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韓国料理#04.スンデ~韓国のソーセージといわれるけれど、ちょっとハードルが高い~

 ドイツのソーセージやスペインのチョリソなど、世界には様々な腸詰料理がありますよね。現地に行かないと食べられないものもありますし、その地の風土や文化も表していて、とてもおもしろいなと思います。

 韓国にもスンデ(순대)という腸詰料理があります。見た目が黒いため、初めて食べる際は少々勇気がいりますが、それでも韓国では老若男女問わず幅広く親しまれている庶民的な食べ物です。

 今回は、この韓国のソーセージともいわれるスンデについてご紹介したいと思います。

スンデ(순대)

お持ち帰りにして家で食べたスンデ。たまに食べると結構おいしい。

 スンデはデンプンから作られた唐麺(당면、日本でいうところの春雨)、香味野菜、もち米、豚または牛の血などを豚の腸に詰めて蒸した料理です。血が入っているため、見た目が黒いのが特徴です。

 味はというと、見た目とは異なり意外にも淡白で、あっさりしています。血や内臓の香りはほとんどしないため、とても食べやすいです。

 食べ方は、香辛料が入った塩やアミエビの塩辛を付けるのが一般的です。そのまま食べる以外にも、鉄板で野菜や麺類と一緒に焼くスンデボックㇺ(순대볶음)や、豚で取ったスープに入れて食べるスンデグック(순대국)も定番メニューです。


◆ソウルで食べる最も一般的なスンデ

屋台で食べたスンデとトッポキとおでん。定番の組み合わせです。スンデを頼むと、レバーなどの内臓も一緒についてくることが多いです。

 これはソウルで食べられる一般的なスンデです。なかには唐麺が入っていて、塩を付けていただきます。

 スンデは、トッポキやおでんと共に、屋台で食べる定番メニューのひとつです。小腹が空いた時や、学生だと学校帰りにおやつ感覚でいただくことが多いです。塩で食べるのも良いですが、トッポキの甘辛いタレともよく合います。

 また、スンデで有名なのは、ソウル南部の新林洞シンリムドン(신림동)にあるスンデタウンです。名前の通り、スンデのお店が集まったエリアで、特に有名なのが、ヤンジ民俗スンデタウン(양지민속순대타운)と元祖民俗スンデタウン(원조민속순대타운)という2つのビルです。建物の中にはスンデのお店が約100店舗も集まっていて、お昼も夜も多くの人でにぎわっています。


◆全羅道地方のピスンデ(피순대)

 スンデで使われる材料は、地域によって異なります。
 なかに詰める具も様々ですが、海がある江原道の束草ソクチョ(속초)では、イカに野菜やもち米を詰めたオジンオスンデ(오징어순대)があります。ここまで来ると、ソーセージというよりはイカ飯に近い気がしますよね。海鮮好きの人間としては、一度は食べてみたいスンデです。

ソウルにある全州料理専門店で食べたピスンデ(피순대)

 地方のスンデで有名なのが、全羅北道の全州で食べられているピスンデ(피순대)です。

 ピ(피)とは、「血」という意味です。写真からも分かる通り、ソウルのスンデよりも入っている血の割合が多く、内臓感(?)がとても強いです。また、使われている腸も分厚く弾力があるため、食べ応えがあります。

 味は比較的まろやかで、アミエビの塩辛や特製タレに付けて食べるため、臭みはありません。そう、美味しいスンデは内臓の匂いがしないのです。


◆血の入っていない白いスンデ

 スンデの黒い見た目や、なかに入っている血が苦手な方には、白いスンデもあります。例えば、京畿道龍仁市の白岩という地域には、野菜をたっぷり使った白岩ベガムスンデ(백암순대)があります。

ソウルのとあるお店でいただいた「野菜ピスンデ(야채피순대)」と「チョンヤン白スンデ(청양백순대)」。塩と甘辛いタレに付けていただきました。

 また、スンデは地域だけでなく、お店ごとでも違った味を楽しむことができます。

 写真は「野菜ピスンデ(야채피순대)」とチョンヤンコチュ(청양고추)といわれる青唐辛子を使った「チョンヤン白スンデ(청양백순대)」です。白いスンデには血が入っていない分、ピスンデよりも食べやすかったです。

 スンデ好きな方であれば、いろんなお店を回って食べ比べをするのも楽しそうですね。


◆◆◆

 韓国に留学する前から、「どうやら、韓国にもハギスに似た食べ物があるらしい」という話は耳にしていました。

 ハギスは、羊の内臓を羊の胃袋に詰めて茹でたスコットランドの伝統料理です。スコットランドに留学してた当時、1,2度口にしたことはありましたが、口には合いませんでした。もともと、レバーなどの内臓系の食べ物が苦手だったことも、理由のひとつだと思います。

 そんなハギスと似ているといわれるスンデ。しかしその黒い見た目から、「ハギスよりもグロイじゃないか」というのが第一印象でした。そんなわけで、好んで食べることはありませんでした。

 しかし、嫌々ながらも実際に食べてみると、意外にも悪くないことが分かります。そして、時間とともに美味しさも分かってきて、ようやく、たまには食べたいなと思う程度にまでなりました。

 ただそれでも、ピスンデに関しては、今でも2,3切れ程度が限界です。美味しいと言えるまでは、ほど遠いですね。

 韓国のソーセージと例えられることが多いスンデですが、外国人からすると、なかなか勇気のいる食べ物だと思います。

 そのため、スンデが苦手なのは(日本人は)、自分だけではないと思っていたのですが、韓国で出会った、または、韓国によく遊びに来る日本の友人たちは皆スンデが大好きで、嫌いという人は1人もいません。ピスンデすら好んでぱくぱく食べています。

 そんなこともあり、私にとってのスンデは、自分は意外にも偏食なのかもしれないーーと、考えさせられた料理でもあります。

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