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作家 長月達平の「#蓮ノ空感想文」-第13〜16話編-

『作家 長月 達平の「#蓮ノ空感想文」』とは?
ライトノベル作家である長月達平 氏が、『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』(蓮ノ空)の活動やスクールアイドル応援アプリ「Link!Like!ラブライブ!」(リンクラ)についてアツく語る、『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』公式noteと長月達平 氏との投稿企画です。複数回にわたりお届けする企画となっており、今回はその第5回目の感想文となります。どうぞお見逃しなく!スキもぜひお願いします!

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■前書き

 長く続けてきた『Link!Like!ラブライブ!』(以下、リンクラ)の感想文も、今回の内容でいったんの結びとなる。とはいえ、前回で蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブは完成し、あとは大目標である『ラブライブ!』への出場を残すのみ。
 なのでまさしく、その『ラブライブ!』への出場を巡る日々を描いた第13話から第16話までの物語を改めて振り返らせていただきたい。


■第13話『追いついたよ』

『どうして、ですか。そうですね••••••信じているから、でしょうか。約束したこととか、一緒に練習した時間とか、あげるときりがないですけど』

 第13話で描かれるのは、蓮ノ空女学院で開かれるオープンキャンパスを巡り、スクールアイドルクラブが奮闘する物語だ。このお話では夕霧綴理が主人公として、過去に部活を辞めてしまった沙知先輩との確執、そして彼女との対話が行われる。
 元々、綴理はかなりのマイペースで、入学したての頃からさやかが日常の面倒を見ているが、彼女と出会っていなかった間はどうやって生きてこられたのか謎なぐらいのキャラだ。おそらくは梢がほとんど面倒を見ていたと思われるが、第8話で解消されるまでの二人の拗れた関係を考えると、なかなかハラハラする時間だったと思わざるを得ない。
 さて、このお話はそんな綴理がさやかの手から独り立ちする話――とすると、先輩と後輩の関係的に頭がわやくちゃになるが、ざっくり言うとそういうお話だ。
 もちろん、その背景には第12話の経験を踏まえ、より前向きに成長したさやかの様子に置いていかれまいと、そう綴理が奮起したということがある。
 来たるオープンキャンパスの実行委員を引き受け、スクールアイドルクラブとしての活動もある中、忙しくする綴理にさやかは手伝いを申し出るが、自分の成長を彼女に証明したい綴理としては、その手を素直に取ることが躊躇われる。

 と、差し出した手を拒まれ、普通の流れであればそこから互いに大切に想い合っているはずの二人の関係が拗れ――という話になりそうなものだが、そこは我らが村野さやかさんは一味違った。
 綴理との関係が拗れないかと心配された際に、彼女は上記の台詞を口にして、自分が綴理の気持ちを疑うことなどありえないと、そう断言して安心させてくれる。
 このときのさやかの答えは、日々堅実に努力を重ね、ゆっくりと踏みしめるように着実に自分を成長させていく彼女らしい考え方で、自分はとても好きだ。
 さやかは綴理を根拠もなく信じているわけではなく、出会ってから今日までの時間、それこそ『活動記録』で描かれてきた衝突と対話、一緒にやり遂げたライブや、きっと自分たち『蓮ノ空のこと好き好きクラブのみなさん』の目の届かないところでも積み重ねられてきたものを理由に、綴理の気持ちを疑わないと言い切ってくれる。
 もちろん、根拠もなく、直感やインスピレーションを理由に相手を信じると言い切れる関係も自分は好きだ。だが、これまで見てきた村野さやかという子がそうした直感的なものを信じるなら、それは堅実を積み立てたその先なのだ。
 そう感じさせてくれるこの台詞が、自分はとても好きだった。

『••••••バカだな、あたしは。そんな機械みたいに思われていたのか』

 さて、第13話の中でもう一個、好きな台詞を上げさせてもらうと自分はこれだ。
 沙知先輩という人物が本格的にスクールアイドルクラブとの関わりを表面化させてくるのは、前回の第12話からになる。それまでにも存在は示唆され、ちょくちょく顔を出してくるキャラクターとして、彼女が梢と綴理、慈の世代をスクールアイドルクラブに勧誘した大先輩で、すでにいないスクールアイドルであると描かれてきた。

