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韓国扶余の旅#05. 宮南池と薯童謠~韓国版ロミオとジュリエットの伝説が残る百済の池~

 前回記事の続きです。

 定林寺跡の後は宮南池へ行きました。


宮南池(궁남지)

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 宮南池(궁남지)一帯は百済時代の離宮跡として知られています。

 634年に百済王第30代武王によりこの離宮内に造られたのが宮南池です。現存する韓国最古の人口池で、1964年に史跡第135号に指定されました。

 宮南池は扶蘇山城の向かい側に位置し、現在池の周辺には離宮内にあったと思われる井戸といくつかの礎石が残っています。また、池の中には東屋とそれに続く木造の橋が建てられています。

 宮南池は百済の造園技術を知ることができる史跡で、『日本書紀』には宮南池の造園技術が日本に渡り、日本造園の源流になったと伝えています。

(参考:文化コンテンツ振興院『궁남지(宮南池)』より)

 意外にもここでも日本とのつながりがあるようです。


◆東屋の抱龍亭と橋

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 古代中国人は、神仙が住む三神山(蓬莱山・方丈山・瀛洲山)に見立てて庭園の池の中に三つの島を構えて、不老長寿を祈願したといわれています。宮南地にある島と橋はこの三山のうちの方丈仙山を模したもので、このような飾り付けの庭園を神仙庭園と呼びます。

(参考:文化コンテンツ振興院『궁남지(宮南池)』より)

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◆薯童謠(서동요)

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 この宮南池には、幼名が「薯童(서동)」だった百済武王の伝説が残っています。

 百済の泗沘時代(538-660)王宮の南側にある池のほとりに一人の女性が住んでいました。ある日、その女性は宮南池に住んでいた龍の息子を産むことになります(※)。この子が百済王国第30代王の武王です。

 「薯童(ソドン)」という名前は、薯蕷(山芋)で生計を立てていたことに由来します。貧しい生活の中でも愛情たっぷりに育てられた薯童は立派な孝行息子に育ち、親子仲良く暮らしていました。

 ある日、老臣が訪れ王の密約を伝えます。その密約とは、新羅の徐羅伐(ソラボル)に潜入して国政を探ることでした。この命を受けた薯童は山芋を売る商人になり、新羅に潜入して任務を遂行します。

 ある日、新羅第26代王の真平王の娘で、三国一の美女として知られていた善花(ソンファ)に出逢い、二人は恋に落ちてしまいます。国籍も身分も違い、結ばれない運命にありましたが、別れることができない二人はなんとか知恵を絞ります。そして、「薯童謠」という歌を作り、徐羅伐の子どもたちに歌わせて都中に広めました。その歌は「善花姫は毎晩こっそり抜け出して薯童に抱かれて帰っていく」という内容でした。

(※)龍の息子を生んだということはおそらく彼の父親が王か太子なのだろうということになります。

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善化公主主隠
他密只嫁良置古
薯童房乙
夜矣夘乙抱遺去如


선화공주님은
善花公主様(善花姫)は 

남 몰래 짝 맞추어 두고
こっそり抜け出して

서동이를
薯童に

밤이면 안고 간다.
毎晩抱かれて帰っていく。
 この薯童謠が王宮にまで知れ渡ると、新羅の真平王は怒り、善花を宮中から遠く離れた島に追放することを決めました。そこで薯童は善花を百済まで連れて帰り、二人で幸せな日々を過ごしました。愛し合う二人が知恵によって結ばれたという愛の物語です。

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 以上が現地の案内板に書かれていた内容(加筆しています)ですが、この話にはさらに続きがあります。ガイドをしてくれた歴史学者の方が教えてくれました。

 善花が王宮から去る際、母親は1斗の純金を善花に持たせます。百済での生活は決して裕福ではなく、善花は母親からもらった金を切り崩して生計を立てようとしました。すると、それを見た薯童は笑いながら善花に「それは何か」と尋ねます。善花が「これは金で、これさえあれば100年は暮らしていけます」と言うと、薯童は「これなら私が幼いころから山芋を掘っていた土地にたくさん埋まっている」と言いました。善花は驚き、「それは天下の至宝であるから、新羅の徐羅伐宮殿に贈ってはどうでしょう」と言います。

 薯童は快諾すると、小高い丘ほどにもなる大量の金を集めます。そして、龍華山師子寺(現在の弥勒寺址)の知命法師に金を新羅の宮殿まで送る方法を尋ねます。法師は神通力を使って、善花の手紙とともに、一晩にして金を運びました。真平王はその超人的な神業に感心し、薯童と手紙のやり取りをするようになります。その後、新羅の助けで民心を得た薯童は百済の王位に就き、「武王」と名乗ることになりました。

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 この薯童謠は13世紀末に書かれた私撰の史書である『三国遺事』に掲載されていますが、武王が新羅の王女と結婚したという記録はなく、歴史的事実ではないという見方がされています。


◆自然を楽しめる庭園

 ーー宮南池の様子に戻ります。

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 宮南池は思った以上に広く、カモなどの鳥がいたり、魚(鯉?)がたくさん泳いでいたりと、自然豊かな公園でした。

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 私が行ったのは1月の寒い時期だったので植物は枯れて寂しい状態でしたが、夏のシーズンに行くと色とりどりの蓮の花を楽しめるそうです。行くなら、夏ですね。冬は正直寒すぎます。

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 虹だ~🌈


 夏の天気の良い日の様子は以下のサイトでご覧になれます。

 また、薯童謠の伝説をもとにしたドラマ『薯童謠(ソドンヨ)』もあります。ご興味のある方はぜひご覧ください。

 ちなみに、私は観たことありません(笑)


 次回に続きます。

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