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元の生活はいつの話?【荒れ地の家族】

「大切な人に気持ちを伝えられていない」
「うまくいきそうな時に足下からひっくり返される」

登場人物の様子を見て、そう感じました。

・コミュニケーションが成り立ってない。

主人公坂井祐治についてこう感じました。

最初の妻の晴海に対しても、
次の妻の星知加子に対しても「上手くコミュニケーションがとれてない」と感じました。

晴海については、近所の老婆の通院に付き合ってる様子を見て、勝手に断りを入れました。
晴海は自分の意志で付き合ってるのに、
「無理矢理させられてる」と決めつけました。

職場への伝言も一切拒否されてる
星知加子については、
「一緒に過ごす時間がほしい」という気持ちが、
祐治に届かなかったようです。
祐治は、「自分が一生懸命働いたら、家族は幸せになれる」と思っているかのようです。

お互いの想いが伝わってないと感じました。

・元の生活とは

元の生活に戻りたいと人が言う時の「元」とはいつの時点か、と祐治は思う。

荒地の家族 p32

「言われてみれば…」と気づかされました。

戦争や紛争で故郷を追われた人、
地震、豪雨など自然災害に遭った人、
原発事故で故郷に帰れなくなった人…。
共通してるのは、元の生活と今の生活が違うことてす。

その元の生活も、同じ人でも
いつの時点によって全く違うものになると
気づかされました。

・感想

芥川賞受賞作品です。読後感が重たいです。
作品自体も、重厚な印象を受けました。

著者は仙台在住。
「震災の風化にささやかな抵抗」と
インタビューで言ってました。
その言葉通り、「忘れられたくない」と
しがみつかれてるかのように感じました。

震災後から10年以上経った今も、
彼らの生活に影を落としているのを感じました。
震災で直接家族を失ったわけでもないのに、
虚無感がありました。

以上、ちえでした。
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