 彼女が辞めた経緯もあり、綴理や慈とはわだかまりがある。もっとも、慈は問題を先送りにするタイプではなく、最初に嫌だと思った時点で沙知先輩とぶつかり、ちゃんと言い合うことで気持ちを晴らしてしまっていたが、綴理はそうではなかった。
 綴理には沙知先輩が、スクールアイドルクラブをあっさり手放したように思えていた。
 その事実を確かめることを恐れ、沙知先輩を遠ざけていた綴理は、オープンキャンパスの正否を決める雨が降る中、初めて彼女にそれを問い質し――彼女は唖然とした。

 沙知先輩というキャラクターは、とても強い人だと誰もが思っていたはずだ。
 自分も同じで、これまでの『活動記録』で登場してくるたび、沙知先輩は花帆たちが置かれた状況に毅然と接し、先々を見透かしたような最適解を提示するキャラだった。第12話でさやかに「どうしてスクールアイドルをするのか」と問いかけたように、年齢に見合わぬ洞察力であらゆる正解を言ってのける。
 実際、これまで全部、彼女の言うことは正しかったし、過去の行いについてもその正しさは否定されていない。彼女はずっと正しかった。

 ただ、最適解を見つけ出せて、最適解を選び抜けることで、綴理たちにも自分にも「強い」と思われていた彼女は、実はちゃんと傷付く弱さのある女の子だった。
 それをうまく隠せすぎてしまったことに気付いた一言は、あらゆることを見通せるはずの沙知先輩にも、自分のことはそうではなかったと悟らせるもの。
 このあと、綴理と沙知先輩はお互いの本当の気持ちを話し合い、そのわだかまりは紐解かれることになるが――自分はその前段である、この一言がとても好きだった。

 第13話の感想を〆る前に、最後にこのシーンに触れておきたい。
 オープンキャンパスに協力する形として、スクールアイドルクラブは参加する中学生たちのツアーガイドを務めるのだが、その中での花帆の一言だ。
 最初、蓮ノ空女学院では自分の望みが叶わないと絶望し、脱走さえ図った花帆が今では学校の魅力を数え切れないほど紹介すると言い切っている。
 出会いとその後の日々が、彼女に蓮ノ空女学院をここまで愛させたのだと思うと、『蓮ノ空のこと好き好きクラブのみなさん』の一人として誇らしい気分になるのだ。

■第14話『Link! Like!』

『誰がなんと言おうが、花帆さんは立派なスクールアイドルです――』

 特に狙ったわけではないのだが、第14話からの好きな台詞もさやかから選出である。
 とはいえ、何話か前でも触れたが、さやかの言葉はツッコミ役故の受けの美学とでも言うべきか、相手の言葉に対して適切な言葉を返すという向きが強い。
 それはシリアスな、大切な場面でも遺憾なく発揮されるため、自分的にはとても響く部分が多いのだとそう感じられる。

 第14話で描かれるのは、『ラブライブ!』の北陸大会を目前に、蓮ノ空女学院で繰り広げられる『ネット禁止令』を巡る物語――否、壮絶な戦いだ。
 リアルタイムと連動した企画である『リンクラ』において、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブは『スクールアイドルコネクト』(以下、スクコネ)というアプリを用いた配信活動を日々行っていて、それは『活動記録』の中でもたびたび話題に挙がっていた。
 今回、学校の『ネット禁止令』により、このスクコネにも使用制限がかかり、スクールアイドルクラブの活動が窮地に陥ることになる。

 学校側の厳しい締め付けが理由で、北陸大会の出場さえ危ぶまれる状況の中、追い詰められるスクールアイドルクラブで花帆は不安でいっぱいになる。
 スクコネで配信活動を行い、そこでのコメントに日々勇気をもらっていた花帆にとって、自分がスクールアイドルとしてやっていけている実感の多くはそこにあった。もちろん、ライブ会場に直接見にきてくれる熱心な人たちも大切だが、会場のキャパシティに物理的な距離と、誰もがそうできるわけではない。
 配信でしか触れられない人たちがいて、『ネット禁止令』が確立され、スクコネが使えなくなれば花帆は最初に自分を支えてくれた存在を丸ごと失いかねない。
 それは花帆にとって、自分がスクールアイドルであるという自信と直結するものだった。

