ニュースつぶやき:「カカオ豆高騰でチョコレート値上がり」
世界的なカカオ豆の不作でチョコレートが値上がりしている話。
先月、ニューヨーク市場で一時、1トンあたり1万ドルを超えたカカオ豆。これは同じ重量の銅の先物価格を上回っているとのこと。
その原因は、主要な産地での記録的な不作だそうですわ。今回のニュースで初めて知ったのですけども、チョコレートの原料であるカカオ豆の主な産地の上位2国は、コートジボワールとガーナ。特筆すべきはコートジボワールで、
・コートジボワール……約220万トン
・ガーナ……約80万トン
・インドネシア……約74万トン
・ナイジェリア……約34万トン
・エクアドル……約33万トン
と、群を抜いて生産量が高いことがわかります。
(※データは外務省ウェブサイトより)
今回は、生産量が1位と2位のコートジボワールとガーナで天候不順が続いており、それが生産量減少の主な原因になっているようですわ。地図を見ましてもコートジボワールとガーナは隣りあっておりますので、同時に影響を受けていることもうなずけます。
しかし、ここで疑問に思ったことが2つ。なぜ、コートジボワールの生産量が突出して高いのか。そしてなぜ、「コートジボワール産」と謳ったチョコレートを見かけないのか。
私たちの身近では、ロッテの「ガーナチョコレート」をはじめ、産地を前面に押し出した商品はよく見かけます。しかし、コートジボワール産を謳ったチョコレートは──私が知らないだけかもしれませんけど──見たことがないのです。これは、なぜなのか。
結論から申し上げますと、生産量が多いのも、日本であまりコートジボワールチョコレートの名を聞かないのも、隣国で同じくカカオ生産国、生産量第2位のガーナと比べ、政府の管理が行き届いているか否かがその理由であると思われます。
コートジボワールのカカオ生産農家はほとんどが零細農家で、一元管理する機関が無いため、大量に生産できるものの、その品質にはかなりのばらつきが出てしまうそう。各農家が生産したものを集めて売るだけといったイメージでしょうか。ゆえに、大量生産品のチョコレートのベースに使うならともかく、ショコラティエが使うようなチョコレートはもちろん、産地によって風味を食べ比べる系の製品にも、使えるわけがないのです。
ちなみに、日本が輸入しているカカオの生産国第1位は、ガーナ。ガーナだけで日本が輸入しているカカオ豆の5分の4を占め、次いでエクアドル、ベネズエラが続きます。コートジボワールは4位につけておりますけども、それ単体での商品を見かけないのは、その生産管理体制にあるとみてよいでしょう。
※日本チョコレート・ココア協会ウェブサイト、2020年の統計より
コートジボワールに限ったことではなく、アフリカの零細農家すべてに言えるのが、不当な対価による貧困と、児童労働の横行による教育機会の逸失。この原因となっているのは、カカオ流通に関わる業者のマージン(利ざや)による中抜きが後を絶たないためで、チョコレートメーカーが支払う金額が増えても、生産者には届かない形になっているのがいちばんの問題でしょう。
これは日本の下請け・孫請けの関係などにもあてはまります。実際に労働する階級には微々たるお金しか入らないことが、昨今の格差構造の根幹をなしていると言ってよいと思いますわ。
真のフェアトレードとは。
労働の対価とは、誰から誰に支払われるのが理想なのか。
働く意思、働く能力があっても、それを活かせる場を自力で見つけられる人はひとにぎりでしょう。しかし、仲介する業者をはさめばはさむほど、実入りは少なくなる。新たな発注と受注の仕組みとは。ネット社会に置いていかれることのない仕組みとは。そこに介入すべき政府の役割とは。
うーん、チョコレートの話題なのに、なかなかビターな話になってしまいましたわね。カカオ分90%くらい?
今夜はちょっと贅沢して、世界各地のチョコレートを少しずつ買って、現地の栽培風景を思い浮かべながら、食べ比べするといたしましょうか。