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【マンガ業界Newsまとめ】ついに一線級漫画家がWebtoonにガチ進出、第1号はBoichi先生 など|6/5-054

マンガ業界の週1ニュースまとめです。昨今動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、忙しい皆さんがなるべく短時間で情報を得られることを目指しています。

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Boichi(ボウイチ)先生と尹仁完(ユン・イナン)が夢のタッグ!2023年に、webtoonオリジナル・コラボ作品の連載をスタート!

『Dr.STONE』などのBOICHI先生が、LINEマンガCCO(Chief Creative Officer)の尹仁完(ユン・イナン)さん原作という形でタッグを組み、LINEマンガにWebtoonを連載するというニュースです。

BOICHIさんが凄いのは一旦置いておいて、ユンさんのほうに少し触れると、もともと週刊少年サンデーでデビューした漫画家さんだったのですが、韓国でYLABという漫画制作スタジオを設立。このYLAB日本進出の一環でXOY(ジョイ)というレーベルを立上げ、Webtoonを制作するなどしていました。

XOY当時は、東村アキコさんや元小学館IKKI編集長の江上英樹さんらと『偽装不倫』などの制作を手掛けられています。

このXOYがLINEマンガに吸収され、現在はLINEマンガのCCOという立場なわけですが、当然ながらWebtoonにクリエイティブ面で精通されてます。というわけで、原作とはありますが、実質的には経験豊富なプロデューサーが付く形で、そこに日本の漫画家の中でも特に画力に定評のあるBoichiさんが作画として入り、Webtoonをつくるということですね。

先週、Twitterスペースの開催をお知らせ、イ・ヒョンソクさんが日本のWebtoon界隈の「飛車」だとしたら、ユンさんは「角」と言えるような、大ゴマのガチ参画と言えると思います。

先週の当まとめで触れた『どろろ』の展開では、日本の現役有力IPに有力プロデューサーや、韓国の一級スタジオが関与する展開という点が注目ポイントでしたが、今度は日本の一線級の漫画家さんが、これまた強力なプロデューサーさんと組んでのWebtoon参画となります。この分野どんどん進んでいきますね。ともかく、この作品は楽しみです。


ベテランマンガ編集者が、ウェブトゥーンに(縦読みマンガ)の世界に飛び込んだワケ 武者正昭×江上英樹

最近comicoの社長を退任された、元小学館の武者正昭さんと、一つ上のニュースでも触れた、元小学館IKKI編集長の江上英樹さんのインタビューです。2人ともベテランの横漫画編集者でありながら、Webtoonの制作に携わったという共通点をお持ちです。そもそも飯田さんの記事の切り口が良いですね。

内容としては前半が2人のベテラン横漫画編集者のキャリアやWebtoonの現場に入るまでの経緯など、後半がその経験を経てのその横マンガとの違いや、傾向、難しさなどを語っています。

中でも後編のタイトルにもなってる「マンガは林業」という言葉は深いです。IT企業が次々とマンガに新規参入してから数年、Webtoonという新しい表現手法も出来、そんな中で旧来の横漫画しかなかった頃にはなかった「対比」が生まれ、両方の現場経験から絞り出された言葉と思うと重みがあります。今後も長く使われる言葉じゃないでしょうか。


縦読みフルカラーコミックアプリ「HykeComic」、「ストレートエッジ」との合同レーベル「HxSTOON(ヘクストゥーン)」の設立と制作発表会の開催が決定!

ラノベ中心のエージェントからWebtoon原作制作に舵取りした、三木一馬さん率いるストレートエッジ社が、以前より連携を宣言していたアカツキ社・HykeComicに原作を提供する形で、新レーベル「HxSTOON」の設立を発表しました。

リリース第1弾で10作品をHykeComicで先行配信するとのこと。HykeComicと言えば先日6月下旬にプラットフォームをオープンすると発表したところで、当初のいわゆる専売作品として、このHxSTOON作品が10本入ってくるということですね。

なお、6/6の19時からはTwitterスペース上で、制作発表会を行うそうです。


著作物の二次利用しやすく デジタル対応、法改正へ - 国が関与し代理許可

記事では、政府がネット上で発信される映像や音楽など、古いものなどで権利者が見つからなくなった際の処理、いわゆる「著作権者不明」状態の対策について、国が関与して円滑な権利処理を行い、作品の展開をしやすくするということを記事ではまとめています。

実はこの記事で言う、知的財産戦略本部が6/3に発表した「知的財産推進計画2022(案)」はもっと広い範囲を対象としたもので、「意欲ある個人・プレイヤーが社会の知財・無形資産をフル活用できる経済社会への変革」と、大きく謡っています。