 その事実に思い悩み、思い詰める花帆の下に最初に駆け付けたさやか、彼女は花帆の心からの訴えを聞くと、花帆のために言葉を尽くす。
 その結論が『誰がなんと言おうが、花帆さんは立派なスクールアイドルです――』というものであり、その前には「この学校で最初から花帆さんと一緒だった」とあった。
 第13話で挙げた台詞でもそうだったが、さやかの言葉には説得力がある。それは彼女が自分の気持ちを伝えるときに、どうしてそう思うのか根拠を添えてくれるからだ。それはきっと、彼女自身が自分の発言の根拠がわかっていないと、それをうまく伝え切れないと心のどこかで思っているからではないだろうか。

『ぜったいにこれで! みんなを花咲かせちゃいますよ!』

 かくして、さやかの一声に自分を取り戻した花帆は、自分を心配して駆け付けた梢たちに囲まれ、支え合うことで『ネット禁止令』に立ち向かう方法を思いつく。
 その解決法の鮮やかさも、一生懸命に関係者を説得して回るというような感情的なものに訴えるのではなく、足掻いて正答を見つけ出す姿勢に強い納得感を与えられる。
 そしてまた一つ、彼女たちが立ち塞がる障害を乗り越えようと奮闘する姿に、『蓮ノ空のこと好き好きクラブのみなさん』の一人でよかったと思わされるのだった。

 今回、第14話では全員が一丸となって解決に奔走するのだが、二年生三人組のツッコミ所が多かったのも個人的な楽しみポイントだった。
 慈と綴理がボケボケなのは平常運転だが、真面目で懸命な発言が面白く扱われ、笑いどころとされる梢も非常に良い。ばえーん(鳴き声)。


■第15話『夢を信じる物語』

『そこは、夢のおとぎ話のような場所でした』

 第15話で描かれるのは『再起』の物語だ。
 どんな物語であれ、起伏のある展開を描こうとするのであれば、楽しい部分ばかりを描写し続けることは難しい。物語は現実の写し絵ではないが、それでも素晴らしいドラマを生み出すには困難と、それに立ち向かうことが必要になる。
 実際、これまで『活動記録』で描かれてきたいずれのエピソードも、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブが困難とぶつかり、それを乗り越えていく物語だった。
 ――だが、もしも乗り越えられない壁に激突し、完全敗北を味わってしまったら?
 その後の物語は次なる困難――如何にしてその事実を呑み込み、キャラクターたちが立ち上がっていくのかを描かなくてはならない。

 第15話については長々と書くのが無粋になる内容だ。
 端的に言えば、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの面々は大きな挫折を味わい、その衝撃に打ちのめされながらも、一人、また一人と現実と向き合っていく。
 このときの、スクールアイドルクラブの六人がそれぞれ異なる形で現実を見つめ、それぞれ異なる言葉で明日へ踏み出していくのが非常に美しいプロットだ。

 花帆と梢は二人で一緒に、自分たち以外のスクールアイドルクラブの仲間たちの下を訪ねて、彼女たちと言葉を交わし、その再起の場面を見届けていく。
 それを果たした最後、二人は自分たちもまた再起するために現実と向かい合う。

 冒頭の台詞は、この第15話における本当に冒頭の台詞になる。
 最初、この台詞を目にし、耳で聞いたとき、自分は花帆が待ち望んだ舞台に立ったことへの大きな感動と、その後の喪失感に繋がるものと受け止め、いい台詞だと思った。
 しかし、これはお話が進むにつれて、花帆にとってとても大きな後悔だとわかる。
 確かに大きな感動もあったと思う。その後の喪失感も本物だろう。だが花帆は、その場所に立つことを夢やおとぎ話だとし、現実のものとちゃんと受け止められていなかった。

 夢というのは不思議なものだ。思い描いた理想であり、叶えるために一生懸命頑張らなくてはいけないものであり、はっきりと形があるものでもない。
 それなのに、夢を叶えるには現実を踏みしめ、確かに存在する道を進む必要がある。
 夢は、叶えるために夢心地でいてはいけないものなのだ。

 花帆はスクールアイドルを知らずに蓮ノ空女学院に入学し、梢に導かれてスクールアイドルになり、いつしか蓮ノ空女学院を好きになり、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブに所属するスクールアイドルの一人となった。
 しかし、彼女の中で全員で協力して辿り着いたその舞台は『夢のおとぎ話』であり、あくまで自分以外の夢の手伝いとして行き着いた場所だった。
『夢のおとぎ話』という表現は、15話の物語を進めていくうちに、その表現に対する印象を大きく変えていく、そういう仕掛けのある言葉だと強く感じさせられるのだ。

