昨日の続き:児相が子どもを精神科に入院させる

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【 今日のトピック:精神保健福祉法と子ども 】

さて、昨日は、精神保健福祉法について説明しました。

「精神保健福祉法」は、過去の反省を活かして、精神疾患の治療を目的とした入院は、原則として患者本人の承諾が必要と定めました。

入院する際に本人の承諾が必要というのは、何というか、めちゃくちゃ当たり前に思えるんですが、かつてはこの「当たり前」が当たり前でなく、本人の意向に反してむりやり入院させられる(「措置入院」となる)ことが非常に多かったらしいです。

ただ、今は、原則として本人の承諾が必要となっています。

そして、精神疾患の患者さんは、自分で自分の考えを適切に表明できない場合も多いので、そういう場合は、すぐに「措置入院」とするのではなく、親族の意向を確認し、親族が同意しているのなら入院させることができるという建付けになっています。

だから、本人が自分の意見を表明できない場合は、親族の了承を得て入院させます。

そうすると、精神疾患治療目的の入院は、本人又は親族の同意がなきゃできないんです。

ただ、本人の意向も確認できず、入院が必要なのに親族が同意しない場合に、一切入院させられないというのもよくありません。

そんな患者さんを放置した結果、患者さんが自殺してしまったり、他にも、精神疾患による錯乱によって誰かを傷つけてしまったりする可能性もあります。

そういう危険性がある場合であっても、本人又は親族の同意がないからといって入院させられないのは、「命を守る」という観点から適切ではありません。

そのため、自傷又は他害(他人を傷つける)危険性が高い場合は、本人及び親族のどちらも同意していなくても、「措置入院」という形で、むりやり入院させることができるようになっています。

ただ、この「措置入院」のハードルはめちゃくちゃ高く、自傷を理由に措置入院が認められるのは、手首を切り落としてしまうほどのリストカットと(半分冗談・半分本気で)言われています。

こういった精神保健福祉法の建付けが、子どもの場合にどうなるかというのが今日のお話です。

そもそもですが、「子ども」といっても、年齢は様々です。

児童福祉法でいうところの「児童」は、0歳~17歳を指します。僕が言うまでもなく、0歳~17歳って、それぞれ全然違いますよね。

ここが「子ども」という概念の大きな特徴で、子どもって、年齢によって精神面・身体面が全然違うんです。0歳~17歳にかけて、人は精神的にも身体的に大きく成長し、そして、その成長度合いは、平均をとることはできますが、結局は、各個人バラバラで、目の前の子どもが、実際のところどれくらい精神的・身体的に成熟しているかは、よくよく調べてみないとわかりません。

そうすると、「本人の了承を得て入院する」といっても、本人が自分の入院について正確に理解しているかどうかも、よくわかりません。

理解できているかどうかは、年齢が何歳かということに最も左右されますが、先ほど書いたとおり、成長度合いは各自バラバラですから、年齢で一概に決められるわけでもありません。

特に、入院してまで精神疾患の治療をしなきゃいけない子どもは、理解力に乏しいことも多いです(逆に、理解力に問題がないどころか、いろんなところに気がつく、大人顔負けの明晰な子供もいます)。

そして、入院が必要なほどの精神疾患を患っているということは、子ども本人も非常に苦しんでいて、その苦しみによって、正確な理解を妨げられていることもあり得ます。

だから、なかなか「本人の承諾」といっても、子ども本人からの承諾のみで入院させるのは難しかったりします。

純粋に法的に言えば、子ども本人がきちんと入院の目的や入院中の治療内容について理解できていれば、本人の承諾に基づいて入院させることは可能です。

ただ、本当にきちんと理解できているかどうかを、現場で医師が判断するのは非常に難しく、そういった現実を踏まえると、入院を受け入れる医療機関としては、子ども本人の承諾よりも、親権者の承諾を得ようとします。

本人の承諾がなくても、親権者が入院に同意していれば、精神保健福祉法に基づいて入院させられるのは間違いないので、法的に安心なんです。

だから、医療機関としては、法的なリスクを排除するため、親権者の承諾がない限り、子どもの入院を受け入れないという対応をすることがほとんどです。

もちろん、子どもであっても、措置入院できるような状態であれば、親権者の同意がなくても、措置入院によって入院させることができます。

でも、先ほど説明したとおり、措置入院のハードルは非常に高く、ほとんどのケースで措置入院は難しいです。

じゃあ、措置入院ができないのであれば入院を諦めなければならないのでしょうか。

ここで、児童相談所が一時保護していたりすると、ちょっと様子が変わってきます。

というのも、昨日のブログで説明したとおり、一時保護中の子どもに対して、児童相談所は「必要な監護」を施すことができて、例えば、風邪を引いた子どもを病院に受診させたりすることができます。

