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恐怖の臭いと謎【骨灰】

読めば読むほど、ホラーです。
よく夜な夜な読んでから、
眠れたものだと感心しました。


・こちらまで臭いがする

「骨の焼くような臭い」という文章を見るたびに
読んでる方まで臭いそうでした。

主人公の松永光弘は、シマオカ株式会社のディベロッパーの※IR部所属です。
SNSの投稿の調査のために、現場に向かうところから話が始まります。

※IR…インベスター・リレーションズの略。
企業が投資家に向けて経営状況や財務状況、業績動向に関する情報を発信する活動をいう。

投資家向けの部署なので、
株主総会の資料の話が出てきます。

現場の地下に向かいますが、通常湿気が多いはずなのに、なぜか猛烈に乾燥しています。
まるで骨の焼くような臭いと表現。

地下で鎖に繋がれてた男性を発見。
彼を逃がしてから、光弘の周辺で異変が起こります。

夢の中では、
娘の咲恵が大量に水を欲しがった末に燃えたり、
※父親の亡霊に、「御饌使になれ」と言われたりするシーンが出てきます。

※光弘の父親は既に他界。しかし、光弘は会話ができる状態だった。そのせいか周りに気味悪がられる。
「頑張れ」「大事な仕事をしているんだ」と光弘を励ます。

現実にも、無人なのにインターホンが鳴る、
家電のボヤ騒ぎ、壁がシミだらけ、
灰が家の中にまで進入しました。

想像しただけで恐怖です。

このような出来事が起こる時は必ず
「骨の焼くような臭いがする」とあります。

妊娠中の妻は、この臭いで体調不良になり、
何度か入院してます。
臭いに敏感な時期なので、過酷さが伝わってきました。

・火事が多発してた。

歴史的に、東京・江戸は250年間で
大火災が100回以上起こっています。
2年に1回のペースです。

火災だけでなく、関東大震災や東京大空襲でも
多くの人が焼け死んだ過去があります。

関東の土は酸性で骨が溶けます。
そのため、残っていません。

光弘が玉井工務店に訪問して、
社長から説明を受けました。

私も、このシーンを読むまで知りませんでした。
よくよく考えたら、地震が起こったら
火災も起こるのでこの説明に納得しました。

知っているか? おれたちみんな、死者の上で生活しているんだ。

骨灰 p395

光弘が、家族に言おうとしてやめたセリフです。

東京だけでなく、他の地域でも
死者の上で生活していると想像しました。

・地鎮祭の意味

個人の家を建てるときだけでなく、
商業ビルなど大きな建物を建てるときも
地鎮祭が行われるを見ました。

「一体何ために?」と疑問でした。

骨灰の説明を読んで納得。
彼らの魂を鎮めないと、光弘みたいに祟られるのではと考えてしまいました。

舞台は東京だけど、全国各地であり得る話と実感。

・感想

「ホラーの効用は一度恐怖を経験することで備えておけることだ」

アメリカの有名な小説家である
スティーブン・キングの言葉です。
ホラーは正直苦手ですが、「なるほど」と納得しました。

今回の直木賞の候補作で、
『踏切の幽霊』と並んでホラー小説でした。

「2作もホラー小説が候補作にあるけど、夏だから?」と思ったくらいです。

つかつさんの動画にもありましたが、
今回の作品のほうが怖かったです。

現代の話なので、
余計リアルで恐怖を感じました。
映画やドラマなど映像化に向いてそうです。

以上、ちえでした。
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