 最後、花帆が梢と交わした誓いと約束は、花帆があの場所を『夢のおとぎ話』なんて遠い彼方の場所ではなく、自分にとっても夢を叶える場所と自覚した瞬間だと思う。
 もしかすると、第2話と3話で『スリーズブーケ編』は終わったと考えていたのは自分の勘違いで、この一年間が丸ごと『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ編』であり、『スリーズブーケ編』であったのではと思わされるほどに。
 そのぐらいの大きな大きな意味が、このお話にあったと自分には思われるのだ。


■第16話『Special Thanks』

『えっ、あっ。そーですよ、花帆ですよー••••••えへへ••••••』

 第15話までで書きたいことはほぼ書いたので、第16話はただただ本当の意味で好きな台詞というかシーンというかとにかくそんなのを選んだ。
 自分は『蓮ノ空のこと好き好きクラブのみなさん』の一人なので、みんなが思ったことを大体みんなと同じように思ったのだ。――すなわち、尊いと。

 これ以上の言葉は、第16話にはいらんのではなかろうか。


■終わりに

 さて、これにて依頼された感想文の範囲の終点へと辿り着いた。感想文を最初から追ってくれている諸氏には、長くお付き合いいただき感謝しかない。
 自分は『リンクラ』のリリース当初からプレイしているだけの人間であり、たまたま縁あってこうした機会をもらい、自分の中に溜め込んでいた蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブへの思いの丈を打ち明けさせてもらえた立場だ。
 だが、こうした機会をもらえたことで改めて『活動記録』を始めとして、これまであった『リンクラ』の様々な展開を再度見直し、自分の中でのこの作品への気持ちを見つめ直すことができた。正直、書きすぎたと思っているが、反省はしていない。またお願いしますと言われたら、第17話から先も引き受けたいと思っている。

 ともあれ、ここまで読んでくれた諸氏は自分と同じか、それ以上に『リンクラ』を愛する『蓮ノ空のこと好き好きクラブのみなさん』の人間だろう。
 ここまで読ませておいてなんだが、これまでの自分の感想文はあくまで『長月達平』という一介のリンクラ好きの思いの丈であって、公式見解でも何でもない。物語とキャラクターたちの活躍にどんな感動を覚え、どんな印象を抱き、どんな解釈があろうと、そこに『愛』さえあれば全ては自由である。
 色んなスクールアイドルがいてもいいなら、色んな蓮ノ空のこと好き好きクラブのみなさんがいてもいいよね!
 そう結んだところで、改めて自分がどっぷりと『リンクラ』に嵌まっていることを自覚した自分は、この先もこの物語を楽しんで追い続けることになるだろうと予告しつつ、今回の感想文の決着としたい。
 本当に長らく、最後まで読んでくれてありがとう!

 最後に、本当の意味で『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』が全員揃い、全員で気合いを入れたシーンをパシャリ。
 ここに辿り着くまで、本当に楽しい一年だった! まる。


【長月達平(作家) プロフィール】
代表作『Re:ゼロから始める異世界生活』のほか、『異世界スーサイドスクワッド』『Vivy -Fluorite Eye’s Song-』など多数のアニメやゲームにも携わっている。

▼『長月達平』公式X(旧Twitter)
https://twitter.com/nezumiironyanko?lang=ja


バーチャルだけどリアル
少女たちと「いま」を描く青春学園ドラマ、新年度スタート!

蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブは、 1年365日、入学から卒業までの限られた時間のなかで、 彼女たちと喜び、悲しみを共にし、同じ青春を過ごす、 リアルタイム「スクールカレンダー」連動プロジェクトです。

スマートフォン向けアプリをメインに、メンバーおよびキャストによる動画配信、雑誌展開、楽曲CDのリリース、ライブイベントなど、オールメディアで展開していきます。

▼スマートフォンアプリ「Link!Like!ラブライブ!」

▼公式Webストア「アプリペイ」
SIsCaをお得に購入できる公式Webストアです。
https://app-pay.jp/app/link-like-lovelive/

▼『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』公式サイト https://www.lovelive-anime.jp/hasunosora/

▼『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』公式YouTubeチャンネルhttps://www.youtube.com/@lovelive_hasu

▼『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』公式X(旧Twitter)https://twitter.com/hasunosora_SIC