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【散文詩】半自動筆記に依る夜想曲(4)-3<終>:『王水』-3<終>

 王は浴槽で其の水の中に溶けてみる事を思い付いた。認識と魂の彼岸、
即ち涅槃ニルヴァーナへ至るにはそれ以外に無いと考えたからだ。
 王がそうした夢想に耽って居ると、侍従長が市井で起こった重大な事件を伝えに来た。聞けば、なんと、罪障鑑識の専門家や有識者の団体が、王の其の王妃を超える美しさを糾弾する為のロビー活動が、今や全国民に拡大し、遂に革命が起こったのだ。王は、話を最後迄聞くと、大笑いした。
 そして、うろたえる侍従長にこう言った『宜しい、結構な事だ。しかし、彼等臣民に良く言って聞かせるが良い。人並み外れて美し過ぎる事は、果たして其れ程迄の罪なのか?とね。』
 王は花の咲く様な微笑を湛えて居た。

<了>

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