霞ヶ関ワークライフ8
霞ヶ関に来て8ヶ月。
全体の三分の一が経過したと思うと、ちょっとグッとくる気もする。
官僚の仕事をあえて大きく二つに分けると、(1)地方行政(市町村、都道府県)を支える、(2)国会対応(法改正、国会議員、委員会対応など)になるわけだが、今回の臨時国会にて、はじめて国会対応の洗礼を受けた。
いわゆる国会対応というもの
一言でいえば、国会議員からの質疑に対して大臣答弁を確定させる業務、となるのだろうか。
現場レベルの官僚は、うちの大臣に質問がきませんように!と祈っている。
しかし、ついに野党議員からの質疑が被弾しまくるという自体に。。これが国会対応か••痺れるなぁ、などと笑っていられたのも初めのうちで。
立て続けに被弾し、もう一発くらうと対応する官僚が足りなくなるぞ••という段階までいった。
対応する係は、ピリつくし、無関係な係のメンバーからは、そっとしておこうという雰囲気が伝わってくる。
ちなみに、国会対応中は、以下の全体メールが出される。
「◯◯課以外は厳重居所です」
※厳重居所=帰宅していいけど、何かあったら即時対応するつもりで!
つまり、「◯◯課以外」に除外された部は、待機命令ということになる。
大まかな流れ
①政府が追求される事案が発生!(ヤバい)
②メディア•新聞社が報じる(激ヤバ!)
一部の大手新聞社の場合、新聞記事もしくはネットニュースにするとか、担当者から連絡が入ることもある。
③国会議員(野党)から質問予告がくる(やっぱり、、)
なお、2日前の正午までの通告ルールが守られることはなく、様々な党の議員が似たような質問をする(概ね、立憲、れいわ、共産あたりはほぼ同じ質問だった)
④(質)問取り
永田町にいる国会議員(もしくは政策秘書)に赴き、質問内容をヒアリング。質問文を精緻化させていく作業をする。
⑤大臣答弁案を作成して確定させる
局長まで承認をとる(このシリーズでも書いたが、局長は、民間なら代表取締役級で空いた時間をみつけるのも苦労)。
時には、財務省、法務省などの他省の合議が必要で、より時間がかかることも。
⑥大臣、副大臣、政務官、秘書官、事務4役(省内トップ4)に事前報告
⑦国会当日朝7時、大臣へレクチャーする(いわゆる大臣レク)
案件によるのだろうが、与えられた時間はなんと5分!
⑧生中継で大臣発言を、想定どおり回答しているか確認する。
想定外の質疑や答弁がないか、官僚たちは霞ヶ関から見守る。
なお、官房長官答弁も合わせて必要な場合もある。
他に、野党議員の勉強会や部会という集まりに呼び出されることもあるらしいが、これは官僚がサンドバック状態になるので、みんな嫌がるようだ。
答弁作成は悪?
官僚が大臣の答弁を作成しているのは許せんと憤る方がいる。しかし、大臣とて事前に答弁を修正できるし、意見もできる。官僚の言いなりになっているというのは誤解がある。
考えてほしいのだが、一国の大臣発言を、事前に政府としてアベコベにならないように注意深く確認するのは、至極当然のことだ。民間企業だって社長スピーチは、入念に事前確認するだろう。
そして、実は野党議員側の質疑についても当初はファジーなもので、最終的には官僚が代わって質問文を作成していることはあまり着目されていない。
新聞・メディアについて
官僚たちは、主要な大手新聞や政党機関紙(赤旗、聖教新聞)を日々チェックしている。
知っている方もいるだろうが、政府に批判的な新聞と、そうではない新聞がある。
時事通信社・共同通信社(自社媒体を持たず、記事を地方含む他新聞・メディアに提供している)も、政府批判的である。それゆえか、地方新聞は、概ね政府に批判的だ。
こうしてみると、読売と産経のスタンスは、めずらしいのかも知れない。
これらの新聞を横並びで読んでいると、わかることがある。それは、批判的な新聞ほど情報量が多いメリットがあるということ。誤解を恐れずにいうと、批判のためには「あら探し」しなければいけない、より多く情報に触れざるをえないのだと思う。
一方、デメリットもある。政府に批判的な新聞ほど、各記事の見出し等、悪印象を与えるフレーズやパワーワード使用していて、どうしても印象操作や先入観を誘うようになっている。
(朝日と産経のトップ1面を比較すると、同じ事象に対して言葉選びが見事に違う)
つい先日、裏どりもない記事を書かれた体験をしてとても驚いた。
例えば「⚪︎省は⚪︎⚪︎について検討に入った」と書かれたとする(確かに、ほぼ検討しているのは想像がつくとはいえ)、政府が公式発表してないものを、事前確認もなく断定記載することは、単なる憶測に他ならない。
僕のいる担当係に事前確認がないまま、明らかに憶測記事が記載されたことがあった(他の省から、おたくの省は報道に情報流したの?と照会されたほどだ)。新聞社が週刊誌的なことするんだなぁ・・と心底驚いた。他にも、「とある政府筋によると」「政府関係者によると」のようなフレーズは気をつけたほうがいいのかもしれない。
ちなみに、知っている人もいるだろうが、新聞社とメディアは系列企業である。実は世界的には、(悪い意味で)めずらしいことらしい。
当然、テレビ番組は、新聞社と同じ傾向で報道する。
新聞メディアは、一歩引いて客観視して付き合うほうが、よいのかもしれない。
ある日の終電の車内で
国会対応中、なんとか終電(23時台)に間に合った時のこと、電車内で二人の男性の会話が聞こえてきた。
A)いつも帰りはこの時間なんですか?
B)0時まわることもあって、今日は終電で帰れているので、マシなほうです。
A)うわ〜、そうなんですか。では、そんな日はやっぱりタクシー帰りですか。
B)いや、僕のような下っ端はタクシーチケット出してもらえないので、椅子を並べて寝て、始発で帰ってシャワー浴びて、すぐ出勤です。
A)本当ですか・・椅子で寝るなんて、身体バキバキになりません?まだ、お若いからできるんですよ。私にはとても無理です。
B)いやいや、もう僕も若くはないので、バキバキですよ(笑)。噂によると、文科省や会計検査院のあたりには、仮眠室があるらしいのですが、ご存知ですか?
A)いや、はじめて聞きました。できれば使いたくないですよね〜(笑)
明らかに30歳前後くらいの若手官僚(他省)と思われる二人の会話に、聞き耳を立てていた。
そもそも寝不足なのは当たり前過ぎて触れもしないんだなぁとか思いながら、うんうん大変だよなぁ・・と内心で頷いていた。
仮眠室の存在が気になるところだが、僕もできれば使用はしたくない。
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