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書籍の電子化=「自炊」のやり方

 ロースクール生活中に「大量のテキストを持ち歩くのが面倒だな」と感じた筆者は、テキストを電子化する「自炊」によって快適な勉強環境を手に入れました。今回のnoteでは、実際に30冊以上のテキストを自炊したロースクール修了生の筆者が、読者の方々にも自炊をお勧めしたいという思いから、自炊の方法を紹介します。(ライター:棚橋/The Law School Timesディレクター)

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「自炊」とは? 

「自炊」=書籍の電子化

 紙媒体の書籍を電子化する行為(具体的には書籍の裁断をし、スキャンをする行為)は一般に「自炊」と呼ばれています。

 市販の基本書や予備校のテキストは大抵が紙媒体のものですが、司法試験勉強の際には、iPadなどのタブレットやPCで教材を開きたい場面もあるでしょう。そこで、紙のテキストをこれらの機器で読み込むために自炊をします。

なぜ自炊するのか

 司法試験勉強のためにテキストを自炊するメリットは「iPadで勉強ができる」ことに尽きると考えています!iPadを使った勉強の良いところは、①テキストの持ち運び・整理がしやすい、②自分の持つ情報を一元化したオリジナルテキストが作りやすい、③スマートフォンと同期して勉強ができる、などです。

 司法試験やロースクールの勉強における、iPad活用法を詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください!

自炊のデメリット

デメリット①  一度裁断したテキストを書籍の状態に戻すことはできない
 スキャン時にテキストを裁断するため、裁断済のものを本として読むことはできなくなります。筆者の友人は「通読には紙の方が適している」と言って、自炊用と通読用で基本書を2冊買っていました。

デメリット② 費用がかかる・自炊用の器具が場所をとる
 自炊には裁断機やスキャナーが必要ですが、なかなか高いです。テキストをストレスなく裁断・スキャンするためには、それぞれ2万円〜5万円程度の裁断機・スキャナーを購入する必要があります。自分で裁断・スキャンを行いたい場合には、最低でも5万円程度の初期費用は必要と考えておくべきでしょう。

 さらに、裁断機・スキャナーは思ったよりも場所を取ります。裁断機は10kgを超す重量のものが多く、床に置くことになります。一人暮らしなどで部屋に十分なスペースがない方は、部屋に機器を置けるかを考えてから購入しましょう。

デメリット③ 作業が面倒(特に裁断)
 自炊の作業自体もなかなかに面倒です。きれいに裁断するには慣れが必要で、慣れるまでは1冊1時間程度と時間もかかります。

 ただし、後述のように裁断済みの書籍を購入したり、裁断を業者に依頼することで裁断の手間を省略することもできます。

自炊のやり方紹介

 自炊の作業は、大きく分けて裁断・スキャンという2つの工程に分かれます。裁断・スキャンをどの程度自分で行うのかによって、以下の4つの方法に分けられます。

1 . 自分で裁断・スキャンの両方を行う
2. 裁断済の書籍を購入し、それをスキャンする方法
3. 裁断を業者に頼み、自分でスキャンする方法
4. 裁断・スキャンの両方を業者に頼む方法

それぞれについて、具体的なやり方をみていきましょう。

1. 自分で裁断・スキャンの両方を行う方法

①裁断機・スキャナーを購入する
 裁断機はものによって、一度に裁断できる枚数が違います。小さいものだと10枚ずつしか裁断できないこともあり、テキストを切り分けるのが面倒です。一度に100枚は裁断できる機械の購入をお勧めします。

 スキャナーに関しては、大量のページをスキャンするため自動原稿送り装置(原稿をセットすると自動で原稿を1枚ずつスキャンしてくれる装置)付きのものを買うと便利です。また、OCR(光学的文字認識)機能の有無も重要です。OCR処理をすると、スキャンしたデータ内の文字や数字を、テキストデータとして読み込むことができ、iPadで勉強する際にキーワード検索をすることができます。膨大な情報の中から知りたい情報に瞬時にアクセスできる検索機能は、iPadで勉強する大きなメリットの一つです。可能であればOCR機能が付いているスキャナーを購入しましょう。

②テキストを用意する

③裁断する
 テキストにハードカバーが付いている場合は、まず取り外しましょう。使用する裁断機の裁断可能枚数を確認した上で、その枚数以下になるように、テキストをカッターで切り分けてください。その後、裁断機で1枚ずつバラバラになるようにきれいに裁断してください。筆者は当初この作業に1冊15分ほど掛かっていましたが、慣れると5分でこなせるようになりました。

④スキャンする
 裁断済の紙をスキャナーにセットし、スキャンしていきます。この際、一気に全てをスキャンしきるのではなく、最初に数枚スキャンして裁断の不備がないかを確認するのがお勧めです。裁断が荒いとスキャン後の文書が斜めになり、読みづらいことがあります。その際は再度裁断してください。

⑤データチェック
 不足なくページが読み込めているか、OCR処理ができているかなど、最後にPCでデータを確認します。問題がなければPCに保存して、自炊完了です。PCに保存したデータをiPadと共有し、勉強に使いましょう!

2. 裁断済の書籍を購入し、それをスキャンする方法

 自分で裁断しなくても、裁断済みの書籍を購入してスキャンする方法もあります。有名な基本書であれば、メルカリなどのフリマアプリで、裁断済みのものが販売されている可能性が高いです。これなら裁断機もいらず、手間もかかりません。

 もっとも、自分が使いたい・使っているテキストが購入できるかは分かりません。使いたいテキストが手に入ったとしても、ものによっては裁断が荒くきれいにスキャンできない場合もあります。

3. 裁断を業者に頼み、自分でスキャンする方法

 自分で裁断するのが面倒という方は、裁断業者に依頼するという手もありますが、自分で裁断する場合と比べてお金はかかります。数冊単位で依頼する場合には、送料や手数料などで高くなりがちです。30冊以上など、大量に裁断を依頼する場合には1冊100円程度のコストで裁断できる業者もあるため、一度に大量に裁断をする方にはお勧めできる方法です。

4. 裁断・スキャンの両方を業者に頼む方法

 いわゆる「自炊代行」というサービスを利用する方法です。詳しくは次回note「書籍の電子化=『自炊』と著作権問題」で解説しますが、この方法は違法の疑いが強いため、お勧めできません。

まとめ

  • 書籍はメルカリなどで裁断済のものを購入するのが楽だが、購入できない場合には自分で裁断するか、裁断業者に頼む必要がある

  • 自炊代行業者を適法に利用できるケースを除き、スキャンは自分でする必要があるため、スキャナーの購入はほぼ必須

 自炊をすれば、タブレット1つで勉強が完結します。重たいテキストを毎日持ち運ぶ苦労や、バッグの中のテキストを入れ替える手間から、皆さんが解放されることを願っています。良い自炊ライフを!

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【修正】2023年11月22日午前0時30分 見出しの一部と、The Law School Timesの説明文を修正しました。
【追記】2023年11月24日午後6時30分 公開された記事のリンクを追加しました。

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