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作家 長月達平の「#蓮ノ空感想文」-第1話編-

『作家 長月 達平の「#蓮ノ空感想文」』とは?
ライトノベル作家である長月達平 氏が、『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』(蓮ノ空)の活動やスクールアイドル応援アプリ「Link!Like!ラブライブ!」(リンクラ)についてアツく語る、『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』公式noteと長月達平 氏との投稿企画です。複数回にわたりお届けする企画となっており、今回はその第2回目の感想文となります。どうぞお見逃しなく!スキもぜひお願いします!

作家 長月達平の「#蓮ノ空感想文」-初心者編- はコチラ



■挨拶

 さて、はじめましての方ははじめまして。そうでない方はお久しぶりです。自分は一応、職業作家をやっている長月達平というものです。
 とはいえ、この場では作家としてというより、『蓮ノ空のこと好き好きクラブのみなさん』の一人として認知していただくのが一番ありがたい。
 そんな蓮ノ空のファンの一人に過ぎない自分ですが、このたび、こうして公式noteアカウントの方で『Link!Like!ラブライブ!』の感想を書くという役目を拝命しました。
 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブは、これまでにも数々あったラブライブ!というシリーズの中でも特筆すべき特徴――リアルタイム「スクールカレンダー」連動プロジェクトを採用している作品になります。
 物語は現実の四月から始まり、メンバー同士が出会い、絆を深め、困難や障害を乗り越えて団結し、目標に向かっていくのを毎月見守ることになる。それは多くのプレイヤーが実際に体験し、あるいは今後体験することになる一年を通した学校生活を垣間見せるものであり、同時に止まることのない時の流れの証明でもある。
 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブに所属する彼女たちは、毎年必ず訪れるラブライブ!へ参加し、優勝を勝ち取るために懸命に励む。月ごとに決まった年中行事は現実と同じでズレることなく、避けて通ることもできない。
 初めてこのプロジェクトのコンセプトを知ったとき、自分はとんでもなく挑戦的な、いまだかつて誰もやってこなかったものが始まると震えたのを覚えています。
 この物語と、過ぎる年月を一緒に過ごすことになる登場人物たちの行く末を見届けたとき、そこにあるのはどれほど大きな満足感と喪失感になるのかと。
 それは、まだ誰も知らない、まだ誰も味わったことのない感動であるはずです。
 この『Link!Like!ラブライブ!』という作品を追いかけていれば、そうした瞬間と向き合うときが必ずくる。自分も、その瞬間を待ち遠しく思う一人です。
 そんな『蓮ノ空のこと好き好きクラブのみなさん』の一人である自分の綴る、これまでの彼女たちの『活動記録』の感想、少しでも楽しんでもらえれば幸いです。


■第1話 『花咲きたい!』

 さて、前書きがだいぶ長引いてしまったが、ここからが依頼されている『活動記録』の感想文の本題になる。
 実際に着手するにあたり、どういった切り口の内容とするかは色々考えた。
 自分も作家業を営む人間ではあるが、いざ好きなものについて語ろうとすると語彙を失う古のオタクの一人であり、そもそも物語の良さは実際の『活動記録』をご覧じろと身も蓋もない暴論が飛び出しかねない始末だ。
 とはいえ、せっかく自分に依頼されているのだから、自分なりの切り口で『Link!Like!ラブライブ!』という作品に貢献したい。
 そこで思いついたのが、作中の台詞に注目した感想文を綴ることだ。