具体的な内容は、このPDF資料に詳述されていますが、ベンチャー企業の技術などの知財、デジタル時代の様々な施策などをまとめようとしています。一先ず、マンガ業界News的に関係のありそうなのは、P59から先あたりになりそうです。

デジタル時代の著作権管理ということで、1次、2次といったN次創作に伴う、許諾や権利処理の一元管理化と、その際の対価還元の施策。制作するクリエイターやの発掘や、プロモーション支援などが盛り込まれています。

特に、下図で示される著作権の一元管理スキームについて、これはマンガのみならず映像や音楽など、およそ著作権の関わる主要なコンテンツは全て範囲となりそうな大きな座組のものになります。例えば、漫画が原作となり、アニメとなり、ゲームやグッズとなる展開が当たり前な中、こうした取組の整備は今後必要となっていくことでしょう。

ちょっとまぁ、上手く進めないとこれは大変だろうなと想像はしますが、まぁ必要であろうことは確かですね。

他にも、クリエーターに適切に対価が還元され、コンテンツの再生産につながるよう、デジタル時代に対応した新たな対価還元策やクリエーターの支援・育成策等について、コンテンツ配信プラットフォームや投稿サイト等における著作物等の利用状況や権利者の利益保護に関する実態把握も踏まえるなど、実態に即してやっていきたいとは考えているようです。

また、これまでこうした話題の中で存在感の大きかった海賊版対策ですが、計画策定にも関わった福井健策さんによると「焦点は国際ネットワークづくり」というフェーズに移行したとのことです。なるほど、進んでますね。

個人的にはこうした制度の見直しや、それに伴う情報の提供などをコンテンツ企業やクリエイターに促す場合は、まずそれなりに精緻な市場規模の算出などの根拠数値を出し、将来の集中分野などをそこから見極めるなどしてから負担や痛みを強いることが手順とは考えます。いきなり制度を仕組みを押し付けるのは、基本的には受け容れがたいでしょうね。

特に、マンガにおいては、同人誌即売会や多くの場でのクリエイターの自己発信からなる裾野は広大で、こうしたインフラがある中で、変化を強いるというのは相当な強い根拠がないととは思います。まずは調査事業や、調査機関の設置を求めたいのが、個人的な所感です。

まずは、せっかく政府が複数分野に横串を指すなら、強力なR&D、特にResearchからじゃないかなぁとは思います。実は、そのためにIMARTは始めたんですけどもね。


マンガもドラマも?タテ型コンテンツが人を惹きつける理由、今夜「クロ現」で徹底解明

タイトルの文脈から、Webtoonがどうして読まれるのかというようなニュアンスを期待しましたが、実際は映像コンテンツの話が大半で、Webtoonについての言及はごく僅かな番組でした。

ただ、この中で研究者の方がおっしゃっていたことが非常に印象的でした。

(意訳)人間は、タテ映像のほうが人が直接こちらに働きかけてくるように見える効果から、集中しやすいのは確かなようだ。だが、集中しやすいということはそれだけすぐに疲れやすくなる。短い時間で見るのをやめたり、違うコンテンツに行ってしまったりする。善し悪しだ。

クローズアップ現代より

というようなコメントがありました。

単純に、スマホだから縦というような認識はこれまで多くのところにありましたが、確かにそれはそうだなと思いました。当然、作品の作り方や流行する形も変わっていくわけですね。

この番組は、6/7までNHK+で視聴可能です。(要無料会員登録)


国内News

残念ながら集英社から売り上げ規模などは発表されていないのですが、恐らくこれまでの日本国内の和製Webtoonの中ではもっとも売れたのではないかという声もある『サレタガワのブルー』の記事です。


発表数値として新しいところとしては、ドラマ化もされた本作ですが、ここまで4億PVとのことで、ちょっと想像がつかない読まれ方をしていますね。

作家のセモトちかさんと、担当編集の北室美由紀さんの2人がインタビューされていますが、インタビューを通してわかるのは、ほぼこれまでの日本の横漫画と同じように、一人の作家さんが編集者との向き合いで作品を作っているのだなということです。

今、Webtoon界隈で主流となっている、強い原作小説をもって、大型のスタジオが作品を作る流れとは一線を画した作り方になっています。このあたり、comico時代は『ReLIFE』なども担当していた北室さんならではとも言えそうです。

