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#370 難しい話を難しくなく話そうとしました:相続と借地

どうも,こんにちは。

古田博大(ふるたひろまさ)です。

このブログを初めてご覧になる方は,はじめまして。

いつもご覧くださっている皆様,いつもアクセスありがとうございます。

僕は,1990年生まれで現在30歳。2017年1月から弁護士として働き始め,ちょうど2年半が経過した2019年7月10日にうつ病を発症し,それから今日までずっと休職しています。

うつ病発症からしばらくは,眠ったり食べたりすることもままならず,生きることそのものが苦しい時期が続きましたが,長い時間をかけて少しずつ回復することができました。今は,週2日の休みをはさんで毎日出勤練習(慣らし勤務)を繰り返しながら,復職への準備を進めています。

うつ病をきっかけに「自分も何か行動したい!」と思い,2019年12月から,この毎日ブログを始めました。とはいえ,このブログでは,うつ病に関することだけでなく,日々考えたことを自由気ままに書いています。

書きたいことがたくさんあって,文章が長くなってしまうことも多いですが,ブログの負担が大きくなりすぎてうつ病に悪い影響を与えないよう,書き始めてから1時間程度でアップロードすることにしています(#ほぼ毎日時間オーバーしていることはナイショです

「書きたいがたくさんある」と「1時間でアップする」は両立が難しく,そのため,文章がつながっていなかったり,文章自体がわかりにくかったりと,弊害も多々あるんですが,どうしても「毎日ブログ」を続けたいので,毎日綱渡り状態ですが,アクセスしてくださる皆様のおかげで,今日までなんとか続けることができています(;^_^A

僕のうつ病の経過については↓でまとめています。

それでは,今日も書いてきます!

昨日のブログの続きです。

昨日のブログ↓

昨日のブログでは,相続と借地について話をしました。

借地人が亡くなると,その瞬間に,借地人の相続人全員が,借地人としての地位を引き継ぎ,その結果,借地人の相続人全員が借地料全額の支払義務を負うと説明しました。

もちろん,地主さん(=土地の貸主)は,借地料を2倍もらえるわけではありませんので,相続人のうち誰かが全額支払えば,他の相続人は借地料を支払わなくて済みます。

全額支払った相続人は,他の相続人に対し,自分が払った借地料の一部を支払うよう請求できます。

昨日のブログで登場した,借地人の相続人が長男と二男の2人という例を今日も引き合いに出すと,例えば,長男がひと月分の借地料=10万円全額を地主さんに支払った場合,長男は,二男に対して半額の5万円を請求できます。

長男も二男も,法定相続分が2分の1だからです。

それでは,今日の本題に入ります。

昨日の例では,建物の遺産分割が完了していました。

建物は長男が取得するという内容で遺産分割(=長男と二男の合意)が完了し,その内容が書かれた遺産分割協議書が,長男と二男両方の印鑑証明書と一緒に法務局に提出され,建物の名義が,亡くなった借地人から長男に変更されました。

「建物は長男が取得する」という遺産分割は,通常,「借地権も長男が取得する」という内容も含まれていると考えられますから,「建物は長男が取得する」という遺産分割が完了したことによって,「借地権も長男が取得する」という遺産分割も完了したことになります。

言ってしまえば,亡くなった借地人の建物所有権も借地権も,長男が単独で引き継いだのです。

ただ,地主さんは,借地料の滞納があることを理由に,借地契約を解除し,土地の明渡しを求めてきました。

昨日のブログでも書きましたが,「土地の明渡し」とは,「建物を取り壊して更地にして返す」という意味です。

この「明渡し」請求が,長男だけでなく,二男にも飛んできたのです。

では,二男も,明渡しに応じなければいけないのでしょうか。

建物と借地権を引き継いだのは長男なのに,二男も,土地の明渡し=建物を解体して更地にしなきゃいけないのでしょうか。

これ,実は,難しい問題です。

普通に考えれば,長男が借地権と建物所有権をを引き継いでいますから,地主さんは,建物と借地権を引き継いだ長男に対して,明渡しを請求できるものの,建物と借地権を引き継がないことになった二男には,明渡しを請求できないように思えます。

ただ,昨日のブログでも書きましたが,借地人が亡くなった瞬間,借地人としての地位は長男と二男の両方に引き継がれます。

つまり,亡くなった瞬間,建物も借地権も,長男と二男で共有する状態に突入するのです。

しかしながら,遺産分割によって,こういった「共有」状態が変更され,長男が単独で,建物も借地権も取得することになったわけで,つまり,遺産分割によって権利内容に変更が生じています。

「権利内容の変更」というか,借地人が,「長男と二男」の2人だったのに,「長男だけ」の1人に変更されているのです。

借地人が,遺産分割が完了するまでは2人だったのに,遺産分割が完了したら,1人になっています。

このような,借地人が2人だったところを1人に変更する場合,普通は,地主さんの承諾が必要です。

だって,例えば,地主さんが,土地を2人の借地人に貸したとしましょう。地主さんは,その2人だからこそ,借地料の支払いも大丈夫だろうし,土地もきれいに使ってくれると思い,貸したわけです。

