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【ネタバレあり感想】フィリピンドラマ『Saying Goodbye』

iQIyI フィリピンオリジナルドラマ『Saying Goodbye』
フィリピンドラマは初視聴です。

2007年、レコード屋で最悪の出会い方をしたRickyとEliseは二人ともYeng Constantinoの大ファンであることから意気投合し、大親友となった。
2014年、7年後も二人は大親友。Rickyは自身の病の悪化から、Eliseと一緒に叶えたいTO DO LISTを作りはじめる。死を恐れるEliseはそれを受け入れられない。
最後まで戦うことを望むEliseと、今を生きることを一番に考えるRicky。すれ違いつつも無駄にできない時間を惜しみながら過ごす「別れ」までの物語。

『Saying Goodbye』というタイトルの通り、この作品はRickyとEliseがお互いに悩みながらも愛し合い、お別れをするまでを描いています。

Eliseが死を恐れる理由。
それは2007年、RickyがEliseに告白をしようとしていた日。
最愛の父を突然失ったから。
あまりにも突然の死を受け入れられなかったEliseは母親の再婚相手との仲もぎこちない。
建築を専攻していたEliseは医学部に通うようになる。
父親の死、そしてRickyの病気がきっかけなのではないかと思います。また、RickyもそんなEliseの姿を見て、Eliseが大好きなショートケーキを作るため、経済学を学んでいたけど、パティシエになります。

そんなEliseをずっと側で見てきたRickyはEliseに簡単に告白することができなかった。
Rickyはかねてから心臓の病気で、その症状は年々悪化していた。
2014年に医者から『心臓移植しか方法がない』と告げられ、Rickyは密かにTO DO LISTを作り始める。大切な大親友Eliseと一緒に叶えたい4つの項目。

Eliseは最初このリストを埋めるのに反対した。「別れの準備などしたくない」と。
Rickyは「今僕が生きてここにいる。それがいちばん大切なんじゃないのか?」と。
2人の未来を信じたいEliseと今を懸命に生きたいRicky。
2人は幾度となくすれ違いをします。

"Everyday is a blessing" 毎日が祝福だ

Rickyの口癖。
劇中にはRickyが朝目覚まし時計を止めて起き上がり、生きている喜びを噛みしめる場面が何度も登場する。
明日があることが当たり前でないRickyにとって、毎日が祝福なのです。

Rickyの顔を見るたびに泣いてしまう母親に対して、「泣いたら5000ペソ」という約束をして何度も請求するシーンあったの、毎回泣き笑いしてたな…

周囲の人に心配をかけないようにいつも明るく、ふざけているRickyの姿が痛々しくもあり…「毎日が祝福」を体現している姿だったな。

そんなRickyをみて、EliseはTO DO LISTに協力する代わりに、Rickyとある約束をする。
「どうなっても、最後まで戦い続けること。生きる方法を探し続けること。」

Rickyも約束をする。「生きようと最後まで戦う」と。

RickyとEliseの二人を観ていたら、なんで素直に気持ちを言えないの?なんで弱さを見せることをためらうの?思ってしまったけど。
でもそれが実は一番難しい。愛している人だからこそ、自分の弱い部分は見せたくないって思ってしまうのかな。
すれ違って、離れている時間の余裕は、二人にはないはずなのにね。

このリストがすべて埋まったとき、「ああ、Rickyとはお別れなのだな」ってなぜかこっちが気付いてしまった。ずっと最終回まで助かるかもしれないと淡い期待を持ち続けて視聴していたけど、TO DO LISTが埋まった瞬間、そっか、もうお別れなのだなと悟った自分がいた。

最後のデートの時、RickyはEliseにこう言った。
「僕に万が一のことがあっても、一人でちゃんと生きてくれ。君には君の人生を楽しんでほしいんだ。」
「知ってる。君が勇敢で強い女性だってことを。だからできるよ。」

