見出し画像

【社会人留学】Summer week 2&3~人生は交渉である(後編)~

こんにちは。もうすぐ今年も終わりですね・・・!
年末年始を南半球で過ごすのは人生で初めてです。メルボルンは相変わらず天気の情緒が安定していないものの、日差しは強烈ですし、日照時間は長く20時すぎでも外は明るく、マーケットに行くとスイカ、マンゴー、ライチなどの夏の果物が並んでいるのを見ると、夏だなぁと実感します。一年の終わりのもの寂しい感じを味わうことなく、来年を迎えそうです。

夏の集中講座の1科目を修了してから、タスマニアに旅行に行ったり、Googleマップに旗を立てていた「気になるお店」をまわったり、テニスをしたり、夜通しドラマ(とくに精神的余裕がないと見れないカロリー消費する系)を見たり、友達とキャッチアップしたりと、留学してから最もリラックスした時間を過ごしています。年明け早々に2科目目が始まりますが、それまではだらだらすることにベストを尽くしたいと思います・・・!

さて、今回は、交渉の授業のPost-mortem(最近お気に入りの単語。Reflectionより洒落てる♡)後編となります。全12回の交渉の中で、特に印象的だったケースを紹介します。

The Employee Exit Interview /退職面談
倫理がテーマの交渉経験です。私は退職する社員役、相手は入社後間もないManaging Director(役員)を演じました。私の設定は以下です。
・財務、M&Aのコンサルティング会社(非上場)に5年間勤務
・配偶者の転勤が理由で退職届を提出(11月15日)
・退職に伴い、有給未消化分、会社の持株を売却に際し、交渉が必要
・配偶者は12月に転居するものの、私は必要があれば1月まで勤務可
・5年間の業績は、直近の評価*を除き、最高評価を得ている
*直近評価は、ハラスメントの訴訟問題を起こした役員によりなされた
★交渉のゴール:より多くの金額を得ること

<有給に関する補足>
・通常は現在の給与水準を基に精算され計$10Kとなるが、会社側が有給支給時の平均値を基とする計$6.5Kを主張する可能性がある(業績を鑑みて、いずれの方法が採られるか判断されるらしいと噂で聞いた)
・人事システム上の未消化分は25日だが、会社側のミスで2年前に消化したはずの5日分が未登録。つまり、本来の未消化分は20日だが、25日が精算対象となっている
<持株に関する補足>
・200株保有しており、購入コストは平均$50/株
・いかなる理由でも退職時には要売却、と就業規則に明記されているが、ハラスメント理由で会社相手に訴訟を起こした元社員には、和解の一環で株の一部保有を認めた
・評価額は、通常直近12月31日時点の値($100/株)が参照される
・もし退職日が年をまたぐ場合は、次の年末時点の金額が参照される。金額は分からないが、上昇が見込まれている

結論を先にお伝えしますと、倫理的葛藤を抱えながらも交渉終了時点では結果に満足したものの、会社側の事情を知るやいなや、モヤとした気持ちになりました。。

交渉にあたり、まずは、Target Point(目標値)、Resistance Point (限界点)、そしてBATNA(交渉が決裂した際の代替案)を検討します。ゴールは「より多くの金額を得ること」であることから、以下のように考えました。
Target Point:有給は現在給与額基準の$10K、持株は保有としました
Resistance Point:有給は$6.5K、持株は$100としました
BATNA:無し。。交渉が決裂した場合、何も得ずに退職となります・涙

そして、今回の最重要ポイントは、2年前に消化したはずの有給5日分が会社側のミスによりシステムに登録されていない件を正直に伝えるかどうか、です。実際に、私自身が過去に誤った精算をしてしまった事に気づき、社員に陳謝し返金をお願いするといった苦い経験もありますし、至極当然ながらオペレーションは公平・正確であるべきです。日本では、一般的には有給日数に交渉の余地はなく、また退職時の買取もありませんが、一方で欧米(豪)圏ではケースにあるような交渉は一般的です。有給日数を余計に取得するよりも、対価を金銭で受け取る方が、より大きな葛藤を生むように感じました。誤っていると知りながら金銭でその対価を受け取るのは着服していることになる・・・?他方で、新天地での生活には多くの資金が必要な差し迫った状況で、ケースには「より多くの金額」を得るように、と指示がある。悩んだ末に、会社には申告しないことにしました。倫理的に疑わしい行動をとるとき、人はそれを正当化しますが、私は、家族を支えることをつねに最優先の目的にしているという設定をし、その目的に合致する行動を取ることにしました。(End-result Ethics:目的が手段を正当化する, Personal ethics:個人の信念体系により正当化する) また、会社側とのやりとりで、会社は一切の懸念も見せず25日分の買取を行う意志がみられたことから、さらに正当化が強まるのです。

