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海外移住、その後のストーリー

「もうどのくらいフランスに住んでいるの?」
私がフランスで暮らしていることを知ると、多くの方がこのように質問されます。

普段自分では意識していないことなので、
この質問をされると、慌ててこれまでの年月を思い返して、
思わず『フランスに来てからもうこんなに経つのか。。。』
と自分自身が驚いてしまいます。

と同時に、まだ渡仏したばかりの最初の1、2年のことを思い出すと、
今でも胸がピリピリと痛むのです。


◆ フランスに来てみたはいいけれど

日本で生まれ育った私にとって、
当初パリで見るもの聞くもの全て新鮮。
何もかもが華やかで輝いて見えました。

と同時に、今までの「あたりまえ」や「ふつう」のことが全く通用しなくて
途方に暮れたのも事実です。

スーパーでりんご1個買うこともままならず、
当時アラサーにもなって、自分のあまりに無力さに愕然としたものです。

次第に無力感と孤独感にひどく悩まされるようになりました。
それまでの自分のアイデンティが崩れ、粉々になっていくようでした。

でもそんな話を日本の家族や友人にする勇気はありませんでした。
心配をかけてしまうだけだし、
もし話をしたとしても、
この状況はきっとわかってもらえないだろうな…思ってしまったから。


◆ 誰かに話を聴いてもらいたか った、あの頃の私。

私と似たような経験をお持ちの方は、きっと少なくないと思います。
現地で勉強したり、仕事をしたり、そしてそこでの生活に溶け込もうといくら努力をしても、
日々の暮らしの中で、少しずつ何かに打ちのめされていく感じ。
そして、この感覚には本当に終わりかあるのか?と途方に暮れてみたり。

時には「海外で暮らす」ことの重みで苦しくてどうしようもない思いに
心を支配されてしまう時もあるでしょう。

でも、もしあの時、その思いを共感しあえる誰かがいたり、
私の話や思いに耳を傾けてくれる人がいたら、
当時の苦しみや辛さも、グッと和らいだんじゃないかな?と考えるのです。

残念ながら、あの時の私には誰もいませんでした。
一人で出口のないまま悩み、その重みに耐える日が続きました。


◆ 今私ができること

こんなことを思いながら、
「そうですね、気づいたらもう10年以上になりますかね。」
最近ではこんなふうに、細かく年数を数えることもしなくなりました。

幸い今はすっかりフランスの生活にも慣れ、
このまま人生のパートナーとここで暮らしていくことに
なんの迷いもないからなのかもしれません。

海外での暮らしには、
もしかしたらキラキラしたイメージがあるかもしれない。
でもその裏には、
何かにもがいたり悩んで苦しんだりするストーリーがある。
きっと、たくさん、たくさん、あるだろうなと思うのです。

そんな思いを抱えている人がいたら、
私はゆっくりその声に耳を傾けたいなと考えるようになりました。
当時の自分は、心の声をグッと飲み込んで耐えてしまったけれど、
やっぱりどこかでちゃんと自分の思いを外に出して表現してあげないと
私たちの心というのは、ますますを傷ついてしまうと思うのです。

きっと誰かに自分の思いを聴いてもらえたら、
少しずつ、心は元気を取り戻していくんじゃないかなぁ。

そう思いながら、今日も誰かのお話をゆっくり聞く時間を過ごしています。




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