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アバターの人権について考える

【 自己紹介 】

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このブログでは、2019年7月にうつ病を発症し、それをきっかけに同年12月からブログを始めて、それ以降、700日以上毎日ブログ更新してきた、しがないサラリーマン弁護士である僕が、日々考えていることを綴っています。

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【 今日のトピック:人権共有主体 】

昨日、子どもの権利について書きましたが、世の中には「子どもの権利条約」という条約があって、今日は、その条約の条文をいろいろ読んでいました。

条文を読んでいたら、いろいろと子どもが持っている権利について書かれていたんですが、その根底に、「子どもが権利を持っている」こと、難しい言葉で言えば、「子どもが権利の主体である」ということに意義があるような感じがしました。

「親権」なんて言葉が日本にありますが、この「親権」っていうワードは、なんとなく、「親の子どもに対する支配権」みたいに感じませんか?

本当は、そんなことはないんですが、「子どもは保護の対象である」という考えが根強くて、「子どもが権利の主体である」、もっと平たく言えば、「子どもは親とは別の、1人の人間である」という側面が強調されづらいです。

子どもが、親とは別の人間として、権利の主体となっている。それを当然の前提としていることが、子どもの権利条約の持つ大きな意味だと感じました。

で、ここからが今日のテーマですが、アバターの人権です。

インターネットの発展・浸透・一般化が著しく、毎日毎日どんどん、インターネットは一般的になっていきます。

2005年頃までは、インターネットを使うの検索だけ、というのも普通でしたが、今は、検索はインターネットの持つ機能の1つでしかありません。

人とつながって、コミュニケーションをとるツールとしての役割が大きくなってきています。

他ならぬ僕も、インターネットを使って文章を毎日発信してます。僕にとってインターネットは、検索ツールというよりは、自分の意見を発信できる場所です。

僕はあんまり素性を隠さず文章化しているので、現実に存在する生身の人間としての僕とは別に、「インターネット上の人格」が存在する感覚はありません。

しかし、世の中には、現実に存在する生身の自分とは別の人格をインターネット上に存在させている人もたくさんいらっしゃいます。

この、インターネット上に存在する別人格を、ここでは「アバター」と呼んでいるのですが、この「アバター」に人権を観念していいのか、というのが今日のテーマです。

仮に、アバターに人権を観念できるのであれば、そのアバターに対する違法な誹謗中傷を理由に、損害賠償を請求することができます。

例えば、僕が、インターネット上に、僕とは別人格のキャラクターを作り出していて、そのキャラクターに対して違法な誹謗中傷が加えられた場合、それによって被った精神的損害を、裁判によって、誹謗中傷を加えた相手に請求できるようになります。

アバターに人権が認められるのであれば、ですが。

基本的には、難しいでしょうね。

もちろん、例えば、実名でTwitterを開設していて、その実名アカウントに対する誹謗中傷であれば、「アバターに権利はあるの?」なんて争われることはないんですが、そうではなく、自分とは全く関係のないキャラクターをインターネット上に作り出した場合に、そのキャラクター(=アバター)に対する誹謗中傷が、法的に損害賠償請求権を発生させるのか、というのは、かなり難しい問題です。

もちろん、実在していないアバターを原告として訴訟を提起することはできません。

そのアバターを開設した、実在する人間が原告となって、訴訟を提起することになります。

現行の制度だと、そうするほかありません。アバターがアバターとして訴訟を提起できるようにするには、インターネット上に国家を作り出すほかないでしょう。

その国家のルールとして、裁判制度を整備し、銀行を作り、各アバターが、アバターとして預金口座を持ち、裁判を提起し・提起され、なんて制度を作り出せば、アバターがアバターとして訴え・訴えられることも可能になるかもしれません。

ただ、それによって、現実の裁判の道を閉ざすことまではできないでしょう。現代社会では、あらゆる人間は、生まれてすぐにどこかの国の国民として登録されますが、その国で、裁判を受ける権利が保障されているのであれば、インターネット上の疑似国家のルールとして、現実の裁判による解決の道を包括的に閉ざすのはさすがに無理でしょう。

日本国民として、裁判を受ける権利が保証されているのに、インターネット上のアバター同士の紛争について、裁判による解決の道を閉ざすことはできないのです。

少し話しがそれましたが、結局、アバターが受けた誹謗中傷を理由に損害賠償できるか、ということですが、この話って、人が権利を持つ理由までさかのぼって考える必要があります。

例えば、比較できる存在として、法人(会社)があります。

法人は、現実には存在しません。「法人」という制度によって存在しているだけで、どれだけ頑張っても目に見えません。

しかし、法人は、銀行口座を開設したり、建物や土地を所有したり、はたまた、名誉毀損を理由に損害賠償を請求することもできます。

法人は、権利を持つことが許されているのです。

だから、「人間として実在する」というのが、権利を持つための必要条件ではないのです。

そうなると、結局、「そのアバターに権利を持たせるだけの価値があるのか」という話になります。

権利を持たせるだけの価値があるのであれば、権利の主体となる、というトートロジーな結論になってしまいます。

「権利を持たせるだけの価値があるかどうか」を判断する材料の要素って、まず第1に、歴史だと思います。

そのアバターを形作るために、これまでに、どれだけの時間や労力が割かれてきたのか。そこがとても大切だと思います。

そして、その「歴史」を、傷つけた側も知っていたことも必要でしょう。

そのアバターが、世界のどこかの誰かが、人生の大半の時間を使ってキャラクターを作り出していて、その人にとっては、もはや、現実の生身の自分以上に大切に感じていて、それを、傷つけた側も知っていた。

そうなってくれば、アバターに対する誹謗中傷を理由に、損害賠償請求できる余地があるかもしれません。

ただ、やっぱり、難しいです。

仮に裁判を起こしたら、そのアバターに対する思いを、ただ、口で説明するだけではダメでしょう。それだけの思いを抱くだけの根拠、つまり、キャラクターを作り出してきた歴史を、証拠に基づいて説明する必要があります。

うーん、書いていて、かなり難しそうな感じがしてきました。

アバターに対する誹謗中傷を理由に損害賠償を請求できるようになるには、もう少し時代が進む必要がありそうです。

時代が進んだ結果、インターネット上の分身が、現実の自分と大差ないよね、という常識が出来上がれば、アバターに対する誹謗中傷を理由に損害賠償請求も可能になるでしょう。

現状だと、やっぱり難しそうです。

それではまた明日!・・・↓

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