Rickyを演じるSeth Fedelinの演技が光っていました。Rickyの持つ二面性。
両親、友達、Eliseの前でもRickyはいつも明るくて、冗談を欠かさず、前だけを見る死を恐れない強い人だった。みんなの「光」だった。
でも、一人でいるときのRickyは残されるEliseの傷を思って苦悩する「影」の部分が色濃く出ていた。

Rickyは強い人だけど、Eliseの前で苦しい姿を見せる「強さ」は持ち合わせていなかった。
だから、最後のデートの時にEliseを抱きしめて泣いたとき、「最期」だ、感じた。
RickyがEliseに初めて見せた弱い部分。
「死にたくない」という気持ち。

7年間の二人の思い出は振り返れば振り返るほどひとつひとつが尊くて、儚くて。一瞬で通り過ぎてしまう『今』という時を噛みしめた二人だからこそ作れた瞬間だったと思う。

二人だけのステージ
雨の中のダンス
初めて繋いだ手
最初で最後のハグ

Rickyは365日分のビデオメッセージが入ったUSBをEliseに渡す。
これで普通の一日一日を丁寧に生きてみてほしい。そうやっていればきっと自分のいない世界でも立派に生きていけると。

自分のいなくなった後の世界のことを考えるのはどんな気持ちなんだろうか。やっぱり、大切な人が悲しむと考える方がよっぽど自分が死ぬことより悲しいのだろうか。いや、でもEliseがRickyに会えなくなるということは、RickyもEliseに会えなくなるということ。

Rickyも怖くないはずない。
やっぱり、Rickyは優しすぎるし、それがどうしようもなく切ない。

Eliseをハグするシーン、Eliseは幸せそうに笑っているけど、Rickyはそうじゃない。これから言わなければいけない悲しい話を、自分達の未来を想像して苦しんでいる。

「死」は私たちにとって恐ろしい存在なはずなのに、いつもは影を潜めている。急に私たちに迫ってきて、脅かす。

そんな「死」とどう向き合うか。
Rickyは「今」を懸命に生きた。明るく、朗らかに。
死の恐怖とは無縁に見えた。でも、「受け入れていた」ように見えただけで簡単には受け入れられなかったとあの涙が語っている。
死は手に負えないものだから。

では、「死」を恐れずにいられるにはどうすればいいのか。

死を恐れずにいられる唯一の方法は死について考え続けることだと思う。
私たちの隣にいる死に目を背けず、考え続けること。

『Saying Goodbye』
365日のビデオの最後、そのときはじめてRickyはEliseに「さよなら」と言った。
「これでお別れだ。」と。
自分のいない世界でもEliseの人生は続いていて、そんなEliseを信じて言う「さよなら」は、強くて、やっぱりすごく悲しかった。

あなたはずっと私の心の中にいる

Rickyに生きててほしいとずっとずっと思っていた。
もちろん今も思ってる。
奇跡を望んでみたりもした。
でもそんな手に負えない胸が締め付けられるお別れをこのドラマで描き、死について、さよならの言い方について考えさせてくれた大切な作品です。

夜中で、しかも視聴直後でまだ考えがまとまらないまま執筆しているのでぐちゃぐちゃな文章ですが(言い訳)

RickyとEliseは、誰もが平等に待ち受ける「死」「別れ」との向き合い方を優しく教えてくれました。
他にも、Ricky、Eliseそれぞれの両親の苦悩や、周りの人々との関わりを通じて2人が近づいていく場面など、見どころはたくさんなのですが、まだまとまらないので後日書くかもしれません。

多分日本で見ている人は少ないと思うのでぜひみてください。
必ず、得るものがあります。

いまだにRickyを私が見送れずにいます。EliseはラストシーンでRickyに「さようなら」と言ったけど、私はまだ言えてない。
もう少し時間がかかりそう。
Ricky、あなたは強く、最高の光だった。
Elise、あなたも強い人だ。

出来ればふたりの幸せが永遠に続くことを願いたかったけど。
Elise、尊い一日一日を、立派に生きていってください。

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