いつの日か役にたつこと

西洋の戦争教科書といえば、クラウゼヴィッツの「戦争論」。

対して、アジアのそれは「孫子」だそうだ。

え、そうなの?

ということで調べてみると、本当にそのようだ。

実際、大日本帝国陸軍なども、孫子の戦略を悪用解釈して、壊滅的な方向に進んでいったといった証言などもある。

ビジネス世界での戦略は、戦争における戦略を模倣しているというのは有名な話です。本屋のビジネスコーナーに行けば必ずある、弱者が強者に勝つための「ランチェスター戦略」なども、人数が劣る戦争で用いられる戦略が元になっている。

そんなわけで、日本でビジネスをしている身として、孫子を読んでないのはやばいんじゃないの?

ずっと心に抱えていたしこりを取り除くために、手に取ってみた。ちょうどわけあって、京都から瀬戸内海を渡り松山へ、そして飛行機で羽田へと向かう機会があった。2泊3日の旅だ…!

普段は家で働いているので、子育てをしながらの仕事生活。自分の時間などは、あるわけがない。正確には、時間はあるが落ち着いて読書をして、あれこれ思考を巡らせるほどに余裕はない、といったところでしょうか。

ワクワクしながら家を出た。飛行機からみる東京の街は圧巻で、いったいどうして東京とその他で、こんなにも差がついてしまったのだろう、と毎度思わされる。

上空から見る高層ビルの一室が数億円かー、あの部屋を手に入れるために、数十年ローンを組むのかー、私にそんな勇気が出る日はくるのだろうか. . .それと比べてなんだ、家なんてもらってちょうだいの無料物件だらけの瀬戸内海。船の免許を取って、夏はプカプカと瀬戸内海に浮いて暮らすのもありだなー、などと無駄なことを思った。

孫子では、あらゆる戦争局面での戦略が紹介されている。自分が相手の領土で攻める時、攻められる時。自分の領土で、相手から攻められる時。様々な状況を考慮しての勝ち方を、説得力を持って唱えている。

読んでいる時の第一印象は、これをビジネスに応用するのはちょっと無理があるんじゃないの?というものだった。

戦略戦略戦略、と述べることは良いが、ビジネスは顧客の信用を勝ち得るような仕事を続けるのが、やるべきことの全てなんじゃない?

確かに、弊社だって戦略はある。だが、そんな頻繁に戦略や駆け引きなんて使わないし、ましてやビジネスでは戦争みたいに敵が殺しに来るわけでもないわけで、今日から孫子を実用で応用するのは、ちょっと無理があるのでは…といった気持ちが終始つきまとった。

ちょうど孫氏を読み終わった頃に、隙間バイトのタイミーに勝負を仕掛けるメルカリ、という見出しのニュースが目に留まった。そのニュースを読んで、メルカリの戦略により市場を取られて、会社を畳まざれなくなった、フリルの話がふと頭をよぎった。

この具体的なストーリーは、当時のフリル代表取締役である堀井さんが、Noteにまとめてくれている。興味がある人は、読んでみてください。題名の通り、エグいです. . .。

もしかして、孫子のような本は平和な日常に意識して使うようなものではなく、どこかから競争や戦いを挑まれ、それを引き受けない限り、自分の守りたいものを守れない場合に、そんな時に有効なのかもしれない…

「君は戦争に興味がないかもしれないが、戦争は君に興味がある」とレフ・トロツキーは述べている。

自分がコントロールできない外部要因により、ある日、突然起こり得る競争と戦い。そんな時に、「いかに生き残るか」の術を知っておくことは大事なのかもしれない。

本を読むと「どうやって自分の会社に活かそう」と考えるのが、経営者なのかもしれない。自分にもその癖がある。それは良いことのはずだ。しかし、孫子を読んでみて、今すぐ役に立たないことでも、中長期で自分を守ってくれるようになる知というのが、この世にはあるんだなと実感できた。

移動しながら、一人で本を読む。静かなホテルの一室で、少し酔っ払った頭で、本にふける。自分がこんなことに幸せを感じるようになるとはね。

帰宅。

世のママパパ、今日もまたより良いサービスづくりと、子育てを一緒に頑張ろうね。

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