なのに,借地人2人が勝手に,借地人を2人から1人に変更されては困ります。もし残った1人が借地料を滞納するかもしれませんし,土地の使い方が雑かもしれません。

借地人は,勝手に2人を1人に変更してはいけないんです。

借地人が誰なのかは,地主さんにとって一大事ですから,借地人を他の人に変更したり,人数を減らしたりする場合は,必ず地主さんの承諾が必要です。

これが,基本中の基本。

もっと一般化していえば,契約の当事者は,契約相手の承諾なしに,自分以外に契約上の地位を移転させてはならないのです。

借地契約上の,「借地人としての地位」も,地主さんの承諾なしに,他の人に移転したり,人数を減らしたりしてはならないのです。

じゃあ,借地人が亡くなったことにより,長男と二男の2人に引き継がれた「借地人としての地位」を,遺産分割によって,2人から1人に減らすことも,地主さんの承諾が必要なのでしょうか。

この「遺産分割によって2人から1人に減らす」のは,地主さんの承諾は必要ありません。

先ほどの説明と矛盾しているので,ゆっくり説明しますね。

そもそも,「遺産分割」は,相続人全員で,どの遺産を相続人のうち誰がもらうか決める手続きです。だから,「遺産分割」には,相続人以外の人物を関与させる必要はありませんし,もっと言えば,相続人以外が参加してしまうと,それは「遺産分割」ではありません。

例えば,遺産分割協議書に,相続人以外の人物の署名押印があった場合,それは「遺産分割」ではありません。

だから,借地の話に戻りますが,借地人が亡くなった場合に,借地権と建物を誰が取得するか,相続人だけで決めてよく,なおかつ,相続人ではない「地主さん」が,遺産分割に関与することはできません。

結局のところ,地主さんの承諾がなくても,遺産分割によって,建物と借地権の帰属を自由に決めていいです。

ただ,そういった,地主さんの関与なしに決められた遺産分割の結果を,地主さんにも主張できるのか。

これが,大きな問題です。

地主さんとしては,遺産分割が完了するまでは,相続人全員に対して,借地料全額を請求できましたし,借地料の滞納があれば,相続人全員に対して借地契約の解除を通知したうえで,相続人全員に対して建物を解体して更地にするよう請求できました。

でも,遺産分割が完了すると,相続人のうち,誰か特定の人物が建物と借地権を取得します。

遺産分割の結果,相続人全員が建物と借地権取得し,遺産分割前と状況が変わらなければ,地主さんも安心ですが,ほとんどの場合,遺産分割の前後で状況は大きく変わります。

せっかく,遺産分割が完了するまでは,相続人全員に対して借地料を請求できていたのに,遺産分割が完了したら,それができなくなってしまうことがほとんどです。

だから,地主さんに対して遺産分割の結果を主張するためには,遺産分割のほかに何かしらの手続きが必要ではないか,という問題意識が出てきます。

この問題意識に取り組んだ裁判例があって,東京地裁の昭和63年の裁判例では,遺産分割によって建物と借地権を引き継ぐ相続人が確定したものの,その建物が未登記だったことを理由に,遺産分割完了後も,相続人全員が「借地人としての地位」を有すると判断されています。

この裁判例によると,遺産分割によって,借地人としての地位を引き継ぐ相続人を決めただけではダメで,建物の名義変更を済ませるまで,引き続き,地主さんとの関係では,遺産分割未了の状態が続くということになります。

僕は,この裁判例を踏まえ,建物の名義変更がなされていれば,地主さんとの関係でも,遺産分割の結果を主張できると考えています。

ただ,建物の名義を変更する場合,名義変更の申請ができるのは,どうやら,建物を取得した相続人だけみたいです。そうすると,建物を取得しないことになった他の相続人が,自分の借地料支払義務や明渡義務から解放されるために,建物名義変更を申請することはできません。

建物を取得した相続人が,きちんと名義変更してくれたら,借地人としての地位から解放され,借地料支払義務も,明渡義務も,負わずに済みます。

逆に,建物を取得した相続人が,いつまでも名義変更をサボっていると,他の相続人は,いつまでも借地人としての地位から解放されません。借地料支払義務も,明渡義務も,いつまでも負担し続けることになってしまいます。

その結果,建物を取得しないことになった相続人たちは,建物を取得した相続人が名義変更をしてくれるまで不安でいっぱいです。

建物を名義変更してくれるまで,いつまでも,借地料全額の支払義務を負い続けることになるので。

そういった,建物取得者の不誠実な対応については,登記引取請求が可能です。

「登記引取請求」というのは,本来,自分で名義変更を申請する人物が,いつまでも名義変更の申請をしてくれないから,それによって不利益を受ける人が,無理やり,その人に名義を変えさせる手続きです。

登記引取請求の訴訟をすれば,その判決に基づいて,名義を変更できます。

つまり,建物を取得しないことになった相続人が,建物を取得した相続人に対し,登記引取請求の訴訟を提起すれば,その判決に基づいて,建物を取得しないことになった相続人が,法務局に名義変更を申請できるようになり,建物の名義が変わる,ということです。

