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エッセイ#68『入社式前日に広島へ』

 「じゃあ、広島にしね?」に二つ返事をしたのは今年3月の後半のこと。
 大学の卒業旅行の行き先が全く決まらず、友人がした提案に対して無意識にノってしまったのだが、この失敗に気付いたのは出発の1週間である。
 出発は3月31日(金)、観光するのは4月1日(土)、そして千葉へと帰ってくるのは4月2日(日)、そしてこの旅行は「大学の卒業旅行」だ。そう、次の日が入社式なのだ。

広電宮島口駅にて
当日はよく晴れていた

 直後の入社式は億劫だが、旅行自体は大変有意義なものであった。ここ数年、旅行の楽しみ方が今ひとつ思い出せずにいたが、今回の卒業旅行に関しては「これだこれだ!」と常に楽しい気分が続いた。
 東京駅鍛治橋駐車場を夜中に出発し、高速バスで翌日の昼には広島である。その間、足柄、岡崎、宝塚北、吉備、と4箇所のサービスエリアに立ち寄ったが、その全てを全力で楽しんだ。
 広島市内及び宮島がある廿日市市を散策した際には広電を駆使し、呉市へと足を延ばした際にはJR呉線を利用したが、今思えば24時間で回れる範囲を大幅に上回っていた気がする。こればっかしは友人の鉄道好きが遺憾無く発揮されていたと考えて良いだろう。

近々廃止になるということで乗りに行ったスカイレール

 行きは高速バス、観光は鉄道、そして帰りは飛行機である。「広島空港」という名が冠されているが、その所在は広島市ではなく東へ離れた三原市だ。
 広島駅から出ているリムジンバスに乗り込み、眠っている間に空港へ到着した。ここまで来てしまえば、ここが広島県であることは忘れてしまう。どこかの空港だな〜、くらいにしか思わない。それよりも翌日の入社式が現実味を帯びてきて嫌な気分にすらなってきた。
 飛行機に乗って辿り着いたのは羽田空港ではなく、我等の千葉県が誇る日本の玄関「成田空港」である。県内にありながら、実は利用は今回が初めてであった。楽しい楽しい旅行は間もなく終わりを迎える。

広島空港にて
実際に乗ってのはANAではなく春秋航空の日本版みたいなやつ

 茨城に住む友人とは改札前で別れ、アクセス特急で帰るために私は京成線の改札を潜った。ホームに着いた瞬間に目の前でアクセス特急が行ってしまったので、40分程待つ羽目にはなったが、何とか無事に帰宅することに成功した。
 旅行の帰り道というのはある種のハイになっているのか、リュックサックを背負った状態で両手にお土産の紙袋を持ったまま、それを苦とも思わずに歩いている。そしてその疲れは自宅のリビングに着いた瞬間に一気に伸し掛ってくる。

 さて、翌日の私は無事に早起きに成功し、入社式には間に合ったのか。いくら思い出そうとしても、その間の記憶がほとんどない。唯一思い出せたのは、会長が講話をしている間、ずっとマイクがハウリングしていたことだ。

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