交渉では、会社側が労をねぎらってくれた上で、有給$6.5K、持株$100で買取りたいと提案されました。それに対して、まず有給は、現行給与を基に計算された$10Kを受け取りたいと、過去の運用を参照しながら伝えました。すると、「直近の業績評価が振るわないので、業績に基づき判断すると、$6.5Kになる」と言われました。そこで、「最近入社されたのでご存じないかもしれないが、直近評価は、訴訟問題を起こした上長に評価されたもの。実績は対目標150%を達成しているので、評価基準に基づくと最高評価を貰えていたはず。上長に説明していただくようお願いするも、訴訟問題と重なり、その後退職されたので、見直していただく機会がなかった」と伝えました。(ストーリーをでっちあげました)すると、「不当に評価をされていたことがわかる根拠を見せて」と言われたので、適当に評価基準に対する実績を説明したところ、理解を得られ、希望通り、$10Kで売却できました。続いて、持株について、ハラスメント被害者の保有を認めていたことを引き合いに出し、保有したいと伝えるも即却下。会社には率直に「転居に伴いキャッシュを確保したいと考えている。少しでも高い価格で買い取って頂くには、どのような方法があるか。1月まで勤務できます。」というと、「会社としては11月末退職を想定していたが、12月末まで在籍してもらってよい。そうすれば12月分の給与も受け取れる。ただし、新たな評価額にかかわらず、評価額(買取額)は$110/株で固定するのが条件になります。」との回答。「1月まで勤務を続けることは難しいのでしょうか」と質問すると、「1月には後任も着任するし、新たな組織体制でスタートするので、働いてもらうことはできない」と言われたので、12月末退職で$110/株で売却することに合意しました。

有給はTarget Point達成、持株もResistance Pointを超えたのでハッピーだったのですが、後から、会社は来年、他社に買収されることが決まっており、その影響で、1月には株価が5倍~10倍になる想定がされていたため、会社は払出を減らすため、どうしても年内中に私を退職させる必要があったと知ります・・・。非上場企業なので、会社には株主報酬に影響を及ぼす情報は開示する責務があったのですが、その話はなく(相手に利益をもたらす情報を開示しないことを交渉用語でOmmission/省略といいます)、また契約期間を1月まで延長する可能性についての議論では、後任が決まっているならば仕方がないか、とすぐに引き下がったのですが、理由が違えば、交渉の結果は異なった可能性もあります。

つまり、私も、相手も自分に不利な情報は開示しなかった、倫理的でないとも受け取られる選択をしたことになります。倫理とは明確に白・黒がつけられるものではなく、特に実際のビジネスにおいては、つねに真っ白な選択肢をとりつづけることが難しい、グレーの現実もあると思います。教科書では、これはだめ、それもだめ、と非倫理的と思われるテクニックが否定されていましたが、教授は「Theory doesn't always go hand-in-hand. If you don't use any of the tactics, you might end up losing or making no agreement. Practice is a different story. Theory might not be practical in the real world. (理論や理論的なアプローチは実際の状況と必ずしも一致するとは限らない。現実は複雑で多様で、理論がそのまま通用しないこともある。もし非倫理的と言われるテクニックを全く使わないとしたら、一方的に負けてしまったり、合意に至れなかったりするかもしれない。)」とおっしゃっていました。倫理とは、法律とは異なり、その是非は主観的に判断されるものだからこそ慎重さが求められ、心理的負担がかかります。人事として働くなかで、もちろん内容に虚偽は一切ありませんが、多方面への影響を鑑みて、ある時点で何をどこまで伝えるかを見極める必要がありました。教科書と照らし合わせるとグレーと取られるかもしれません。理論と実践の難しさを実感したテーマでした。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
みなさま、よい年末年始をお過ごしください^^

セブンイレブンの$1スラッシュにはまり中❤


この記事が参加している募集

#最近の学び

181,634件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?