集英社ではマンガMeeスタジオも立上げ、これからWebtoonを盛り上げていく一翼を担っていくことと思います。その雰囲気を盛り上げるためにも、是非『サレタガワのブルー』など、力のある作品の売上数値などは発表していただきたいですね。

これまでの紙の漫画とは事情がまったく違い、自社アプリ内で販売されているものは外からは全く様子がわかりません。

その中で、良い作品がしっかり読まれ、売り上げを作ったということは、隠しておいては非常にもったいなく、またせっかくこれから盛り上がる業界の士気を下げかねません。一考していただきたいところです。


既にcomicoなどで作品を複数リクープさせ、数十本の作品を制作中というソラジマですが、ソラジマパートナーシップという枠組みで、出資者とともに共同レーベル(制作はソラジマ)で作品を制作・販売するという枠組みをリリースしています。原則50%ずつの共同出資で、発表できる作品数を向上するという狙いのようです。


東大ベンチャーの一角RECOMAN社のマンガアプリ「RECOMAN」が、App Storeでリリースされました。「ユーザーが好きなマンガを入力すると、AIによってオススメのマンガ雑誌が作られ、1日3話(3作品を1話ずつ)を無料で読むことができます。」とのこと。

漫画ソムリエの兎来栄寿氏が関わるなど、ちょっとユニークな切り口で事業を準備されていたので、注目していました。一先ず限定リリースとのことです。


魔法のiらんどをプラットフォームとした小説大賞に、45レーベルが選考ということで多いですね。これは、小説以外に漫画原作部門があり、KAODOKAWAグループの多くの編集部が漫画原作などの選考に関わっているということのようですね。その中には、話題のタテスクコミック編集部も入っており、横マンガもWebtoonも原作としてカバーしているようです。

このところ過熱というか、多くの箇所で議論がされている表現関連の話題ですが、このnoteは、論考の中で参考とする論文の量と、この議論においてクリティカルな研究結果が出てきているということで、大変興味深かったです。

この件について、意見は様々あるとは思うのですが、研究結果や論考としては、一読というか熟読の価値があるように思いました。

ただ、現状の「ネット上での議論」については、どんなに論を尽くしても、大抵は議論の前提がかみ合っってなかったり、2つに意見が分かれてるようで一方の中でも色んな考えの人がいたり、そうしたところでまとめるのが非常に難しいところだなとは思っています。


海外News

かねてから、韓国のWebtoonの中では作品に合せてOST(オリジナルサウンドトラック)が販売され、作品・曲ともども良く売れているというお話がありました。

このケースでは、音楽アーティストが作品に合せてOSTを作るのではなく、作品の主人公である「イドゥナ」自身が歌う形で、ファーストアルバムをリリースするというものです。ライブとなったら、Vキャラを作ったりするのでしょうか。色々と展開のさせ方がありそうですね。


CLIP STUDIOのセルシス社による調査で、英仏独西といったヨーロッパ4か国において、クリエイター8000人を対象にデジタル機材仕様の調査を実施、この4か国の中でもデジタルを利用するクリエイターが増えていることを示しています。

また、そのクリエイターの中の約3割が日本の漫画を描くなど回答しています。このジャンルの選択肢について(アメコミ、漫画、バンドデシネ、Webtoon)で、どこにクリエイターがいるか聞いており、ご当地バンドデシネより日本の漫画のほうが人口が多かったり、Webtoonもなかなか伸びているのが判り興味深いです。

今週から、libroさんの「北米漫画ニュースまとめ」改め「北米エンタメニュースまとめ」に名前が変わって、範囲もアニメや音楽のほか、Web3やNFTなど範囲も広くなってます!

記事のみ紹介


告知関連

告知というほどでも無いんですが、当Newsまとめが、noteの中で「ビジネスパーソンにおすすめ」という5つに選んでもらえました。

トンマナというか、文章制作時には、完全に業界内の人向けの専門性水準で記事を書いているつもりのため、多くのビジネスパーソンに効くかというと、そうかなとは思うのですが、ともかく業界の方々や新規参入の方々などに、深く広く届けば良いなと思いました。

―――(編集後記)

今週出会った漫画ですが、とても面白かったのでご紹介

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主に週末に週1更新ペースで書いています。たまに別途特集を書きます。マガジンTwitterのフォロー、よろしくお願いします!

マンガアプリのビジネスが広告費高騰で難しくなってきている中で、マンガ編集部やWebtoonスタジオがWebを通して自社で作品の販売を強化できるWeb雑誌の仕組み「コミチ+」の営業をしています。ヤンマガWebの開発・運営をおこなった仕組みを、今後様々な企業に展開していきます。

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菊池健
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