親権者に連絡して事前の了承を得るのが普通ではあるんですが、連絡がつかなかったり、反対されたとしても、病院を受診させることができます。

そして、生命・身体に危険が迫っている場合は、親権者の反対を押し切ってでも、緊急手術を実施することもできます。

それだけでなく、一時保護中の子どもに対して児童相談所が行う「必要な監護」を、親権者は「不当に妨げてはならない」とも法律には書かれています。

そうすると、例えば、措置入院させられるほどの自傷行為がないとしても、精神疾患による自傷行為によってケガする危険性がある場合に、親権者の反対を押し切ってでも入院させることができるような気もします。

また、入院が必要と医師が判断しているのであれば、児童相談所としては入院させるべきということになりますが、これに親権者が同意しない場合は、親権者が、児童相談所による「必要な監護」を、「不当に妨げている」という理由で、親権者の反対を押し切って、入院させることもできるような気がします。

児童相談所が子どもを一時保護した場合、親権は少し制限されることになるんです。

一時保護された子どもに対しては、実際に子どもが生活している児童相談所がメインで子どもの面倒を見て、親権者は、児童相談所の面倒見を「不当に妨げ」ちゃダメで、なおかつ、子どもの生命身体に危険が迫っている場合は、児童相談所の独断で医療行為を受けさせることができるようになっています。

そうすると、児童相談所の権限に基づいて、精神疾患の治療に必要な入院をさせることもできそうです。

しかし、僕は、結論として、児童相談所の権限によって、親権者の反対を押し切って入院させることはできないと考えています。

それは、精神保健福祉法が、過去の反省を活かしているからです。

精神保健福祉法は、バンバン措置入院させていた過去の反省を活かして、措置入院のハードルをめちゃくちゃ高くしています。

にもかかわらず、児童相談所が、一時保護中の子どもに対して権限を有していることにかこつけて(悪用して)、措置入院ができない場合にも、措置入院と同様に、親族の承諾なく入院させることができてしまうと、せっかく、措置入院のハードルを上げたのに、それが、一時保護中の子どもの場合に、潜脱されちゃう(精神保健福祉法を作った意味がなくなってしまいう)ことになります。

だから、一時保護中の子どもであっても、措置入院ができないのなら、親族の承諾がないと、精神疾患の治療目的で入院させることはできないと考えるべきだと思います。

じゃあ、措置入院できないなら、児童相談所は指をくわえて見ているしかないというと、実はそうでもないんです。

というのも、子どもの場合、子どもであるせいで、自分の承諾だけでは入院できないのです。

自分で承諾できるのなら承諾して入院したいところを、子どもであるせいで、親権者の同意が必要となってしまっています。

そうすると、これは、子どもが子どもであるせいで不利益を被っているので、それを是正してあげる必要があって、この是正方法に、「親権停止」というものがあります。

つまり、親権者が、子どもの利益となるように親権を行使しない(必要な入院に同意しない)場合に、その態度は不適切だとして、親権を一時的に停止するのです。

親権が停止すると、暫定的に児童相談所長が親権者となるので、児童相談所長の承諾に基づいて、精神疾患治療目的であっても入院させることができます。

こういう方法があるので、実は、子どもの場合は、措置入院とは別に、むりやり入院させる方法が用意されています。

ただ、この「親権停止」は、裁判所の手続きが必要となります。

裁判官が親権停止を認めて初めて、児童相談所の所長が暫定的な親権者となります。

当たり前ですが、裁判官は児童相談所の言いなりではありません。児童相談所がどれだけ入院させたくても、入院に同意しないことが親権者の態度として不適切だと裁判官が認めてくれないと、親権停止の判断は出ません。

裁判官が、第三者視点で見ても、入院に同意しないのが親権者として不適切な場合は、それなりに限られていると思います。

そもそも、精神疾患って、身体に(器質的な)異常はありません。

身体に異常があり、その治療であれば、そもそも精神保健福祉法が適用されないので、生命身体に危険が迫っているのであれば、こんなこと考えずに児童相談所の権限で入院させればいいです。

ただ、裁判官も、医学的にはドシロートなので、「親権停止してまで入院させなきゃいけないの?だって、精神疾患でしょ?」ということは素朴に思ってしまうでしょう。

そこを乗り越えるのは、結構高いハードルだと思います。僕も経験がないので、どれくらいのハードルなのかは、よく知りません。すみません汗。

まとめると、昨日と今日で僕が言いたかったのは、精神疾患の治療目的の場合であれば、児童相談所の権限で入院させることはできない、ということです。

これが、今のところの結論です。

勉強して見解が変わったらまたこのブログでまとめます。

それではまた明日!・・・↓

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