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【散文詩】半自動筆記に因る夜想曲(7)-1:『最愛のひとへ』-1

 今朝、真紅に咲き誇る花々を眺めて居たら、貴方の事を思い出しました。
初夏の花達の薫香と共に、貴方と読み合った足穂のあの著作を再び手に取ります。
 ああ、貴方のあのお姿、
人が人を愛すると云う事について、何時も物憂い眼差しで、
在らぬ空を見詰めて居らした、貴方のお姿を、
彼等の様で居たいと云って美々しくも嫋やかな其の身を、
若鷹にゃくようの窮屈な制服で身じまいして居らした、貴方のお姿を、
私は瞼の裏に浮かべ、其れは涙に濡れて、はっきりと見えは、しませんでした。
 『世界を革命する力を!!』卒業の前の日に、貴方は突如として、
私の前から姿を消してしまいましたね。其の一言だけを、私の机に残して。
『今に考えるだろうから』と口癖の様に仰られて居ましたが、果たして、
私は考えを巡らせても貴方の深遠たる思想に一歩足りとも近付けないのは、
私が余りにも愚かしいからなのでしょうか…。

<続>

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