見出し画像

不動産を売り買いする時に何が起きるか:決済について

【 自己紹介 】

プロフィールページはこちら

このブログでは、2019年7月にうつ病を発症し、それをきっかけに同年12月からブログを始めて、それ以降、700日以上毎日ブログ更新してきた、しがないサラリーマン弁護士である僕が、日々考えていることを綴っています。

毎日ご覧くださってありがとうございます。本当に励みになっています。

法律に関する記事は既にたくさん書いていますので、興味のある方は、こちらにテーマ別で整理していますので、興味のあるテーマを選んでご覧ください。

【 今日のトピック:不動産売買 】

今日も昨日に引き続き不動産売買についてお話します。

今日は「決済」について説明します。

昨日の最後に説明した「手付金」は、不動産の売買契約を結ぶ時の話ですが、不動産売買の最後の最後に待っているのが「決済」です。

(本当は、契約を結ぶ前に、「売りに出す」「買い付ける」というのもあるんですが、それは置いときます。)

昨日説明しましたが、「決済」こそ、不動産売買の真髄です。

決済が完了してしまえば、不動産を「売った」ことになり、「買った」ことになります。

逆に、決済が終わるまでは、まだ「売った」ことにも、「買った」ことにもなりません。

昨日は、不動産だろうが、ペットボトルのジュースだろうが、売買は売買なので、「お金を払って手に入れる」というのは同じだと書きました。

ただ、不動産は、コンビニの棚には並べられません。

だって、不動産は動かせないからです。

さて、「不動産」という漢字をよーく見てください。「不動」の「財産」だから、「不動産」なんです。

逆に、不動産以外の財産、つまり、「動かせる財産」を「動産」って呼びます。

(形ある財産は、全て「動産」と「不動産」に区別できます。預金などの「債権」は、形ある財産ではないので、動産でも不動産でもありません。)

不動産は、「不動」の「財産」であるからこそ、コンビニの棚並べて、現金と交換するわけにいきません。

だから、不動産を「売買する」場合に、お金と何を交換するかというと、「名義変更」を交換するのです。

お金と引き換えに不動産の名義を変更する。

これが「不動産売買」です。

で、昨日は、不動産の名義は、法務局が一括して管理していることも書きました。

そして、法務局が不動産の名義を自由自在に変えられるわけではなく、必要な書類を揃えて申請されて初めて名義を変えることができ、逆に言えば、必要な書類が揃わない限り、法務局が名義を変更することはできません。

法務局が名義を変更できる場面は、「不動産登記法」という法律でがんじがらめに縛られています。

さてさて、お金と名義変更を交換することが「不動産売買」だということわかったのですが、じゃあ、実際に、どうやって、お金と名義変更を交換すればいいのでしょうか。

不動産の名義は、法務局が一括して管理していて、なおかつ、必要な書類が完全に揃っていなければ名義を変えてくれないのでした。

そうなると、買主としては、お金を払ったはいいものの、名義が変更できないというリスクがある気がしませんか?

だって、せっかくお金を全額払ったのに、いざ申請してみたら必要な書類が揃っていなかったから名義変更できない、ということが想定できるからです。

そんなことが起きたら大変なことになります。

不足した書類が、買主で用意できるものならまだいいですが、売主に準備してもらわなきゃいけないのであれば、お金を払っておきながらいつまでも自分の名義に変わらない可能性があります。

しかも、不動産の場合、民法177条という、とっても大切な条文があって、これは、自分の名義にしないと不動産の所有権を対抗できないことを定めています。

「対抗できない」とは、「自分が所有者だよと主張できない」という意味で、例えば、売主が後日別の誰かに不動産を売却してしまった場合、その「誰か」に対して、いくら代金全額を払っていたとしても自分が所有者だと主張することはできません。

で、この条文は、それだけでなく、自分より後に購入した人物が名義を変更してしまった場合、先に購入した買主が、いくら代金全額を払っていたとしても、永久にその土地の所有権を取得できなくなる、ということまで意味すると解釈されています。

そうなると、お金を払ったら、その瞬間に是が非でも名義を変更してもらわなきゃ困ります。

だって、名義が変更されるまでの間に、売主が別の誰かに不動産を売却して名義を移してしまったら、いくら先に購入したとしても代金の払い損になってしまうからです。

もちろん、名義が移らないのなら、支払った代金は売主から返金してもらえますが、しかし、こんな「二重売却」なんてする売主は、どうせ無一文です。

法的に返金を求めることができるとしても、「天下無敵の無一文」です。お金がない人からお金を返してもらうことはできません。

さてさて、こう考えると、不動産の買主は、自分の名義に変わるまではお金を出したくはありません。

自分の名義になるまで、払い損になるリスクがあるからです。

ただ、これは売主も同じで、売主は売主で、お金を受け取るまで、「名義変更損」になる可能性があります。

そうなると、お互い睨み合いがいつまでも続いてしまい、不動産はいつまでも「売買」できません。

こういった

・買主は名義が変更されるまで代金を払いたくない
・売主は代金を受け取るまで名義を変更したくない

というにらみ合いを克服するのが「決済」です。

「決済」では、

・代金支払い
・名義変更

を同時にやっちゃいます。

具体的には、まず、売主と買主が同じテーブルに座ります。

たいていは、買主が代金を工面するためにローンを組んだ銀行の支店に、売主と買主双方が、同じ時間に集合します。

で、その場に司法書士もやってきます。これがポイントです。

まず、代金の支払いは、集合場所である銀行の支店が、売主の指定する銀行に振り込みます。

(実際は、売主が住宅ローンを組んでいることも多いので、その住宅ローンの銀行に直接振り込みます。それによって、抵当権登記を抹消します。)

