瑠 海

22歳、シンガーソングライター。ラブソングになれない想いを書き留めてます。https:…

瑠 海

22歳、シンガーソングライター。ラブソングになれない想いを書き留めてます。https://twitter.com/luca0102m

最近の記事

あの夜の深さは薄れて永遠

つかのまの夢のように思えていたけれど、出会った夜は確かで、過ごした日々も確かで、愛したことも確かなのだと感じてしまうまでには、ほんの5分もかからなかった。 500mlの9%と真夜中の着信はわたしの思考を緩ませる。申し訳ていどに用意された実家の布団。不意に見返してしまう写真は刃物。豆電球の明かりほどの希望。埃かぶるほどに美化された記憶。思い返すと、最後はいつも苛立っていた。 戻らないと決めた千川通りのコンビニ。涙に触れるほど近くて、笑ってしまうほど遠かった。またねと笑顔で嘘

    • 22歳、運命の恋を終えて。

      わたしの世界はまっさらになったというのに、世の中は恐ろしいほど平然と続いている。 すこしくらい悲しい顔して、なんて期待はしてないし、同情も金もいらない。けどできれば、誰か、別れの飲み込みかたを教えてください。 出会った日から、ずっと続いていたラインは、ついに既読で終わりました。 その二文字は、映画館の重々しいカーテンに比べたらずいぶんと質素なもので。浸るには足りない。けれどその程度が相応しいくらいな、ありきたりで埋め合わせた恋が終わりました。 それももう6ヶ月も前のお

      • 雪は溶けたのに、好きは溶けてくれないんだ。

        あのね、こっちは雪が降ったよ。そっちはどう? そんな簡単なことすら言えなくなって、伝えたい瞬間だけが淡々と積もっていくから皮肉だ。 こっちはさ、雪が綺麗だって教えてくれたあなたがいなくなって、雪なんかちっとも綺麗に見えないよ。 ねえ、そっちはどう? ❅ いつのまにかクリスマスの顔つきをしている表参道の通り。街路樹の隙間から雨と雪が混ざって降ってくる。折りたたみ傘の中で縮こまるわたしは、すれ違っていく落ち着いた幸福とほど遠い。 こんなときに、人混みの中から彼を探して

        • 8杯目の失恋珈琲

          あの恋を味に例えるなら、生クリームと苺がたっぷりはいったクレープがぴったりだ。 ひとくちで広がる柔らかい甘さに、時折感じる酸っぱさが相まって、他のすべてがどうでも良くなってしまう程の幸福感を感じられる。 そんなクレープのように、甘くて、甘くて、とろけるような恋だった。 だなんて、今になっても言い張るわたしは、やっぱりどこか変になってしまったのだろうか。 ☕︎ 大学のコンパで出会ったひとつ上の彼とは、文字通り甘すぎる夜からはじまって、わたしの大学生活をがらりと変えた。

        あの夜の深さは薄れて永遠

          ふたりだけの未来は夢で見るくらいでいいから どうか月が沈んでも消えない香りひとつ わたしにください

          ポケットの中に入っている、一本の煙草。これは、わたしが彼から初めて奪うことができたものかもしれない。 とろんと落ちかけた瞼を持ち上げて最終電車から降りると、すっかりと秋の風が吹いてきた。涼しいというより、痛いというほうがしっくりとくる冷たさだ。 わたしのまわりを包んでいた眠気と酔いは、電車の扉が閉まるよりも先に線路を下っていく。 コートを着てくればよかったな。たしか夜は冷え込むってニュースで言っていたと、今更ながらに思い出す。 ニットの編み目を埋めるように体を縮こませ

