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自分ごとの価値に根ざす地域資本主義〈5.はじめに〉

私は、幸せの社会をつくりたい。
第1部では、構想する社会の礎となる価値観を「使用価値の価値観」として示しました。使用価値とは、人自身の実感に基づいた内在的な豊かさの価値観です。そもそも価値というのは、絶対的な基準や真理があるものではなく、人自身が実感として経験するものであるはずです。そこで、モノゴトの価値はそれを享受する人がどれほどの豊かさを得て、どのような価値を感じているのかによって測られるという考え方を、「使用価値」として提案しました。
そして、このような使用価値の考え方のもとで、人々は自分ごとの価値を構成します。自分がモノゴトに対してどのような豊かさを感じているのかを捉えることが価値の源泉になるためです。
現状、使用価値に対立する「交換価値」が支配的です。交換価値は、市場における評価に基づいた外在的な豊かさの価値観であり、物的に豊かな社会のために樹立されています。しかし、私はすでに物的に豊かすぎる社会に突入していると考えています。実際、大量生産大量消費のような無限の交換が横行し、自然環境や資源が犠牲にされ、持続可能な経済への転換が求められています。私は、ただ多くのモノを生産し消費し交換する経済ではなく、私たち自身が豊かさを実感できる経済/すでに達成された物的に豊かな社会を享受する社会、かつ持続可能な経済へと、経済のあり方を再考するために、「使用価値の価値観」を構想しています。
さらに、第1部では、使用価値の価値観が「幸福」に対する考え方ともリンクすることを示しました。「幸福」も、価値と同じように人自身によって実感される内在的なものであり、客観的な指標や真理によって規定されるものではないと考えています。使用価値の価値観のもとで、人々は自分ごととして価値を考え、自分ごととして豊かさを実感することにより、自分ごとの幸せを実感し享受することを目指しています。また、人それぞれの多様な幸福/価値に溢れる社会という意味で、一人ひとりが輝く多様で“面白い”社会であると考えています。

そして、この第2部では、使用価値を実装する社会として、「自分ごとの価値に根ざす地域資本主義」を構想し、提案させていただきます。まず、自分ごとの価値を考えるためには、経済を自分ごととして捉え、自分の身体や感性を駆使してモノゴトに向き合うことが必要です。こうした自分ごとの価値を根付かせていくために、“地域”という比較的身近なスケールで経済社会を構想します。

さらに、使用価値を現す地域通貨のあり方を構想することで、経済社会の価値観を転換を目指します。結論から言えば、交換価値には法定通貨を用い、使用価値には地域通貨を用いるというものです。お金というのは経済の血液です。地域通貨として、使用価値という自分ごとの価値観が経済を循ることによって、「自分ごとの価値に根ざす地域資本主義」が実現することを目指します。

なお、こうした地域資本主義に対する考え方は『鎌倉資本主義』著:柳澤大輔を題材とし、私なりに解釈して構想し直したものになります。特に、価値論と幸福学を注入しています。また、第1部の内容を前提としているため、第1部からご覧いただいた方が読みやすいと思います。

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〈6.自分ごとの価値〉へ続く

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