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ショッキングピンクのおばさん

また、バイトに落ちた。

3月ごろからの就活は心が痛いもので
スーツを着た偉い人たちは並べられた学生たちの中から一番甘くて新鮮でおいしいものを選ぶのだ。

就活に専念するためにアルバイトを辞めていたが貯金が底をつき始めたので新しいバイト先を探すことにした。
就活のトラウマか、面接や履歴書という言葉に鳥肌が立つ。

何とか選んだバイト先に履歴書を持ち面接に訪れた。

面接をしてくれた人は温かった。
就活の偉いスーツの人とは違って私の良いところを探そうとしてくれた。
ただのバイトだから大したお仕事を任すつもりはないと思うけれど
大学で学んでいることや趣味についてたくさん質問し私に興味を持ってくれた。変わった研究をしているからぜひ雇いたいと言ってくれた。


結果を出すには2週間かかるといわれたが2週間と6日が経っても連絡がない。仕方なく自分から電話をすると、今回は不採用で、と。連絡来ない時点で分かっていたけれど、もうその言葉を聞きたくなかった。2週間の間に私の悪口でも流した人がいるのか。

まだバイト探しを続けなくてはいけない。





そんな下降中のジェットコースター気分で今週の食料を買いに自転車でスーパーに行った。安い野菜と納豆と氷のアイスを買う。159円のアイスと108円のアイスで悩んだが108円のアイスを選んだ。

スーパーを出て自転車のかごに荷物を押し込み自転車にまたがる。

スーパーの目の前にある丁字路で信号を待っているとショッキングピンクのカーディガンを羽織ったおばさんが背後から声をかけてきた。

急に声をかけられた驚きから思考が停止し
なんて声をかけられたのか、全く聞こえていなかった。
しかし信号が変わるまでの少しの間、
目の前の道路で行われている工事がありがたい、という話や
毎日暑いことを話した。

文脈はよくわからなったが「あなたはまだ若いんだから、頑張って」
といわれた。

おばさんとの会話は8割方、キャッチボールしていなくて
よくわからなかったが、信号が変わらないでほしいと思った。

弱った心には誰の言葉も効くのかもしれないが、
どんな親密な関係の人の言葉よりもおばさんの言葉は本物の言葉だった。

偽る必要のない人と久しぶりに話した気がする。おばさんもお元気で。



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