきます。

フタバトワコを捨ててまでも漫画家でいつづけるか、それともフタバトワコのままもがき続けるのか。

トワコの決断には、最初の打ち切りのときに言われた「漫画は、読者が読んでくれなきゃ意味がない」という「仕事」としての漫画家の使命をとった形になると思います。
クリエイティブな仕事なら尚更、社会が求めることと自分のやりたいこととの折り合わせは大変だろうなと推察します。

ある意味、この決断をしたことでトワコは漫画家として成長していくことができたのではないかと思います。
本編はその後のトワコのことをすっ飛ばして描くので完全な妄想ですが、多分トワコ、トーンが足りないからって適当に代用したりしなくなってると思うよ。

それから、この話自体はほぼずっとトワコの一人称ですが、一編だけ編集者秋元のモノローグで語られるお話があります。

このお話こそ、理想と現実のギャップにもがくお仕事ストーリー。
理想と現実のギャップの折り合わせは、働いていく上、いや生きていく上で永遠のテーマなのかも。

今回はお仕事漫画の側面から紹介してみましたが、ねむさんの得意技である「登場人物のさりげない仕草にときめく」恋愛漫画です。
あまり知られていない作品ですが、私はねむさんの作品の中で一番好きです。2巻で綺麗にまとまっていてサクッと読めますので、機会がありましたらぜひ。

とはいえ、wikipediaのねむようこの項目で、代表作として挙げられているのがこの作品なのはちょっと違うと思うのです。
そこはやっぱり、「午前3時」シリーズじゃないかなあ。

#コラム #エッセイ #感想 #コンテンツ会議 #ペンとチョコレート #ねむようこ #お仕事

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?