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「私の体は私だけのもの?」 2人で1人の女性が投げかけた問いとは【サンショウウオの四十九日】朝比奈秋著

結合双生児と聞いて思い浮かんだのは、
ベトちゃんとドクちゃんです。
当時テレビを見て、
下半身がつながっている姿が強烈でした。

そのイメージを持ってましたが、
読み進めるにつれて「あれ?これは…?」と
混乱しました。


・臓器を共有?

読み進めるにつれて、2人の人間が1つの臓器を
それぞれ共有しているイメージがわきました。

面白いことに左半分が姉の杏。右半身が妹の瞬。
それぞれ違う人間でした
その状況を理解するのにしばらくかかりました。

見た目は1人に見えるので、
結合双生児には見えません。

・突然変わる主語

不思議だったのが、
2人とも同じ時間に寝ているわけではないことです。

「私が寝ている間に手紙を書いていたようだ」と
自分の体なのに何をしていたのか
わからない時間が存在していました。

臓器は共有しているのに、意識はそれぞれ固有のものを持っているかのように見えました。

・自分だけの体を持っている人はいない

※p88より引用。

「この肺(などの臓器)は誰のものですか?」

この問いに対して、
「そんなの自分のものに決まってるじゃない」と
読む前は思っていました。

しかし読み終わってからは、
自分の体を2人の人間が共有してるのは
どんな感じなんだろうかと
不思議に思うようになりました。

自分の母親がパート先の客の言葉が原因で
胃潰瘍になったり、
友人が彼氏の言葉に耳を真っ赤にしたりすることを
例にして、主張します。

確かに、感情の動きは
自分自身の中から起こることよりも、
他者からの影響で起こることが多いです。

他人に全く影響受けない人はいません。
そう考えると、「自分だけの体を持ってる人はいない」と主人公たちは言います。

・感想

以前、芥川賞を受賞した
『ハンチバック』を思い出させます。

この作品もパンチか効いていると感じました。

「それって常識?」と思うような問いを
剛速球で投げ込んでくるような作品でした。

今回芥川賞受賞しましたが、納得の結果です。
朝比奈秋さんの作品は今回初めて読みました。

多くの読書アカウントの方たちが「いいよ!」と
勧めていたので気になっていました。
著者の他の作品も読んでみたいです。

以上、ちえでした。
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