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少年審判の種類:検察官送致、児童相談所送致

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このブログでは、2019年7月にうつ病を発症し、それをきっかけに同年12月からブログを始めて、それ以降、700日以上毎日ブログ更新してきた、しがないサラリーマン弁護士である僕が、日々考えていることを綴っています。

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【 今日のトピック:少年審判 】

さて、今日も少年審判について書いていきます。

・審判不開始
・不処分
・保護観察
・児童養護施設又は児童自立支援施設送致
・少年院送致

まで書きました。

少年法に基づく処分は、これで全部です。

じゃあ、今日は何を書くかというと、少年法に基づく処分だとふさわしくない場合に、他の機関に処分を委ねる方法が用意されていて、それについて書きます。

つまり、少年法って、少年法に基づいて家庭裁判所が処分を決める場合と、「いやいや、少年法ではなくって、他の法律に基づいて処遇を決めたほうがいいよね」と裁判官が思った場合に、他の適切な機関に処遇を委ねる場合の両方を定めているんです。

・少年法に基づいて、家庭裁判所が処遇を決める
・少年法に基づいて、他の機関に処遇を委ねる

この2つの選択肢が用意されています。

他の機関に処遇を委ねるかどうかを決めるのは家庭裁判所の裁判官です。

家庭裁判所の裁判官は、自ら処遇を決めることもできるんですが、それは、↑に書いた処分に限られています。

それ以外の処遇がふさわしいと裁判官が思うこともあるわけで、そういった場合は、「少年なんだから少年法!」とがんじがらめになるのではなく、「他の法律でいきましょう」と柔軟にしています。

じゃあ、「それ以外の処遇がふさわしい」と裁判官が思う場面って、どういうときかというと、例えば、「めちゃくちゃ悪い事した」という場合です。

例えば、殺人事件です。

犯人が、犯行当時13歳以下であれば、どうあがいても殺人罪が成立しないので、↑に書いたような少年法に基づく処分を下すほかありませんが(しかも、審判時に13歳以下であれば、「特に必要と認める場合」でないと、少年院送致することもできません。だから、13歳以下の殺人犯人は、せいぜい「児童自立支援施設又は児童養護施設」に送致されるのが関の山です。しかも、児童自立支援施設や児童養護施設には、もちろん、他の子どもたちもいるわけで、そういった他の子どもたちへの影響(ひるがえって、殺人犯本人の矯正にも悪影響を与える可能性がある)を考えると、こういった施設に入所させるのではなく、保護観察だけつけて家庭に返しちゃうこともあるでしょう。13歳以下って、本当に守られているのです。もちろん、被害者に対して民事的な損害賠償責任を負うのは、何日か前のブログで書いたとおりです。)

さて、被害者を殺害した犯人が、犯行当時14歳以上であれば、その犯人には間違いなく殺人罪が成立します。

ただ、犯人が19歳以下の場合は、少年法が適用される結果、いったんは、少年法に基づく処分を受けさせるべきかどうか、家庭裁判所の判断を仰ぐ形になります。

20歳以上であれば、「少年法に基づく処分を受けさせるべきかどうか、家庭裁判所の判断を仰ぐ」なんてプロセスはありません。

殺人事件の犯人は、20歳以上であれば、問答無用で裁判員裁判にかけられ、受けるべき刑罰を決められます。

(犯人が無罪を主張している場合はおいときます)。

しかし、「家庭裁判所の判断を仰いだ」結果として、「刑罰を与えたほうがいいよね」と裁判官が考えることもあって、その場合は、「検察官送致」にします。

「検察官送致」とは、少年を起訴するかどうかを検察官に委ねる、という建前ですが、本音を言えば、「刑罰を受けるべきなんだから起訴してよね」という裁判官からのメッセージです。

検察官送致となると、だいたいは、検察官が起訴して、刑事裁判が始まります。

「検察官送致」は、少年法に基づく処分では「不足」するから、刑罰を与える場合に用います。

少年法が予定する「矯正」ではなく、刑罰を与えるべき事案については、いくら少年とはいえ、きちんと刑罰を与えましょうということです。

検察官送致は、いわば、少年法では「足りない」場面を想定していますが、「児童相談所送致」は、逆に、少年法では「やりすぎ」の場面で使います。

例えば、8歳の子どもが万引きしたとしましょう。

8歳とはいえ、万引きは窃盗罪の要件を満たしていますので、この子どもは「触法少年」に該当します。

犯罪が成立していないので、警察は「捜査」することはできませんし、警察や検察が、この子どもを家庭裁判所に送致することもできません。

触法少年は、すべて、児童相談所が、家庭裁判所に送致するかどうか、つまり、少年法に基づく処分を与えるかどうかの決定権限を持っています。

だから、8歳の子どもとはいえ、児童相談所は、家庭裁判所に送致して少年法に基づく処分を求めていいんです。

しかし、8歳の子どもが万引きしてしまう原因って、普通に考えれば、その本人が悪いというよりは、家庭環境に問題があるような気がしませんか?

8歳で具体的にイメージできないなら、6歳でもいいです。

6歳の子どもが、万引きを繰り返している場合、それを、本人に悪い原因があることを前提に「矯正」するというのは、なんか少し違います。

少年法って、あくまで、「矯正」を目的としているので、少なくとも、少年本人に「矯正」するだけの価値がなきゃいけません。

「矯正」って、何かしらの教育を与えたら、それに呼応するだけの基本的な能力があって始めて意味を持ちます。

例えば、錯乱状態にある精神疾患の患者さんに対して、「矯正」を与える余地はありません。

だって、そんな状態の人には、何を伝えても、それに呼応できないからです。

こちらの作用に対して、反作用を返すことができません。だから、「矯正」はできません。

錯乱状態の精神疾患の患者さんに必要なのは、矯正ではなく「治療」です。

これと同じように、「矯正」するだけの価値がない少年(矯正措置に対して反作用を返すことができない少年)には、少年法に基づく処分では「やりすぎ」というか、「無意味」なんです。

問題の解決になっていません。

6歳の子どもが万引きを繰り返しているのであれば、それは、子ども本人に責任があるのではなく、6歳の子どもの万引きを放置している家庭環境に問題があります。

・親が放置している原因は何なのか
・6歳の子どもが万引きを繰り返さなきゃいけない理由は何なのか
・どんな動機で万引きを繰り返しているのか

そこを考えなきゃいけないわけで、そうなると、必要なのは、「矯正」ではなく「福祉サービス」です。

親が十分な食事を与えていないから万引きしているのなら、子どもを児童養護施設に入所させたり里親に委託したりして十分な食事を摂取できる環境を提供しなきゃいけません。

そこまでしなくても、親の家事を手伝うヘルパーさんなどのサービスを家庭に入れて、親の家事負担を減らしてあげるとか、そういった「福祉サービス」は少なくとも必要でしょう。

そういった、福祉的なアプローチが必要な事案も、形式的には少年法の守備範囲に入ってくることがあるので、そういった場合は、本来関わるべき福祉機関(児童相談所)に、その子どもの処遇を委ねます。

さて、今日で、少年審判の種類に関するお話は終えたいと思います。

僕もこれまであまり知りませんでしたが、少年法には、本当にいろいろな選択肢が用意されています。

事案に即した適切な処遇を決めることが少年事件では求められますが、それには、正確な知識が不可欠です。

少年法が結論としてどんな処分を下せるのか、きちんと理解しておくのは本当に大切だと思います。

それではまた明日!・・・↓

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