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#452 結婚後に減ってしまった預金の財産分与

【 自己紹介 】

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【 今日のトピック:結婚後に減ってしまった預金の財産分与 】

今日は財産分与の話です。

「財産分与」とは,結婚後に夫婦で築いた財産を,離婚に伴ってはんぶんこにすることです。

結構単純な発想なのですが,お金の話なので,かなり激しく争われることも多いです。

財産分与の対象は,「結婚後に夫婦で築いた財産」だけなのですが,この「結婚後に夫婦で築いた財産」に,どの財産を含めて,どの財産を含めないのか,ということが争われるパターンがほとんどです。

あと,含めるか含めないかに争いはなくても,その金額が争われることも多いです。

例えば,マイホームの価格です。

マイホームは,土地の売買契約書や建物の建築工事発注書を見れば購入した金額はわかりますが,財産分与する場合は,時価が基準です。

マイホームは,当然ながら,購入後に値下がりしていますから,時価は,購入金額よりはだいぶ低いです。

どれくらい「低い」かどうかが,争われるわけです。「もっと高いはず!」とか「もっと安いはず!」とか,自分に有利なようにお互い主張します。

最終的には,裁判所が選んだ不動産鑑定士が鑑定した金額で決まりますが,そこまでしなくても,お互いの金額の平均をとるとか,そうやって決めることもあります。

さて,財産分与には,もう1つ争点があります。

「特有財産」というやつです。

先ほど書いたように,財産分与は,あくまで,結婚後に夫婦で築いた財産をはんぶんこにすることです。

したがって,結婚前から持っている財産は,財産分与の対象にはなりません。

例えば,結婚前から預けている定期預金は,財産分与の対象にならないので,はんぶんこしなくていいです。

それと,結婚前に貯蓄した預金を,マイホームの購入費用に充てた場合,マイホームの一部を「特有財産」と扱います。

例えば,マイホームを総額5000万円で購入した場合,そのうち1000万円を夫が結婚前から貯めていた貯蓄を崩して工面し,残りの4000万円を夫が住宅ローンを借りて工面したとしましょう。

このマイホームを財産分与する場合,マイホームの20%を,夫の特有財産として扱います。

例えば,この5000万円のマイホームが,財産分与する時点(=離婚する時点)で3000万円の価値に下落していたとしましょう。

先ほど書いたように,マイホームの20%は夫の「特有財産」となるので,財産分与の対象とはなりません。

つまり,どうなるかというと,マイホームの時価3000万円のうち,20%=600万円が夫の特有財産となりますので,残りの2400万円のみを,はんぶんこします。

600万円は,はんぶんこせずに,夫が貰うのです。

これが,「特有財産」の話なのですが,今日は,預金の「特有財産」についてお話しようと思います。

先ほども説明しましたが,結婚前からの貯蓄が残っていた場合,その貯蓄は財産分与の対象にはなりません。

1000万円の貯蓄を,結婚した後も大事にとっておけば,離婚した後も,そのまま自分の貯蓄として維持できます。

ただ,1000万円の貯蓄が,結婚後に2000万円に増えた場合,増えたぶんの1000万円は,「結婚後に夫婦で築いた財産」なので,財産分与の対象となります(はんぶんこしなきゃいけません)。

その1000万円が,すべて自分が働いて得た収入を元手にしていたとしても,はんぶんこしなきゃいけません。

結婚後に得た収入は,夫婦がお互いに支え合ったおかげで得られたとみなされるので,どちらか一方の収入のみを元手に築き上げた貯蓄であっても,はんぶんこすることになります。

じゃあ,逆はどうでしょう。

「逆」というのは,結婚後に,結婚した当時よりも貯蓄が減ってしまった場合です。

結婚前に1000万円あった貯蓄が,結婚後に500万円まで減ってしまったとして,減ったぶんの500万円を,相手から返してもらうことができるでしょうか。

これについては,「マイナスの財産を計上する」,ということが考えられます。これだけではよくわからないと思いますので,説明します。

先ほどのマイホームの例に戻りますが,離婚時の時価3000万円のうち,財産分与の対象となるのは2400万円のみ,ということでしたが,それとは別に,住宅ローンもありましたよね。

結婚後に借りた住宅ローンも財産分与の対象となるのですが,住宅ローンは夫名義でしたから,夫は,マイナスを引き受けることになります。

マイホーム:2400万円

住宅ローンの残債:3000万円

夫名義預金:500万円

妻名義預金:500万円

という例で考えてみましょう。

この場合,プラスの財産が,マイホーム・夫名義預金・妻名義預金を合計して,3400万円で,マイナスの財産が3000万円ですから,財産分与の対象となる財産は,差し引き400万円となります。

そうなると,夫婦それぞれが,400万円のはんぶんこ,つまり,200万円ずつ財産分与を受けなきゃいけません。

夫がマイホームと,住宅ローン,そして,夫名義の預金全部を引き受けても,それだけではマイナス100万円です。200万円には300万円足りません。

その足りない300万円は,妻名義の預金から貰うことになります。つまり,妻は,夫に対し,現金300万円を支払わなきゃいけないのです。

この例で何が見えてくるかというと,マイナスの財産を引き受けるということは,財産分与にとって有利になる,ということです。

↑の例では,夫が,住宅ローンというマイナスの財産を引き受けたことによって,マイホームと夫名義の預金を合わせても,200万円に足りず,その結果,妻から300万円の支払いを受けることになりました。

もちろん,「はんぶんこ」なので,夫と妻は平等なのですが,とはいえ,300万円の持ち出しとなる妻にとっては,手痛い出費でしょう。

だから,財産分与を有利に進めるには,自分が引き受ける財産を,なるべく安く見せなきゃいけないんです。

多額の住宅ローンを引き受けるし,マイホームの時価も安いし・・・,と↑の夫は主張することが,夫にとっては有利なんです。

これを前提に,「結婚後に預金が減った」という話に戻ります。

この「減った分の預金」を,マイナスの財産として計上できれば,財産分与の面で有利になるわけです。

もし,減った分の預金を,マイナスの財産として計上できるのであれば,そうしたいのはヤマヤマです。

でも,マイナスの財産として計上できません!

なぜなら,減った分の預金は,夫婦のため,家族のために使ったからです。

減った分の預金は,夫婦のため,家族のために使ったわけですから,そのマイナスを,「特有財産の目減り」のように捉えて,財産分与の面で有利に扱うこはできないのです。

だから,減った分の預金を「マイナスの財産」として,計上することはできません。

もちろん,減ったとはいえ,まだ預金は残っているわけですから,この残った分の預金は,「特有財産」として,財産分与の対象外とはなりますが。

【 まとめ 】

財産分与が争われるのは,離婚の場面です。離婚の場面では,夫婦の感情的対立が激しく,結婚後に減ってしまった預金を返してほしいと考えたくなる気持ちもわかります。

しかし,それは法的には難しいので,なるべく冷静に,粛々と離婚手続を進めていきましょう。

法的に請求できるぶんだけ,粛々と請求しましょう。それ以上を求めると,離婚は長引きます。

主張するべきをきちんと主張するために時間がかかるのは仕方ありませんが,そうでもないのに,ダラダラ離婚が長引いても,何にも良いことはありません。

それではまた明日!・・・↓

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