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「法律では守れないもの」

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このブログでは、2019年7月にうつ病を発症し、それをきっかけに同年12月からブログを始めて、それ以降、600日以上毎日ブログ更新してきた、しがないサラリーマン弁護士である僕が、日々考えていることを綴っています。

毎日ご覧くださってありがとうございます。本当に励みになっています。

法律に関する記事は既にたくさん書いていますので、興味のある方は、こちらにテーマ別で整理していますので、興味のあるテーマを選んでご覧ください。

【 今日のトピック:ドラマ最愛 】

僕はテレビドラマが好きで、毎クール、各局で放送されるドラマは、かなり見ています。

今期も、

・婚姻届に判を押しただけなのに
・白杖ガール
・SuperRich
・最愛
・日本沈没
・真犯人フラグ

この7つを見ていました。

特に好きだったのは、白杖ガールと判押しなんですが、最愛も結構楽しく見ていました。

先週の金曜日に最終回が放送され、吉高由里子演じる主人公真田梨央の側近弁護士加瀬賢一郎が犯人であることが明らかとなりました。

加瀬弁護士は、15年前、死体遺棄に手を染めてしまいました。

被害者は、埋められる瞬間にまだ息があったかもしれないので、死体遺棄ではなく殺人だったかもしれませんが、とにかく、ぐったりした被害者男性を、山中に埋設しました。

被害者男性がぐったりしていた理由は、主人公真田梨央の弟(当時8歳くらい?)と被害者がもみ合いになった際に、弟の持っていた尖った棒(何だったかな・・・)が、被害者の腹部に突き刺さり、そのまま被害者は(おそらく出血多量が原因で)意識を失ってしまいました。

被害者は、主人公の梨央に違法薬物を摂取させて意識を喪失させ、そのすきに「わいせつ」しようとしていました。

被害者は、以前から、他の女性にわいせつな乱暴を繰り返していました。

そういった「魔の手」が、主人公梨央にも及ぼうとしていたのですが、弟が、さっき説明したような、事故のような形で姉の梨央を守りました。

ただ、事故とはいえ、弟の手に持った棒が被害者の腹部に突き刺さってしまいました。

その後、①被害者、②主人公梨央、③弟(優】の3人で倒れているところに、梨央と優の父が帰宅しました。

というのも、梨央の父は学生寮を運営していて、犯行現場は寮の食堂設置の厨房でした。その厨房で、3人は倒れていて、それを父親が発見しました。

娘と息子が倒れているのを発見した父親は、犯行を隠蔽しようとしました。

というのも、弟が、被害者を殺してしまったと父親に泣きながら白状したからです。

弟の殺人が世に知られてしまっては、弟が普通に生きられなくなると思った父親は、殺人の隠蔽をその場で思いつき、被害者を山まで運びました。

その場に偶然居合わせたのが、梨央の側近弁護士である加瀬です。

加瀬は、梨央の母が経営する会社に常勤で勤務し、法律まわりだけでなく、経営や、家族の世話全般を任されていました(こういう弁護士ってほとんどいないとは思いますが・・・)。

梨央は、父の運営する寮(岐阜所在?)の近くで暮らしていましたが、母は東京で社長として大企業を経営していました。

梨央(当時高校3年生)が、寮で襲われた日、加瀬弁護士は、東京から岐阜まで来て、梨央の父と会っていました。一緒に寮まで帰ったところ、先ほど説明したような、厨房で倒れている3人を目の当たりにしました。

最初は、死体を山中に埋めようとする父に反対していました。

「少年法が守ってくれます!」と。

ただ、「法律では守れないものがあるんです!」という言葉が父から出て、それを受けて、なんと、加瀬弁護士は、死体遺棄に協力することを決意し、実際に死体を地中に埋め、厨房の血痕を隠蔽しました。

その後、被害者を殺した犯人を探し続けていた被害者の父親が、息子の死の真相(優が息子を殺した)に近づいたことに気づいた加瀬弁護士は、その父親を池に押し倒し、倒れた瞬間に後頭部を打った父親は、そのまま水中に沈んで亡くなりました。

そして、加瀬弁護士は、殺人事件の真相と、大企業の社長である梨央の母が会社の資金を不正に流用していることに気づいたフリー記者が記事を出すのを事前に差し止めるべく、その記者に交渉を申し入れ、その交渉途中で記者が非常階段から地面に落下し、頭部を強く打ち付け、そのまま亡くなってしまいました。

もちろん、加瀬弁護士は、この落下を目撃しましたが、助けることはありませんでした。

いずれの被害者も、そこで死ななければ、梨央の人生をめちゃくちゃにしてしまっていたでしょう。

加瀬弁護士は、「法律では守れないものがある」という動機で、それぞれの犯行に及び、梨央の人生を守ったという感じで描かれていました。

この加瀬弁護士の動機は、正しかったのでしょうか。

加瀬弁護士に対しては申し訳ありませんが、僕は、「法律では守れないものがある」という理由は、残念ながら、加瀬弁護士が自分を正当化しようとしただけに思えます。

これを語るには、まず、加瀬弁護士が、各犯行によって守ろうとしたものが何か、というのを分析しなきゃいけません。

まず、最初の死体遺棄ですが、死体を遺棄せず、そのまま警察に通報していたら、どうなっていたでしょうか。

その場合、梨央の弟である優に、殺人の嫌疑がかかります。

とはいえ、優は、13歳以下なので、犯罪は成立しません。したがって、優はぜったいに逮捕されません。

逮捕もされないし、刑事裁判を受けることもぜったいにありません。

とはいえ、「触法少年」という扱いになり、少年法は適用されます。

少年法が適用される結果、少年審判は開かれるでしょう。

加えて、優には記憶障害があって、その記憶障害が犯行に影響を与えた可能性も否定できないので、審判に先立って、少年鑑別所で調査が必要であるとして、少年鑑別所に収容される可能性は非常に高いです。