 このなかなか本題に入らない文章を読んでくれている諸氏は、少なからず『Link!Like!ラブライブ!』という作品に興味を持ってくれているものと思う。
 すでに蓮ノ空にどっぷり浸かっているファンは周知の事実だろうが、まだ蓮ノ空について詳しくないあなたに耳寄りな話――この『Link!Like!ラブライブ!』という作品、何と登場するメンバーたちがとんでもなく魅力的なのである。
 ――登場人物の魅力とは、物語の面白さに直結する。
 当たり前の話だが、好きな人の話は些細なことでも知りたいと思うが、好感や興味を持てない人の話はどれほどドラマティックなものでも知りたくはならない。
 登場人物が魅力的であるということは、その物語に人を熱中させる上で一番重要な要素といっても過言ではないだろう。そしてその魅力とは、その人の行動や信念に現れるものだ。もちろん外見も大事だが、いったんそれは置かせてくれ!
 魅力的な登場人物とは、その言動にも人を惹き付けるものが欠かせない。
 とりわけ台詞というものは、自分の内面に秘めるものも、他者と接するときに発されるものも、いずれも大小の差はあれどその登場人物が物語に干渉する行為だ。
 それは物語を動かすということであり、些細な一言にもキャラ性というものが現れる。
 自分はこの一年、『Link!Like!ラブライブ!』という作品を通して、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの彼女たちを大いに好きになった。
 そこには彼女たちの、それだけ強い魅力を発する台詞があったはずなのだ。
 ここでは、そんな彼女たちの台詞に注目して『活動記録』の物語を改めて追わせてもらいたい。

『花咲きたい!』
 まず、『活動記録』の第1話を見ていくにあたり、話数のタイトルにもなっているこの台詞は欠かせないだろう。これは『Link!Like!ラブライブ!』における主人公格である日野下花帆の入学前から掲げた目標であり、作品を象徴する台詞だ。
 幼い頃、病弱で周りの子たちと違った環境で過ごさざるを得なかった花帆は、明るく楽しそうにしている子たちの輝きを綺麗な花にたとえ、自分もまた彼女たちと同じように、幸せで精一杯日々を満喫したいという気持ちを込めて「花咲く」と表現した。
 作中でも象徴的な表現で、特に1話では蓮ノ空女学院に夢と希望を山ほど抱えてやってきた花帆がたびたびこれを口にしている。

 もっとも、花帆が山ほど抱えてやってきた期待は、蓮ノ空女学院が街の中心部から程遠い山奥にあると知れたことで早々と砕かれる。思い描いてきた楽しい学校生活が木端微塵に砕け散ったとき、「咲けないかも」と思った花帆の落胆は察して余りある。
 しかし、自分が日野下花帆という子を好きになった最初の切っ掛けは、そんな彼女にとっての夢が砕かれた直後にやってくることになった。

 ――そう、学校からの脱走である。
「なんでさ」と首をひねりたくなるこの行動力こそが、日野下花帆という女の子の一番の魅力であると自分は捉えている。前述の通り、彼女の「花咲きたい」という欲求は幼少期の経験が大きく影響しており、つまりは数年物の筋金入りの願いなのだ。
 冒頭で、まだ見ぬ蓮ノ空女学院に思いを馳せる花帆とのやり取りで、ボケだらけの本作に欠かせないツッコミのポジションである村野さやかは、芸術の分野に秀でた蓮ノ空に何の芸術的積み重ねもない花帆が入学できたことを驚いていた。
 その時点で、蓮ノ空女学院に入学するには何らかの芸術分野の実績が必要で、それなしでの受験はさやかの常識的な感覚からは高い壁と思われるものだったのだろうとわかる。
 つまるところ、花帆は物語が始まった段階ですでに自分の「花咲きたい」という願いを叶えるために、その爆発的な行動力の片鱗を見せつけていたのだ。
 そんなモチベーションの怪物である花帆なのだから、ちょっと学院の規則や所在地に躓いたくらいで願いを諦めたりしない。脱走を試みるくらいお茶の子さいさいだ。
 もっとも、行動力=実現力というわけではないので、花帆の脱走計画は残念ながら失敗に終わる。もちろん、失敗してくれてよかった。危うく話が終わるところだ。
 結果的に、花帆はこの脱走に失敗したことで、今後の彼女の人生で欠かすことのできない大きな存在である乙宗 梢と出会い、スクールアイドルを知ることになる。
 物語の始まり、それは日野下花帆の「花咲きたい」という願いと、それを叶えるために行動することを恐れない主人公力によってもたらされたのだ。

