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人生のポテンシャル理論で考える、恋愛・結婚・家庭

 前回は人生のフロー・ストック・ポテンシャルの観点か学歴の効用について論じた。続いて人生には欠かせない家庭形性という観点から人生を論じてみたいと思う。(フロー・ストック・ポテンシャルの頭文字を取って「FSP理論」とか名付けてみたい気もするが、通じなそうなのでやめた。)

 さて、記事の中でポテンシャルのピークを20歳、フローのピークを45歳、ストックのピークを70歳と論じた。これを恋愛・結婚・家庭に置き換えるとどうなるか。

 世の中の男性が付き合いたい女性の年齢は決まっている。どの年齢の男性に聞いても帰ってくるのは「20歳」である。もしかしたらもっと下じゃないと嫌という人もいるかもしれないが、もっと上の方がいいという人もいるだろうから、平均を取るとこんなものだろう。ポテンシャルのピークがちょうど女性が最も魅力的に映る年齢ということになる。

 この理由は何か。それは男性の本能的な欲求が女性の生殖可能性に向けられているからだろう。生殖は生理的反応なので、あまり後天的なスキルは関係ない。純粋な肉体労働ということになる。この場合は20歳が一番有利だ。実際、知的能力をほぼ必要としないグラドルや風俗嬢の場合は20歳が職業人生のピークとなりやすい。

 また、20歳というのは恋愛のピークでもあるだろう。この年代の男女は一番交際が活発だ。キラキラ大学生と言えば必ずと言っていいほど男女交際のイメージで語られる。この年代はあまり将来のことを考えずに恋愛することができるので、一番恋愛脳が発揮できる時代だと思う。恋愛を結婚・家庭のポテンシャルと考えれば、20歳が恋愛のピークなのは整合性が取れる。ポテンシャル勝負となれば、責任も重くないし、純粋に楽しい活動として捉えることができる。

 20代中盤になるとこのような恋愛は下火になってくる。というのも多くの人間が結婚を視野に入れ始めるからだ。結婚適齢期はだいたい20代後半である。男性の場合は30代前半でも問題ないかもしれない。恋愛は純粋なポテンシャル勝負だったの対し、結婚はよりフロー的な要素が大きいだろう。また、男性の価値はこの年代になると上がり始める。就職し、経済力を得るため、フローが上昇し始めるからだ。最近のライフステージを考えると、結婚のピーク年齢は30歳だろう。アスリートのピークと同じである。

 多くの仕事では45歳辺りにフローのピークが来ることが多い。人間が知的生命体である以上、技能は老化が深刻になってくる50代まで右肩上がりになり続けるからだ。この時期にやってくるイベントは何か。それは子供の受験である。じつは世の中の教育ママはその人間としての能力がピークに達する年代に子供の受験に熱を上げているのである。

 最後にストックのピークについて考えてみよう。こちらはそこまで明確ではない。順調に家庭形成に成功した場合、子孫の数はどんどん増えていくことになる。子供が育って一人前になれば、それは立派な功績であり、資産となりうる。70歳辺りであればちょうど孫が遊んでくれる年頃であり、自分も元気で体が動くことが多いだろう。厳密にはこの後もストックは増え続ける。病院で死にかかっている90歳の老人は将来性もなければ充実感も感じにくいかもしれないが、長年連れ添った配偶者・2人の子供・4人の孫・最近生まれたひ孫に囲まれていれば、きっと満足感を感じられるのではないかと思う。

 恋愛はあまりにも人間の本能に深く組み込まれているため、それ自体を目的と感じることが多いだろう。ただ、恋愛は学歴と似ていて、将来のより大きな目標の踏み台でしかない。20歳前後の恋愛は社会的に肯定されることが多いのだが、30歳になると純愛というのは難しくなり、結婚して子供が生まれると、恋愛は非道徳なものへと変化する。恋愛とはどうも思春期になってから結婚するまでの10年20年ほどしか使わない機能のようなのである。中年になって恋愛をこじらせている人間は、ある意味で学歴コンプのようなものかもしれない。40歳を過ぎて子供がいる人間が不倫をするのは、脳外科医として働き盛りの医者が学歴コンプを解消するために理三に入りなおすようなもので、まったく歓迎されないだろう。