代金を振り込むのはイメージしやすいですが、問題は、名義変更です。

集合場所は銀行の支店であって、法務局ではありません。だから、お金を振り込んだその瞬間に名義を変更することはできません。

お金を振り込んだその瞬間は、まだ法務局に対して名義変更の申請すら済ませていませんし。

ここで出てくるのが司法書士です。司法書士は、不動産登記のプロなのですが、その司法書士に、名義変更に必要な書類を預けます。

司法書士が、プロとして、名義変更に書類が間違いなく揃っていることを確認し、確認したその場で、代金を支払うんです。

だから、買主は安心して代金を振り込むことができます。だって、名義変更に必要な書類が間違いなく揃っていて、代金の払い損になるリスクは解消されているからです。

(もし仮に、司法書士が書類不備を見抜けず、名義変更できないうちに二重売却が起き、その結果、無一文の売主から代金を返金できなくなったら、その司法書士は売主に代わって代金相当額の損害を賠償する必要があるでしょう。この意味でも、買主は安心できます。)

(そして、もう少し、実際の話をすると、司法書士には、抵当権登記の抹消・設定もやってもらう必要があります。不動産を売る場合は、抵当権登記を抹消しなきゃいけなくて、その抹消に必要な書類も、決済の場で司法書士が受け取ります。で、抵当権登記の抹消に必要な書類って、売主が住宅ローンを組んだ銀行に対して買主が代金を振り込むことで、その銀行が渡すので、これも、代金と引き換えじゃなきゃダメなんです。代金を振り込んだはいいものの、抵当権登記が抹消されないと困っちゃうので。そして、買主が代金を工面するために住宅ローンを組んだ銀行も、お金を貸したはいいものの、抵当権を設定できなかったら困っちゃうので、必ず、抵当権設定に必要な書類が司法書士に渡っているかどうか確認します。)

さて、こんな感じで、決済は、司法書士が「いる」ことによって成立します。

司法書士がいることで、代金支払いと名義変更の「同時」が実現できるからです。

ちなみに、決済の段取り(買主が住宅ローンを組んだ銀行での決済場所確保、売主、売主が住宅ローン組んだ銀行の担当者、司法書士、買主それぞれの日程調整)は、不動産屋がやります。

不動産屋の役割は、売主と買主のマッチングです。

日本には、「宅地建物取引業法」という法律があって、不動産の売主と買主のマッチングは、宅地建物取引業者しかできません。

もちろん、売主が自分で買主を見つけてもいいんですが、より高い値段で買ってくれる買主を見つけるには、分母が多ければ多いほどよい(より大きなマーケットで売り出したほうが、高く売れる)ので、不動産屋に頼ることがほとんどです。

自分で、インターネット上で、「この不動産売ります!」と言い出してもいいんでしょうけど、そのページを誰が見てくれるかもわかりません・・・。

不動産屋に売却を依頼すると、宅建業者として、その不動産を流通に載せることができます。そうすると、その売出し情報を見た人から買付の注文が入るわけです。

で、売出し価格も、不動産屋に仲介してもらえれば、近隣の取引事例に照らして決められます。

自分だけでは、売ろうとしている土地の値段なんてわかりませんよね・・・。

結局、

・宅建業者しか不動産売買のマッチングができない
・自分だけでは高く買ってくれる買主に売出し情報が届かない
・自分だけでは適切な売却価格も決められない

といった理由で、不動産の売却は不動産屋に依頼するのです。

で、当然ながら、不動産屋も報酬を受け取るわけですが、その報酬も、決済の場で受け取ります。

売りの仲介が売却代金の3%、買いの仲介も売却代金の3%なので、売却代金の6%+消費税を不動産屋が持っていきます。

例えば、5000万円で売買する場合、不動産屋は、5000万円の6%+消費税=330万円を、買主が売主に振り込むのに先立って受け取ります。

僕が見た決済の場では、不動産屋は現金で報酬を受け取っていました。振り込みで受け取る場合もあるでしょう。

さて、かなり長くなりましたが、決済は、

・買主から売主への代金支払い
・名義変更必要書類を司法書士が確保
・(抵当権登記の抹消・設定必要書類を司法書士が確保)
・不動産屋への報酬支払い

を「同時に」やっています。「同時に」がめちゃくちゃ大切なポイントです。

ちょっと難しかったですかね?少しでもイメージがわいたら嬉しいです。

それではまた明日!・・・↓

*:;;;:*:;;;:*:;;;:*:;;;:*:;;;:*:;;;:*:;;;:*:;;;:*:;;;:*

TwitterFacebookでも情報発信しています。フォローしてくださると嬉しいです。

昨日のブログはこちら↓

僕に興味を持っていただいた方はこちらからいろいろとご覧ください。

━━━━━━━━━━━━

※内容に共感いただけたら、記事のシェアをお願いします。
毎日記事を更新しています。フォローの上、毎日ご覧くださると嬉しいです。

サポートしてくださると,めちゃくちゃ嬉しいです!いただいたサポートは,書籍購入費などの活動資金に使わせていただきます!