          ふたりだけの未来は夢で見るくらいでいいから どうか月が沈んでも消えない香りひとつ わたしにください

          『あの夏の君へ』

          夏って、ほんとうは人生に一度しかないんじゃないかと、そう思わざるを得ないくらい皮膚に色濃く残っている夏がある。 『花火しようよ』 携帯電話が受け取った短いメールで、僕は彼女の家まで車を走らせていた。 18時を過ぎてもなおしぶとく残っている日差しがフロントガラスに張り付いている。眉間にくっきりとした縦皺ができるほど目を細めながら、ラジオから流れ始めたフジファブリックの「若者のすべて」に耳を傾けた。何年経っても思いだしてしまうような記憶がこれといってない僕には、志村正彦の心

          『あの夏の君へ』

          変わらないはずのものも いつかは変わり果てるのなら 綺麗なところを心に仕舞う

          もうずっと悲しいような気がする。ずっと、ずうっと。そのくせ、たったの一晩しか明けていない。その事実はわたしをさらに深いところまで突き落とすにじゅうぶんだった。 なんだか、晴れている空なのに水色に見えないな。34℃の気温はあたたかくもないし。泣いていた私は枯れていて、何もしてないのに思い出が押し寄せてくるし、ふたり過ごした部屋はひとりぼっちだ。 煌びやかな夏の朝に不釣り合いなわたしは、ベッドに寝そべったままひっそりと呼吸をしていた。酸素を肺におくっては鉛色の空気を吐き出す。

          変わらないはずのものも いつかは変わり果てるのなら 綺麗なところを心に仕舞う

          線香花火くらいの約束があれば あの夏はまだ続いてくれるのかな

          渋谷駅、24時と10分。 この街の夜は嘘で騒がしい。 泣き声と鳴き声。叫びに似た笑いたち。並べた肩から垣間見える下心。終電を知らせるベルと駅から遠ざかっていく傘。足音。雨音。 なにが本当でなにか嘘なのか。だれの心が笑っていてだれの心が泣いているのか。わからない。こんなにもたくさんの人がいるのに、だれひとり此処にはいないような。本当のものなんて、本当は何ひとつもないような。そんな街。 今日の私は、この場所が似合うひとりだった。 「電話でるの、やめてよ」 言った。呟く

          線香花火くらいの約束があれば あの夏はまだ続いてくれるのかな

          愛のぶんだけ泣く声が

          「なんで私じゃだめなの?」 最後の言葉が聞こえてから、かれこれ30分ほど経った。 彼女は泣いている。大きな瞳から矢継ぎ早に涙を流して、僕のティーシャツを濡らしている。今僕ができることは、細々と震えている体を包むことだけだ。彼女は時折しゃくりあげながらも、泣くことをやめない。 「そんなに泣いたら頭痛くなるよ」とか「目腫れるよ」とか、何かしら涙を止めるための声をかけようか迷ったけれど、きっと火に油を注ぐだけなのでやめておいた。以前「優しくないのに優しくしないで」と怒鳴られた

          愛のぶんだけ泣く声が

          わたしを殺すことはわたしを救うことだったりもする

          誰かの文章で、どうしようもなく恥ずかしくなることがある。 首元まですっぽり覆って、見たり言ったりすることから守ってくれるような、私だけの隠れ穴があるなら是非とも入りたいと思うことがある。 noteをちゃんと使い始めてから1ヶ月が経って思うのは、感受性に貪欲な人の多いこと。気になる人の声をこっそりと盗み聞きしていると、素通りしがちな感情の揺れから思考を広げていたり、思い切って旅に出て世界を知っていたり、恋愛や人生とは何なのか考えさせるような物語を綴っていたり、自分だけの新し

          わたしを殺すことはわたしを救うことだったりもする

          セックスで恋人の夢をみる

          鎖骨がひんやりと冷たい。 24℃に設定したエアコンで、布団からはみ出た肌が痛んだ。すやすやと聞こえてくる寝息を恨めしく思っていると、23時を3分過ぎたばかりの街から話し声が聞こえてきて、まだ誰かの今日が続いていることに安堵する。だんだん電車が近づいてくるのを片耳に、大きな音で起こして欲しいと願ったけれど、何事もなく通り過ぎてしまった。 8畳の寝室に置いてきぼりにされた私は、じんじんと熱い瞼を閉じるのを諦める。 ぶかぶかのTシャツをベッドの下に脱ぎ捨てて、隣で眠っている男

