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ツキミソウ

「記憶の風」


鮮やかな日々。

鮮やかな会話。

鮮やかな面構え。

そのひとときは、

とても大切で

思い返せば切なくて

でも、あたたかな

時間だったような気がする。

いまは、思い出せない。

でも、確かにあった出来事。

どんな名前だっけ。

どんな場所だっけ。

「どんな人だったっけ。」

そうやって、

思いだそうとしても

もう、朧げで思い出せない。

記憶の中の自分があまりにも

眩しい笑顔なものだから

少し目が潤む。

上手く思い出せなくても

上手く変われなくても

上手く笑えなくても

そこにあった時間は

そこに確かにあった。

それは自分だけではない。

それはあのとき出会った人もそうなのだ。

そうやって、少しずつ何かを忘れ、

少しずつ新しい何かと出会う。

確かにあった出来事は、

そっと胸の中にしまっておいて、

全部が嫌になったとき

取り出すたびに

切なさと一緒に幸福も運んでくる。

少しずつ少しずつ

緩やかにだけど

変わっていけている気がする。

それは、自分も。他人も。時代も。

だから、恐れるな。

変わることを。

変わらずにそこにいる

朧げな風を追い越すことを。

だから、ゆけ。

高みまで。ゆけ。

戻らないところまで。ゆけ。

私よ、風を追い越せ。


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