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書籍#14.『赤の継承:カープ三連覇の軌跡』緒方孝市(著)~がががががむしゃら~

るしあ昌

 いわゆるカープ女子が流行りだし、広島では「私もカープ女子じゃけえ」と言うおばちゃんが増えたとの噂を耳にした頃のこと、わたしは自分のことを「カープ女子じゃなくて(生粋の)カープファンなんで」と一丁前に自負していました。

 ファンというのはまったく不思議な生き物で、この誤解されたくないという想いの裏側には「メークドラマの屈辱を知っているのか。そのあとの暗黒時代も応援してたんだぞ!」という頑固おやじ顔負けのプライドがありました。


◆緒方孝市氏のカープ野球

 もう数か月前の話になりますが、緒方孝市氏の『赤の継承:カープ三連覇の軌跡』を読みました。

 2016年の25年振りセリーグ制覇、さらには三連覇を経験した後でもわたしにとってのカープ最強打線は、1.野村、2.正田、3.前田、4.江藤、5.金本、6.ロペス、6.緒方です。タナキクマル(+ベテラン新井&神ってる誠也)も大好きでしたが「あの時代があったから――」という想いが今でも心のどこかにあるような気がします。

 実はこれらの時代すべてに関わっていたのが緒方孝市氏なのだと気づいたのは、彼が監督を退任した後のことでした。

 苦労を重ねながら主力選手として活躍し、引退後はコーチそして監督として黄金時代を築き上げた緒方氏。この『赤の継承:カープ三連覇の軌跡』には、そんな彼の経験と思いが込められています。

◆三連覇への軌跡

 勝ちにこだわった初年度の失敗から25年ぶりの優勝と黄金期を実現――タナ・キク・マルの確立、誠也の四番抜擢、新人・西川龍馬の起用をはじめとするお家芸の育成論、寝食を削っての徹底的な戦力分析や一球ごとの緻密なベンチワークといった采配の裏側、そして未完に終わった日本一。リーダーの素直な思いと、再起を担う若鯉へのエールを綴る。

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 決して多くない口数、孤独で想いは内に秘め、どちらかというと不器用なタイプだと思っていた緒方氏が語るその多くは、意外にも「失敗」でした。

 ファンとして印象に残るゲームとはおおむね勝ち試合であり、劇的な勝利の瞬間です。しかしチームを率いる緒方元監督の記憶に深く刻まれたのは2015年マツダスタジアムでの最終戦、クライマックスシリーズ進出を掛けた重要な場面での敗戦だったそうです。

 監督だからこその葛藤。

 期待されていた一年目の失敗からどのようにしてチームを優勝へと導いたのか、そこにはサクセスストーリーというありきたりな言葉で片づけるにはもったいない地道な努力と試行錯誤があったことが分かります。


◆ファンとしておもしろかったポイント

 本書の魅力は「三連覇への軌跡」だけでなく、むしろそれ以外のところにあるのではと個人的には感じました。

 その一つが、緒方氏の野球人としての姿です。

 わたしが知っている緒方氏は走攻守三拍子(ビジュアルを入れて四拍子かな)揃ったスター選手です。その彼がどのような学生時代を過ごし、どのような人々と出逢い、支えられながら野球を続けてきたのか、努力や苦しみも含めた野球人としての人生を知ることができたのがおもしろかったです。

 また最も興味深かったのが、先ほども少し触れた90年代のカープについてでした。球団の戦略も含めて当時の三村野球が一体どんなものだったのか、もう一度あの頃に戻って、あの頃のカープが観たいと強く思いました。
(あの時代のカープもおもしろかったよなあ・・・くぅ~)

◆ファンじゃなくてもおもしろいよポイント

 本書には野球やカープだけでなく、人々を導くリーダー論、個人の能力を育て引き出す育成論、そして組織を管理運営しながら強化していくビジネス書としての要素が含まれています。

 そのなかで個人的に印象に残ったのは「役割というのは案外誤解されやすいものだ」と語っていた箇所です。

 たとえば2016 年 シーズン、私は選手たちが自分の役割をきちんと理解しているか推し量るために、よく「君の役割は何だ?」という質問を投げかけた。そこでたとえば投手から「最低10勝することです」「15勝してチームに貢献したいです」といったたくましいコメントが返って き たら、「それは個人の”目標”であって、監督である私が求めている”役割”ではないな……」と内心思っていた…(略)…「10勝したい」「20勝したい」というのは目標であって、役割とは違う。目標というのはあくまで”果”であって、それは自分でコントロールできるものではない。

緒方 孝市. 赤の継承~カープ三連覇の軌跡~ (p.125). 光文社. Kindle 版.

◆◆◆

 

 このようにカープファンは勿論のこと、それ以外の方にもおすすめしたい『赤の継承:カープ三連覇の軌跡』。

 ご興味のある方はぜひご覧ください。

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