          セックスで恋人の夢をみる

          雨を口実にしても叶わないから、雨上がりを口実にして上をむく

          泣いているような雨だった。 ぽつりぽつりと静かに涙を落としていたと思ったら、どっと溢れて激しく地面を叩きつけたり、ひどくなると大声で叫ぶように荒れていた。 私は水たまりにできては消える波紋をみながら、空が泣き止むのをじっと待っていた。 *** 会えば会うほど、好きになれば好きになるほど、行き着く先のない階段を下っていくような。いつまで経っても、光の当たることがない恋だった。 嗅いだことのない甘い香り、電話越しに聞こえる甲高い声、身体にまとった汚らしい痕。彼はいつだっ

          雨を口実にしても叶わないから、雨上がりを口実にして上をむく

          「愛がなんだ」と中指立てるくらいの愛をしたい

          もう、勘弁してくれ。 何度も目を背けたくなった。何度も心臓の奥から悲鳴が聞こえてきた。ぐしゃぐしゃになるまで掻き回した挙げ句、ぽいっと放り捨てられたような気分だ。 いくつもの言葉が喉元から溢れ出しそうになったが、声に出したら涙も止まらなくなる気がして、ぐっと飲み込んだ。 少し前になるが、テアトル新宿で『愛がなんだ』を見た。 がっかりだ、正直。私は「愛はこうだ」という結論を期待していたのであって「愛ってなんだ?」という無責任なクエスチョンはいらない。 ソレが何なのか分

          「愛がなんだ」と中指立てるくらいの愛をしたい

          「元恋人」は一生忘れらんなくていい

          夏はいつも身勝手にはじまる。 5月半ばにぐわっと上がった気温で、世間は一気に夏モードだ。6月だというのに、気温は30度に近い。半袖姿のお姉さんが「今週末から梅雨がはじまります」とテレビの中で言っていたけれど、じめじめした暑さなんて最悪すぎて笑えない。 今年の春はずいぶんと短かったような気がする。冬の寒さが和らいで日差しが心地よいあの季節が、私は一番好きなのだけれど。 クーラーの効いた室内から見えるのは、完全に緑一色で落ち着いた町並みと、仕方なく露出された素肌のたるみ。一

          「元恋人」は一生忘れらんなくていい

          青空のしたで笑えなくても、きみが好きだよ

          「でも私さ、そんなきみが好きなんだよね」 窓の外が灰色に明るくなりはじめた午前4時半。シングルベットにふたり、寝転がっていた。 つい今まで飲み交わしていたお酒のせいか、一週間分の仕事の疲労のせいか、彼は今にも眠りの世界に落ちそうだ。その顔がなんとも情けなく愛しくて、思わず想いを告げていた。 「はじめて会ったときにね、笑った顔がまぶしいなって思ったの。覚えてる?もう1年も前。」 ほとんど素面に戻っていたから顔は見れない。天井を見つめながら、ぽつぽつと言葉を落とした。

          青空のしたで笑えなくても、きみが好きだよ

          手を伸ばしているだけじゃ、いつまでたっても掴めないから。

          さいしょは、単純な憧れだった。 大学2年生のころ、#広告空論 のハッシュタグで気になる広告について発信している阿部広太郎さんを見つけた。 気になって【待っていても、はじまらない。】という著書を読んだときは、ページをめくるたび指が汗ばむ感覚があった。憧れと興味に背中を押されて、コピーライター養成講座の基礎コースに通ってみると、「向いているのかはわからないけれど、これが私のやりたいことだ」と感じた。 あのとき、阿部さんのTwitterアカウントを見つけていなかったら、今もや

          手を伸ばしているだけじゃ、いつまでたっても掴めないから。