 逆に恋愛を手段として考えれば、必ずしも恋愛に深入りする必要はない。例えば私の祖母は80年経っても未だに恋愛がどういうことなのかよくわからないらしい。それでも半世紀以上の結婚生活を続け、子供や孫にも恵まれているので、特に問題はないのだろう。例えるならば、学歴に固執せずに高卒でスキルを身に着けるなどし、成功する人種のようなものだ。

 恋愛よりも本能的・動物的なのは性欲だ。先ほども述べたように男性にとって最も性欲を掻き立てるのは20歳の女性だ。これは性欲が生殖という生物学的機能に結びついていることに起因している。(おそらく回答者の男性は結婚や子育てを前提とはしていないだろう)20歳がピークという職業はよほどの単純労働に限られるだろう。風俗嬢やグラドルは知的能力の積み重ねを必要としない、純粋な単純労働だ。ただ、結婚は人間的な要素が大きいので、ピークはもっと後だ。20歳という年齢は人間としての女性のピークとはあまり関係がなく、あくまで子宮という臓器のピークと考えた方が良いだろう。実際、子育てなどを考えた場合は子供を産むのは20歳では早すぎるのではないかと思われる。

 結婚が対応するのは就職だと思う。転職の場合はだいたい35歳辺りが年限とされる。これは結婚の年限に近いだろう。20歳辺りにピークが来る恋愛を家庭というフローに変換していく過程と考えることができる。大体25歳から35歳辺りに結婚すればよいだろう。なお、JTCの就活はしばしば結婚で例えられることが多いが、JTCの方が遥かに年齢要件には厳しい。22歳~25歳の時期を逃すと結婚できないようなものだ。ただ、実は結婚も一番いい人と出会うにはこの時期がベストなのかもしれない。

 興味深いのは、男女でピークに若干のギャップがあることだ。基本的に女性の方が若さが求められる。男性の場合はフローがピークになる40代ごろに子育てを充てられるように家庭設計をすればいい。もう少し遅くても問題はない。ところが女性の場合は出産という肉体労働的な要素が加わってくるため、より年限が厳しい。出産適齢期は30歳ごろだが、これは肉体労働のピークに等しい。男性の場合は経済的価値という頭脳労働的な要素が求められるのに対し、女性の場合は出産という肉体労働的な要素が求められるという背景が見え隠れする。日本人の健康状態はどんどん良くなっているし、寿命の延びに従って高齢者の身体機能も上昇しているのだが、卵子の老化だけは改善されていないらしい。こうなると、人生設計の中で出産適齢期の制約はより大きくなってくる。令和の40歳は昭和の30歳くらいの感覚だろうが、昭和の30歳女性が普通に子供を産んでいたのに対し、令和の40歳女性が子供を産むのは大変なのである。

 家族という観点で見ると、フローがピークになるのは40代だ。理論の上では実体的な家族形成のピークはこの時期にあることになる。確かに、ファミリードラマに出てくるお父さんの平均年齢は40代だろう。子供もある程度手がかからなくなり、一番充実した時期である。また、この年代はまだ親が70代であり、活発な交流を持てる時期だ。となると、確かに40代は上にも下にも話し相手がいる、充実感に満ちた時期と言えるだろう。ただ、この時期の家庭は子供の受験という大勝負を迎えるので、仕事と同じく責任重大である。中学受験がヒートアップする理由の一つは親が人生の全盛期にあるからかもしれない。

 子供の受験がかかってくる40代が家庭形成のおけるフローのピークとすれば、これ以降の家庭はストックという側面が強くなってくる。子供が独り立ちすれば今までの労力がなくなるが、その反面かなり寂しくなるだろう。ここからは自分が手取足取り世話しなくても子供は自分の力で金を稼いだり結婚したりしてくれるので、まさに資産所得のような状態だ。孫の子守りをしたり、教育資金を援助したりすることもあるが、あくまでわき役という立場だ。過去の積み重ねのおかげで現役時代ほどの負担はかからない。老年期になれば、自分が病気になった時に子供の手を借りる機会が増えてくる可能性もある。「老いては子に従え」の段階だ。ただ、なぜ「老いては子に従え」ができるかというと、それは長年にわたって家庭形成を頑張ったからだ。誰でもできることではない。

 孫が4人いれば、確率的に自分の子孫が断絶することはまずない。この段階になると生物学的な自己保存は「上がり」である。後はひとりでに子孫は増えていく。ある意味で生物学的FIREと言えるかもしれない。


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