少年鑑別所に収容された後、少年審判を受け、その結果、

・保護観察
・児童養護施設入所
・児童自立支援施設入所
・少年院送致

このどれかが、裁判所によって選ばれます。

ドラマの描写では、もみ合いになった結果、被害者の腹部に棒が突き刺さった感じだったので、殺人罪の要件には該当しないでしょう。

とはいえ、傷害致死罪の要件に該当する可能性はあって、そうなると、少年院送致となる可能性もなくはないです。

13歳までの触法少年を少年院送致する場合、「特に必要がある場合」しかダメで、実際には、ほとんど例がありません。

ドラマのような、もみ合いになった結果であれば、保護観察という、「定期的に保護司と面接すればオーケー」処分になる可能性も高いです。

記憶障害という病気もありますし。

しかし、だからといって、何もなかったことにはなりません。少年鑑別所に収容されれば、その間は、優が家に住んでいないことはバレますし、少年審判を受けたことも、何らかの方法でバレるかもしれません。

ただ、バレたことが、何なのでしょう。

少年鑑別所や少年審判が「バレちゃダメ」という価値観は、少年鑑別所に収容された人や少年審判を受けた人を、「自分たちと違う」と突き放してしまうものです。

正直なところ、こういう価値観には賛同できません。

少年鑑別所へ収容されたことがあろうが、少年審判を受けていようが、この社会で堂々と生きていいです。

幸せになっていいのです。

というか、少年鑑別所って、刑罰を与える施設ではありません。あくまで、調査する施設です。

少年審判も、刑罰を与えるのではなく、その少年にとってどんな矯正措置が適切なのかを考える場です。

そこで決まった措置を終えれば、措置の最中に学んだことを社会で実践して、堂々と生きていいんです。幸せになっていい。

いちど失敗したヤツは、もう二度と、幸せに人生を歩んじゃダメ、ということなんですか?

そんなことありません。人を殺害した犯人であっても、刑罰を受けて償いを済ませたら、社会で生きていいのです。

じゃないと、僕は世界がこわすぎて生きいけません。失敗を許さない社会は、自分の首を締めるだけです。

殺人事件で残された遺族は、その仇打ちとして、犯人を殺害していいのでしょうか。そんなのは許されません。

この社会は、失敗を許すことがルールなんです。

だから、残念ながら、加瀬弁護士が死体遺棄を手伝わなくても、弟の優は、その後幸せに生きることができました。

むしろ、少年審判を受け、裁判所の判断にしたがっていれば、優は、劇中で描かれていたような、「自分は人を殺してしまった」というフラッシュバックに苦しまずに済んだかもしれません。

少年審判を受けて、裁判所の判断に従っていれば、少なくとも、「僕は、法的な償いは済ませた」という自負を得るチャンスはあったはずです。

死体遺棄した結果、加瀬弁護士は、優が償うチャンスを奪いました。

にもかかわらず、「法律では守れないものがある」という理由で、死体遺棄に協力したのは、弁護士として、完全に間違っていたと僕は思います。

弁護士であるにもかかわらず、「失敗したら生きていけない」という間違った世界観を持っていた加瀬弁護士。

ひどすぎます。

法律は、失敗した人を受け入れています。めちゃくちゃ優しいんです。

「法律では守れないものがある」という加瀬弁護士の動機は、「失敗したら生きていけない」という価値観を抱いていることを意味します。

その価値観を抱いているということは、失敗した人を許さないことになります。

失敗がバレたら生きていけないから、失敗は、「改善」の対象ではなく、「隠蔽」の対象です。

残念ながら、「法律では守れないものがある」という世界観は、自分の首をしめます。ドラマの中でも、優は本当に苦しそうでした。

コソコソ隠れてウィークリーマンションに住んでいました。

そんなの、ぜったいに間違っています。

償って、堂々と日なたの世界で生きればいいです。

「法律では守れないもの」なんて考えなくていいんです。

「法律に従うからこそ守れるもの」だってあります。

少年審判を受けていたら、「償いました」と堂々と言えました。それをしなかったから、堂々とできず、コソコソを余儀なくされました。

僕は、こう思っています。

今日の話は、弁護士という立場からのポジショントークなのかもしれません。

ただ、僕は、「失敗を許さない社会」が大嫌いで、そのせいか、ドラマ最愛に出てきた「法律では守れないものがある」という言葉に敏感に反応してしまいました。

今日はこのへんにします。

それではまた明日!・・・↓

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