 この第1話の物語は、花帆が「花咲きたい」という願いと向き合うお話だ。
 望んだ形と違った学校生活の始まりにガッカリし、花帆は脱走を試みる。その先で出会った梢に導かれ、スクールアイドルを知ったことで全てはうまく回ることに――なんていうほど、人の悩みや希望というものは簡単ではない。

 ステージでパフォーマンスを披露した梢と、同じクラブに所属する夕霧綴理を目の当たりにし、一足先にさやかが入部を決意するのを目にした花帆は苦悩する。
 花帆にはきっと、理想の環境に身を置けば自然と自分は「花咲く」ことができるのだという期待があったのだ。その理想の環境を手に入れるために彼女が努力したことを考えれば、それが高望みしすぎとは誰にも言えないだろう。
 実際、彼女は脱走に失敗したあとも、「花咲きたい」という願いを叶えるために動くことをやめない。他校に転入することさえ考え、クラスでできたばかりの友人たちと別れを前提にした湿っぽい話をするぐらい本気だ。
 本気で、空回りをし続けるのだ。

 さて、この空回りし続ける花帆の苦悩が晴れる前に、村野さやかにも言及したい。
 冒頭から花帆に振り回され、おそらく今後三年間ずっと花帆の言動に一喜一憂することになる愛すべき彼女もまた、蓮ノ空女学院に希望を抱いて入学した。
 そして「花咲きたい!」と主張する花帆に、さやかは自分も「変わりたくて蓮ノ空を選んだ」と答えるのだ。この、花帆語の翻訳性能の高さもさることながら、言い方は違えど、花帆とさやかは互いに同じ願いを抱いてやってきたというのが非常に美しい。

 同じ願いを抱いて蓮ノ空にきた二人の明暗は、第1話の中盤でははっきり分かれる。
 自分の欲しいものはスクールアイドルクラブにあると考え、入部して綴理の指導を受けながら前向きに過ごすさやかと、クラスメイトと後ろ向きに湿っぽい別れのやり取りをしている花帆とで真っ二つだ。
 そんな彼女の苦悩はまた別のお話で描かれることになるのだが、このとき、なかなか苦悩の晴れない花帆をスクールアイドルクラブへ誘い、同じ景色を共有したいと訴えかけてくるシーンは、人間関係に不器用ながら優しい彼女の人柄が溢れている。
 さやかにも、花帆が自分と近い悩みを抱えていたことと、少なくとも自分の光明が見えた方法で花帆に希望を見せたいと、そんな願いもあったのかもしれない。

 結局、花帆はこのときのさやかの誘いには頷くことはできなかった。
 それはまだ花帆の中で、「花咲きたい」という自分の願いが、望んだ環境の中でしか叶わないというある種の諦めがあったことが原因だろう。
 このあと、花帆は梢を手伝う形でスクールアイドルクラブの活動に関わり、じっくりと地盤固めをしていく梢の策略にまんまと嵌まることになるのだが――さやか同様、梢もまた花帆の望みや願いの叶え方は花帆自身に託し、意思を尊重する。

 自分の願いが叶えられないことに悩む花帆に、梢は自分が願いをどうやって叶えたのかを話す。その方法はまさしく、乙宗 梢らしさに溢れたもので、自分にも相手にも妥協をさせたがらない彼女の人間性がはっきり出たものだった。
 その梢の意見を聞いて、花帆は自分の「花咲きたい」という願いの本質と向かい合う。
 望んだものと違った環境に置かれた花帆は、「花咲く」という願いが叶わないことを環境のせいにして、それを都合よく変えさせることばかり考えていた。
 しかしそれは、花が咲くための雨を黙って待ち続けるようなもので、「花咲きたい」と願いながらも花ではない自分には、待ち続ける以外にできることがあると彼女は気付く。

 この、「花咲きたい!」という願い自体は変わらないのに、それを叶えるための向き合い方が変わるシーンが、1話の中で自分は一番好きだ。
 台詞は同じものなのに、その台詞に込められた意味合いが変わったとき、それはたった一つの台詞でたった一つではない影響力を物語に生み出したのだ。

