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交通事故の被害にあった場合に弁護士の僕ならどうするか-32(後遺症の立証)

【 自己紹介 】

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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

【 今日のトピック:交通事故 】

引き続き交通事故について書いていきます。

さて、昨日から予想される争点についてお話しています。

そもそも僕は、後遺症の等級が認定されなかったことがきっかけで、訴訟を提起することにしたのでした。

「後遺症」とは、「これ以上治療しても改善が見込めない病状」を意味しますが、「後遺症」は、等級(ランク)が認定されて初めて、損害額が増額されます。

等級には、1級~14級があり、最低でも14級に該当しないと、後遺症を理由とする増額はできません。

等級を認定してもらうために、僕は「被害者請求」を行い、自賠責の保険会社に等級認定を申請したのですが、ダメでした。

この判断をなんとか覆したいなと思い、僕は訴訟を提起しました。

ただ、正直に言うと、自賠責への申請で等級が認定されなかったのであれば、それが訴訟で覆る可能性はかなり低いです。

自賠責への申請に基づいて等級を判断するのは自賠責調査事務所ですが、この事務所は、後遺症の等級認定ばかりを扱っているわけではないものの、後遺症の等級認定は、重要な専門分野の1つで、めちゃくちゃたくさんの事案を取り扱っています。

こういった「専門機関」の判断は、裁判官も当然尊重しなきゃいけないので、この判断を覆せるだけの根拠がない限り、訴訟でも、自賠責調査事務所と同じ判断(=等級ナシ)が出てしまいます。

さて、じゃあ、どうやって裁判官に自賠責調査事務所とは違う判断を下せるだけの根拠を提供するか。

まずは、病院のカルテを取得します。

自賠責調査事務所の後遺症等級認定では、病院のカルテは必ずしも資料となっていません。後遺症診断書やレントゲン画像(CT画像)は参考資料となっていますが、カルテをすべて見ているわけではないのです。

だから、カルテをすべて取得します。

「文書送付嘱託」という訴訟の中の手続きを用いて、裁判所を通じてカルテを取り寄せることができます。

ただ、カルテを見ても、自覚症状しか症状の根拠はない、という記載が続いているだけです(おそらくですが)。

そうなると、「私的鑑定」といって、誰か医師に鑑定を依頼して、自分の現在の症状が、等級14級9号に該当することを示す鑑定書を作成してもらうことが考えられます。

ただ、医師としても、いくらカルテを読んでも自覚症状しか根拠がないので、それが「14級9号」だと認めることは難しいと思います。

だから、工学鑑定も必要になってくるでしょう。

「工学鑑定」とは、「工学的」な観点、つまり、物理学や力学的な観点から、損傷箇所の写真(被害車両と加害車両双方を含む)を根拠に衝撃の程度や向きを算出し、この衝撃によって、僕の身体のどの部分にどの程度の力が加わったのかを「鑑定書」という形で出すものです。

この「工学鑑定」によって、僕の身体に加わった衝撃の大きさや向き、衝撃が加わった身体の箇所がある程度明らかになります。

この工学鑑定を踏まえて、「医学鑑定」を行います。

つまり、医学鑑定を行う医師には、工学鑑定に基づいて、僕の身体に加わった衝撃の大きさや向きや、身体のどの部分に衝撃が加わったのかを把握してもらい、こういった情報を踏まえて、僕の身体に残存している症状が、自覚症状だけではあるものの、今後改善が見込めない病状であると認めることができる、と医師に鑑定書を作成してもらおうと思います。

自覚症状だけとはいえ、身体のどの部分をどうやって動かしたら、どこにどんな痛みを感じるのか、ということは書いてあるでしょう。

この痛みの状態と、身体に加わった衝撃の大きさ・方向を踏まえて、僕の後遺症が、等級認定にふさわしいと医学鑑定で書いてほしいのです。

だから、「工学鑑定」と「医学鑑定」を両方使いたいです。

とことんやるなら、ここまでやる必要があると思います。

ただ、工学鑑定も、医学鑑定も、費用がかかります。安くても30万円くらいは必要となるでしょう。

しかも、これは、あくまで「私的な」鑑定、つまり、僕が勝手に依頼して鑑定書を作成してもらったものです。

作成してもらった鑑定書は、当然証拠として裁判所に提出しますが、あくまで、それは、僕が勝手に作った書面に過ぎません。


僕が鑑定書を提出したら、相手は相手で、別の鑑定書を提出してくるかもしれません。当然、その鑑定書には、相手に有利な内容が書かれています。

そうすると、裁判所も、どっちが正しいとは決められないので、裁判所が選任した専門家に鑑定を実施してもらうことになります。

工学鑑定も医学鑑定も両方必要となるでしょう。

この鑑定の費用は、当事者が負担します。まずは、鑑定を申請したほうが、鑑定費用全額を支払います。

後遺症の等級は、僕が立証責任を負っているので、僕が鑑定は申請することになります。だから、僕が鑑定費用を支払うことになります。

ただ、僕は、弁護士費用特約に加入しているので、こういった、私的鑑定の費用や、裁判所による鑑定費用も、僕の自動車保険の保険会社(損保ジャパン)が支払ってくれます。

だから、費用の心配は不要です。

とはいえ、事前に損保ジャパンに確認しておいたほうがいいと思います。鑑定費用はかなり高額になるので、支払った後に「支払えませんよ」と損保ジャパンから言われたらたまったもんじゃないので。

それと、そもそも「鑑定までやるか」という問題もあります。

鑑定を行うとなると、かなり紛争が長期化します。

鑑定も、すぐに実施できるわけではなく、「何を鑑定の対象とするのか」を明確にしなければいけません。

「等級を認定してよ」とざっくりと鑑定を実施することはできません。

鑑定に先立って反論・再反論を繰り返し、争点が明確になった後になって初めて、裁判所による鑑定が実施されます。

今回の場合は、私的鑑定も実施していますから、それが終わるまでも時間がかかるでしょう。

私的鑑定による鑑定書を提出したら、当然、相手にも、それに対して反論するチャンスを与えなければなりませんから、その期間も必要になってきます。

こうやって反論・再反論を繰り返していたら、あっという間に1年~2年くらいは経過しています。

こういった作業を経て、争点を明確にしたら、やっと裁判所による鑑定が実施されます。

とはいえ、ここまでやった上で、最終的に、僕に不利な鑑定結果が出る可能性も十分にあります。

だから、最初から鑑定なんかやらずに、カルテに基づいてできる限りの主張を尽くしたら、それで終わりでもいいのかもしれません。

でも、僕なら、弁護士費用特約で鑑定費用が支払われるのであれば、とことんやると思います。

今日はこの辺にして、明日は、後遺症の残存期間についてお話したいと思います。

後遺症は、その定義上、一生残り続けるはずで、一生残ることを前提に損害額をはじき出すべきなんですが、かなり多くの事案で、後遺症が一生は残らないことを前提に、損害額が算出されています。

このことについて、明日、交通事故の締めくくりとしてお話したいと思います。

それではまた明日!・・・↓

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