【ショートショート】地下室の秘密
この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。
中村家は古い家に引っ越してきた。
父親の慎吾は地下室で埃まみれの日記を見つけ、「人生にもっと毒を」と書かれたその日記に強く惹かれた。
退屈な日常に刺激を求める彼は、妻の美咲と子供たち、健太と彩を巻き込んで実験を再現し始めた。
最初は食事の順序を逆にするという軽い実験だった。
家族は最初は笑っていたが、次第に家の中の空気は不穏になっていった。
夜中、不気味な音が響き渡る。
「これも実験の一部なの?」と健太が不安そうに尋ねると、慎吾は苦笑いを浮かべた。
「たぶんね」と、明るく答えたが、その目には好奇心が満ちていた。
「これはもう冗談の域を超えているわ」と冷静に指摘する彩。
廊下で影が不規則に動き、部屋の温度が急に下がる中、美咲は顔を曇らせ、「慎吾、本当にやめるべきだわ」と真剣に訴えた。
だが、慎吾はその異常な状況にどこか楽しさを感じていた。
家族全員が集まり、実験を続ける中で次々と奇妙な現象が起こる。
健太は夜中に聞こえる囁き声に怯え、彩は冷たい風に身を震わせ、美咲は不安で夜も眠れない。
影の動きや冷気、不気味な音に驚きながらも、慎吾は何かを見つけたように目を輝かせた。
「これが全ての仕掛けか」と慎吾は驚きながら呟いた。
通風口からの風が古いオルゴールを動かし、不気味な音が響いていたこと、影の動きや冷気も過去の住人が仕掛けた巧妙な装置によるものだったと分かる。
実験の本当の目的は「家族の絆を試す」ことだった。
全てが一つの大きな試練であり、この経験を通じて中村家はより強く結ばれた。
しかし、日記の最後のページには「次の家族へ、楽しんで」と書かれていた。
その一文を見た、慎吾は「次の家族がどんな『毒』を味わうのか、想像するだけで愉快だな」と笑い、次の家族へ受け渡すための計画を練り始めるのだった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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