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【読書】世界が注目する日本の介護

世界が注目する介護事業所が日本に存在する。
神奈川県藤沢市に位置する「あおいけあ」というグループホームと小規模多機能型居宅介護サービスを提供している事業所である。

この事業所は映画のモデルになる等、多くのメディアに取り上げられたり、台湾やフランスをはじめとした海外からの見学者も多数来るような、世の注目を集めている。

「あおいけあ」には何か特別な秘密が存在するのかと思われるが、特に変わったことをしているわけではない。ただ「あたりまえの介護」を提供しているだけである。

「あたりまえの介護」とは一体何を意味するのか。
介護現場で働いている方はもちろん、介護をしている家族、介護に少し興味がある人、全くない人も含めて、たくさんの人にこの本(漫画形式なのでとても読みやすい)を読んでいただきたい。

◆読む目的

・世界が注目する日本の介護事業所の秘密を学ぶ
・『介護』の理解をより深める
・アイデアのタネを見つける


◆キーワード

『困らない環境』『よりよい人間関係』『あたりまえの介護』


◆要点・まとめ

○困ってさえいなければ、認知症があっても「普通のお年寄り」

介護の仕事は、その人が何に困っているかを見極めて、困っている原因を解決するまで付き合うこと。

認知症の高齢者は周辺環境や心理状態で困っていることがあるから、徘徊や幻覚・幻聴などの認知行動を起こしてしまう。
介護する側は、その「行動」に対してアプローチをした結果、「鍵をかけて出られなくする」等の行動制限の発想に至ってしまう。

我々はその行動を引き起こしている「環境」や「心理状態」に目を向け、改善策を考えなければならない。
具体的には次の2つ。

・高齢者が困らない「環境」を、先手を打って整えておく。
(例)視力が落ちた利用者でもトイレの場所が分かるように、床にトイレまでの白線テープを貼る。
・高齢者が困っていても、コミュニケーションをとって「心理状態」を安定させる。

困らないように先回りしてケアを行うことで心理状態が安定し、普通のお年寄り同様、自分のことは自分でできるようになる。
介護現場は利用者にとっての「困らないですむ環境」を整えることが重要。

○「よりより人間関係の構築」がトップゴール

人間関係が構築できていなければ介護そのものは成り立たない。
利用者に対する入浴援助やコミュニケーションなどの「介助」はゴールではない。

トップゴールは、「よりよい人間関係」
「介助」はそこに至るための手段でしかない。

そして「よりよい人間関係」は、高齢者との信頼関係の積み重ねの上に構築できるものである。そのため、一人一人の心に真剣に寄り添い、その人に関心を寄せていく姿勢が大事である。

○「アイデンティティ」と「ストレングス」に目を向ける

アセスメントなどで高齢者を前にすると、その人の弱みに目を向けて欠点ばかりを探そうとしてしまう。
そうではなく、「アイデンティティ(存在意義)」と「ストレングス(強み)」に目を向けて理解に努めることが重要。

「その人が人生の中で大切にしてきたこと」や「得意なこと」を引き出すことで、普段通りのその人らしい日常生活を送ることができる。

「できること」に注目して「できないこと」を目立たなくする。
それが「自立支援」へのカギとなる。

○お年寄りがやりたいことに合わせていく

介護を行う上で大切なことは、「介護する側がさせたいこと」ではなく、「高齢者がやりたいこと」に合わせていくこと。
「やらせる / やらされる」の関係ではなく、お互いが主体的な関係で信頼関係を築くことがベスト。

誰でも「社会のために貢献したい」と心の中で思っている。
その思いを汲み取り、活動願望に応えてあげることで、高齢者にとっても社会にとってもプラスとなる。

お年寄りの「○○したい」という気持ちを支えること。
それがケアである。

○「あたりまえ」の生活を築くことが一番のソリューション

「あたりまえ」の生活をしているだけで元気になれる。

特別なことはなにもない。
高齢者の立場になって考え、自分がされて嫌なことはしない。
生活する上で困ることが予想できるシチュエーションには事前に手を打っておく。
「できない」を「できる」ように支援する。

「あたりまえ」の中に介護の正解が詰まっている。
介護現場は「あたりまえの介護」を目指し、その環境を整えていけるよう努めることが、今後の日本の介護を救うためのソリューションとなる。


◆アクションプラン

・他人の「アイデンティティ」と「ストレングス」を見つける。


◆メモ

あとから見返して役に立つものを「記録」という。棚にしまい込んでケアに役立てられない記録じゃなんの意味もないってね
じいちゃんばあちゃんを地域資源にするのが「介護の成功」だと思っているよ!
「自分たちの仕事とは、揺れている利用者の『自我』を、『環境』と『ケア』で支えること。」



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