 こうして、日野下花帆は「花咲きたい!」という幼い頃からの強い強い願いを叶えるために、スクールアイドルになることを決断する。乙宗 梢と共に結成される二人の『スリーズブーケ』の始まりだ。
 この花帆の決断を言葉少なに喜んで受け入れた梢と、それを見届けたさやかがどんな気持ちでいたか、『蓮ノ空のこと好き好きクラブのみなさん』の一人である自分も想像するだけで胸が熱くなる。
 これが、『Link!Like!ラブライブ!』の物語、『活動報告』の第1話であり、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの始まりなのだ。

ずいぶんと長々と好きを語ってしまったが、最後に一個だけ、この第1話を見返していて気付いたことがあったので、皆さんにもお伝えしておきたい。
 実は第1話の中で、花帆は一度も「花咲きたい!」とタイトルと同じ台詞は口にしていなかったのでした。わはは。

 番外だが、このために1話を見返していてどうしても言及したくてたまらなくなった部分を二ヶ所だけ抜粋する。

 さっそくだが物語冒頭、初めて出会った花帆と言葉を交わす一幕で、さやかがついているとんでもない嘘である。仮にバスに乗り合わせた時間が違ったとしても、教室で花帆と出くわした彼女の行き着く先は間違いなく現在と同じだ。
 この発言の二十秒後にはすでに花帆と、これから三年間続くことになるだろう息の合ったやり取りを披露しているので、「どの口で?」案件である。

 もう一つは地味で見過ごしがちだが、寮室で家族の電話を受けた花帆に、蓮ノ空での暮らしぶりを聞きたがる花帆母のこの一言だ。
 元々、花帆が蓮ノ空女学院を受験したのも、花帆母がこの学校の卒業生であり、自分の過ごした学校生活の思い出を娘に語り聞かせていたことが理由だった。あまりに期待が膨らみすぎた結果、花帆の中で母が語った思い出以上に蓮ノ空女学院は都合のいい夢と希望に満ち溢れた場所となっていたが、花帆にそう思わせるくらい、花帆母が語った学校生活の思い出が楽しいものだったからというのが窺える。
 そして、「いい出会いはあった?」と花帆母が娘に尋ねるのは、他ならぬ花帆母自身、幸せな学校生活を過ごせた一番の理由が『出会い』にあったと考えているからだろう。
 花帆母は素敵な出会いをして、この蓮ノ空女学院の日々を満喫した。だから、自分の娘にもそうした出会いがあればいいと、心から祈って送り出したに違いない。
 そんな花帆母の期待と祈りが叶ったことは、この『Link!Like!ラブライブ!』という作品を追いかけていく自分や『蓮ノ空のこと好き好きクラブのみなさん』の知っての通りなのである。

作家 長月達平の「#蓮ノ空感想文」-第2〜6話編- へ続く


【長月達平(作家) プロフィール】
代表作『Re:ゼロから始める異世界生活』のほか、『異世界スーサイドスクワッド』『Vivy -Fluorite Eye’s Song-』など多数のアニメやゲームにも携わっている。

▼『長月達平』公式X(旧Twitter)
https://twitter.com/nezumiironyanko?lang=ja


バーチャルだけどリアル
少女たちと「いま」を描く青春学園ドラマ、新年度スタート!

蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブは、 1年365日、入学から卒業までの限られた時間のなかで、 彼女たちと喜び、悲しみを共にし、同じ青春を過ごす、 リアルタイム「スクールカレンダー」連動プロジェクトです。

スマートフォン向けアプリをメインに、メンバーおよびキャストによる動画配信、雑誌展開、楽曲CDのリリース、ライブイベントなど、オールメディアで展開していきます。

▼スマートフォンアプリ「Link!Like!ラブライブ!」

▼公式Webストア「アプリペイ」
SIsCaをお得に購入できる公式Webストアです。
https://app-pay.jp/app/link-like-lovelive/

▼『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』公式サイト https://www.lovelive-anime.jp/hasunosora/

▼『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』公式YouTubeチャンネルhttps://www.youtube.com/@lovelive_hasu

▼『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』公式X(旧Twitter)https://twitter.com/hasunosora_SIC