東大理三のデメリットはあまり知られていない

 東京大学理科三類、大学受験の最高峰と知られる日本最難関の医学部である。私は進学校の出身だったし、大学時代も結構他学部の人と交流があったから、理三の知り合いは多い。その中でも東大医学部を卒業して今は医師をやっている大親友のA君から色々話を聞いてきた。
 東大医学部は知名度こそ高いが、その事情は知られていない。意外にも入ってみると良くないところの方が多いらしい。なぜそれらが広まっていないのかも含めて今回は書いてみようと思う。(インサイダーではないからこそ書けることも多いのだ。)

天才的な能力が役に立たない

 東大理三は日本中から天才が集結する。数学オリンピックの日本代表も多い。そういう人々は一般の東大生から見ても信じられないような飛び抜けた理数系の能力を持っている。ただし、それらの能力は医学の勉強には役に立たないし、医者の仕事にはなおさら関係ないらしい。数学や物理が大好きで理三に来た人の中には勉強がつまらなくて悶々としたり、落ちこぼれてしまう人がいる。天才的な能力を持っているが故に挫折感は強そうである。

カリキュラムが悪い

 東大医学部はカリキュラムが良くない。最初の二年は教養課程で医学のことはやらないし、専門課程に上がっても講義は教授の趣味で国試の対策はしてくれない。そのため東大の国試合格率は全国でも低い。理三に行くような天才でも自力で頑張らないと、あっという間に国試浪人に突入してしまうのである。現に東大医学部生であっても落ちこぼれは多数存在し、何年かかっても国試に受からない人だっている。天才集団についていくのはとにかく大変なのだ。

内向き志向

 東大医学部はある種日本の頂点である。頂点であるということは外の世界には大したものはないということだ。だから東大医学部出身者は内向きになる。東大の医局の周りで出世競争し、大半は敗れ去って意気消沈するらしい。外の世界が格下に見える気持ちはわかるが、ビジネスなり行政なり彼らの桁違いの能力を持ってすれば外の世界で大活躍できる人間は多いはずだ。
 東大医学部の内向き志向によって才能が花開かなかった人も大勢いるかもしれない。
 また世界が狭いので内輪の風評を恐れて大きなことをやりにくいそうだ。

成功者ゆえの挫折感

 東大理三生は18歳の時点では日本の上位0.01%君臨している。ところがその中で社会に出て日本人の上位0.01%に入れる人は殆どいない。同年代の上位百人に入るような社会的成功を収めるには、大臣とか銀行頭取とか五輪の金メダリストにならないとダメだろう。医学界のトップになれば入れるかもしれないが、そんな人は限られている。だから殆どの人間は普通の医者にしかなれない現実に失望していくのである。18歳時点の達成感が強すぎるが故に挫折感を感じるのだ。

そこまで医者としてのメリットがない

 東大理三はたしかに学歴としては最強だが、医者になってしまえばそこまで実利的なメリットはない。医者の給料は卒業年で決まるし、開業に有利ということもあまりない。確かに普通の医学部よりも教授になっている人は多いが、それは単に優秀な人が多いだけである。マッチングに関しても大して有利にならず、むしろプライドが高そうと思われて敬遠されることも多いらしい。

空気が悪い

 東大医学部は妙にピリピリしたムラ社会らしい。和田秀樹のように外の世界で目立っている人物は悪口を言われるし、落ちこぼれにも冷たいそうだ。周りが優秀すぎるので何をやっても承認欲求を満たせないし、かといって競争心は強いのでお互いライバル意識と劣等感を感じている。皆プライドは高いので、ストレスを感じていることを認めたくはない。なんだか殺伐として居心地が悪い環境のようだ。学科に馴染めない人は内心嫌だと思いつつ、口をつぐんで静かに距離を置くのである。
 youtubeでもやろうものなら真っ先に悪口を言われるらしい。現に理三youtuberの人も嫌な思いをしているようだ。

堅苦しい

 東大理三に合格するような生徒はだいたい真面目である。したがって気風としてかなり保守的になる。医学部の教授は権威主義的で頭ごなしのようだ。
 学生もスキのない優等生ばかりだそうだ。あまりにも周りが優秀なので少しでも醜態を晒すと笑われるし、エリート集団はだいたい弱者に当たりが強い。間が抜けた天然キャラは一般社会だと愛されるかもしれないが、エリートの世界だとただの無能として軽蔑されてしまう。完璧超人に周りを囲まれるのはかなりのストレスなのである。
 間合いとしては世間で言う「会社の人」に近いらしい。

一部ヤバい人がいる

 ごく一部ではあるが、極端に性格の悪い人間がいるらしい。学部は違うが、私もこの手の人物は沢山見てきた。いわゆるサイコパスやソシオパスと言われるような人々だ。理三ならさらに強烈だろう。夜神月やヴォルデモート卿のような人間が周りに存在するのは結構怖いものである。

なぜ世間であんまり知られていないのか

 これらの話はA君から聞いた内容を再構成しただけでどこまで本当かはわからない。 このような内部の話はなかなか外からは分からないものである。
 官僚のブラック労働に関しては悪名高いが、東大医学部の良くないところに関しては世間で殆ど知られていない。学科がムラ社会なので外で目立つと叩かれるし、批判しようものなら尚更ボコボコに叩かれるはずだ。医者として働く上では波風も立てたくないだろう。
 また、アタマがいい人はマウントを取ったり嫌味を言うのも巧妙なので、絶妙に文句を言えないような正論で押してくる。ぐうの音もでない正論で叩かれると、手も足も出ない罪悪感に苛まれ、口をつぐまざるを得ない。遅刻を陰湿に責め立てられたとして、世間に「遅刻を咎められて辛い」とは言いにくいものなのである。
 アウトサイダーとしても、東大医学部を批判すると学歴コンプだの言われてしまうので黙らざるを得ない。殆どの人間は「よくわからない天才集団」で止まってしまうのである。

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