建物の名義が変われば,建物を取得しないことになった相続人は,地主さんとの関係でも,遺産分割の結果を主張できるようになります。

こういった,建物の名義変更によって遺産分割の結果を地主さんに主張できるという説とは別に,地主さんに通知が必要という説もあります。

「遺産分割の結果,○○が単独で借地人を引き継ぎましたよ」という通知,↑の例でいえば,「建物も借地権も長男が引き継ぎましたよ」という通知を,地主さんが受け取って初めて,遺産分割の結果を地主さんに対抗できるという説です。

僕は,この説には反対です。

そもそも,借地契約が存在するかどうかは,相続人が知らない場合も多いと思われます。

確かに,相続人としては,建物だけが遺産となっており,その敷地が別人に所有されていることは,不動産登記によって簡単に知ることができ,それによって,借地権の存在を推測することはできます。

でも,土地所有者が判明したとしても,その土地所有者が貸主とは限りません。

地主さんと亡くなった借地人との間に,誰か別の人が間に入っているかもしれません。

そして,借地契約書がなくても借地契約は成立しますから,こういった契約書がない場合に,貸主が誰か特定するのは,非常に難しいです。

こういった事情がありますから,通知相手を調べる負担は,非常に大きいです。

地主さんへの通知が必要だとすれば,借地人たちは,この負担を負うことになります。

これに対し,地主さんとしては,建物登記を見ることで,借地権が誰に引き継がれたのか確認することができます。建物所有権と借地権は,一応別の権利ですが,原則として借地権は建物所有権と帰属が一致するので,建物登記によって,借地権の帰属も知ることができます。

だから,通知が不要で,建物登記の確認を地主さんに求めても,それほど地主さんにとって負担ではありません。

地主さんへの通知を要求すると,借地人の相続人たちの負担ばかりが発生してしまいます。

だから,僕としては,建物の名義変更によって,他の相続人は借地人としての地位から解放される=借地料支払義務と明渡義務から解放される,と考えたほうがいいような気がします。

結論としては,とにかく,遺産分割が完了したら,きちんと名義変更されたかどうか確認することが大事だということです。

名義変更が済んだら,法務局が登記完了証を発行してくれますので,名義変更を申請した相続人に対して,登記完了証のコピーを送るように伝えましょう。

一番確実なのは,建物の登記を見ることです。建物の登記事項証明書を法務局で取得し,建物の登記を確認することで,名義変更が完了しているかどうか判明します。

名義が変更されていたら安心できます。

名義が変更されていない場合は,登記申請を,建物を取得した相続人に対して強く求めましょう。

それでも登記申請してくれない場合は,登記引取請求の訴訟を提起する必要があります。

最終的に登記引取請求訴訟には勝訴できます。

なぜなら,建物を取得した相続人には,登記を引き取る義務=自分の名義に変更する義務があるからです。

だいぶ長くなりましたが,一応の結論が出てよかったです(笑)。

【今日のうつ病】(うつ病経過まとめ:こちら

まだまだ僕のうつ病は治っていないので,毎日うつ病の経過を記録しています。

今日までに経過した期間↓

・うつ病発症(2019年7月10日~):515日(1年4か月と26日)

・実家療養後の1人暮らし(2019年9月27日~):436日(1年2か月と9日)

・午前中の散歩(2019年11月7日~):395日(1年と29日)

・毎日ブログ(2019年12月3日~):369日(1年と3日)

・出勤練習(2020年3月30日~):251日(8か月と6日)

今日で,出勤練習を始めて8か月と6日です。新型コロナウイルスの影響で,4月13日~5月11日までの約1か月間,一時中断されていましたが,それを差し引いても,約7か月間出勤練習を積み重ねてきました。

今日も出勤し,午前9時~午後6時(定時)まで滞在しました。

今日の「SleepCycle」を見ると(睡眠記録アプリ「SleepCycle」についてはこちら),午後11時48分~朝7時4分までの睡眠が記録されています。おとといの晩は寝つきが少し悪かったですが,昨晩は寝つきは良かったです。しかし,朝は7時前に目が覚めてしまい,睡眠時間は7時間ほどで短めです。SleepCycle独自の睡眠品質も62%/100%とかなり悪いです。

(なお,僕のうつ病は,主な症状が不眠(①寝つきが悪い②中途覚醒③朝早く目が覚めてしまい二度寝もできない)で,この不眠症状の有無が,その日の調子の良し悪しや,回復の進み具合を左右します。そのため,毎日の睡眠時間や睡眠の質について,睡眠記録アプリ「SleepCycle」に記録されているデータをもとに逐一書き出すことにしています。)

今週は,今日までの6連勤を達成することができました。

㈪の時点では,疲労の蓄積が感じられ,不安を抱いていましたが,今日までなんとかやってこれました。

これを自信にしたいですが,とりあえず,明日から2日間の休日でゆっくり休みたいと思います。

絶対に昼寝します!

今日もブログ書けてよかった!

それではまた明日!・・・↓

昨日のブログ↓

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※うつ病への負担を考慮し、「書き始めてから1時間くらいでアップする」という制限時間を設けています。

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