キャリアコンサルティングが必要となった背景とは
かつては、学校から職業への移行を支援する「職業指導」や「進路指導」という概念しかなかった日本において、人の職業生活さらには家庭生活も含めたキャリアコンサルティングが必要になったのはなぜでしょうか?
それには、いくつもの社会的背景が存在しますので、ここではそれらをコンパクトに説明しておきます。
1.経済環境の変化
2.社会環境の変化
3.組織環境の変化
4.雇用環境の変化
5.まとめ
1.経済環境の変化
一つ目に、以下の3つのキーワードによる経済環境が変化してきた背景があります。
「サービス経済化」
「ペティクラークの法則」と言われる、経済発展に伴い、経済活動の比重が第一次産業から第二次産業、第三次産業へと移行するという法則。
「経済のグローバル化」
国際取引など地球規模の市場展開。
「情報化」
インターネットの普及やITの急速な革新。
2.社会環境の変化
二つ目に、以下のような社会環境の多様な変化が背景にあります。
少子高齢化により、労働力人口は減少し、社会基盤そのものに大きな影響を及ぼしています。
女性や高齢者、障害者、外国人などの様々な属性の人の能力を発揮しうる社会への変化が求められていると言えます。
貴重な労働力として女性の就業率が上昇してきましたが、現状は、年齢階級別の女性労働力率を見ると女性の未婚化、晩婚化、晩産化傾向が窺え、女性の就業形態は、男性と比べて正社員比率が低く、格差が存在します。女性の就業においては、ジェンダー視点でのキャリア形成について支援する必要性が発生してきました。
さらに、超高齢社会を背景に、定年制度の変更などが義務付けられ、高齢者に対する待遇の変化が発生し、政策と企業の対応、高齢者の心理などに不具合が生まれることで、高齢者の就業においては、待遇や賃金の問題など、働く上でのサポートが必要なケースが発生してきました。
そして、健康寿命が世界一の長寿社会を迎えている日本では、「人生100年時代」と言われ、長い人生を通して家族を支えて生活していく上で、キャリア理論も変化してきています。
また、終身雇用制の崩壊、成果主義賃金、就職氷河期などのキーワードで表される就業者をめぐるさまざまな格差問題も、キャリアについて考えることを支援する役割が求められている背景と言えます。
3.組織環境の変化
そして、三つ目に、組織の環境が変化したことが挙げられます。
1980年代以降の規制緩和を背景に、企業は「選択と集中」を実施し、戦略的な経営を行うようになってきました。その中で、雇用においては、少子高齢化も背景に、外国人、女性、高齢者、障害者や非正規従業員など多様な従業員に対して、それぞれの価値観を認め合い、配慮することが求められています。しかしながら、まだまだダイバーシティ(多様性)が適切に実施されているとは言い難い現状があり、組織と従業員双方対する支援の役割が求められてきています。
4.雇用環境の変化
以上に述べた、社会と組織の環境変化は、総体的に雇用環境が変化したと捉えられます。
産業構造が変化し、サービス業をはじめとする第三次産業の比重が高まってくるにつれ離入職も多い現状と、「終身雇用」「年功序列」「企業別労働組合」の三種の神器が崩壊し雇用構造が変化したことで、現代は、1つの企業内で通用する能力から企業を超えても通用する能力「エンプロイアビリティ」が問われるようになってきたと言われています。
企業においては、雇用形態や労働時間制度も多様化、弾力化し、労働者個人にとっては、働くことに対する意識や職業観も変化しており、これらを認識した上で、それぞれに対するキャリア支援のあり方が求められてきたと言えます。
5.まとめ
このように、経済環境、社会環境、組織環境、雇用環境が変化したことで、キャリアコンサルティングが自然発生的に必要となってきたということです。
次回は、「キャリア」の考え方についてお伝えする予定です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?