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【マンガ業界Newsまとめ】ピッコマが示す日本漫画の未来、雑誌に代わって「ピッコバス」など |3/6-042

マンガ業界関連の日々のニュースをまとめるマガジンです。最近マンガ業界のNews総量が激増中で紹介数も増えているもので、コメントしたりしなかったりします。

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カカオ、日本で漫画版ユーチューブをリリース

昨年600億円という大型資金調達を行ったピッコマですが、その使途の本命らしく見えてきた新サービス名が「ピッコバス」とのことです。


「日本のメジャーな出版社とともにピッコバスをリリースしようと協議中」とのことですが、今のところうかがえる概要は以下。

・「プレビュー」を通じて利益をあげるモデル
・売上はカカオピッコマと出版社が分配
・出版社参与型プラットフォームが定着後は個人運営にも開放
・ネットコミックスIPキュレーションサービス
・デジタル漫画評論サービス

https://www.kedglobal.com/newsView/ked202203020019?lang=jp

4つ目はおそらく、投稿コンテンツを映像化支援するなどですかね。個人的には5つ目がどんなものか興味深いというか楽しみです。動画配信とかライブコマースとかあったらエモいですね。

「日本の出版社は自社でのプラットフォームを開発しているが、その利用者数はピッコマの10分の1もいない。ピッコマを通さなければ、デジタル事業が難しい時代となった」と分析した。また、「従来の出版社はピッコマを通じて自社のコンテンツを継続して行くだろうし、カカオピッコマはプラットフォームの事業主として1位の座をよりかためる見込み」

同上抜粋

とも述べられています。現代の「雑誌に代わる機能」確かに必要ですね。
記事の表題から、一瞬以前行われたピッコマTVのような動画系サービスと思いきや、そうではなくて、記事タイトルのYoutubeというのはクリエイターIDのような、収益分配スキームのことを指しているようですね。

クリエイターIDの考え方で行くと、2次創作やMADなど可能性は広がる気もしますが、さて。


決算資料で分析する「電子コミック市場2022」の現在地

マンガ投稿サービス「コミチ」を運営する代表萬田氏の記事です。

amazon-kindle、ピッコマ、NTTソルマーレ、そしてもちろん出版各社など、マンガに関わる重要な企業の多くは、国内で上場しておらず決算情報が詳細に報告されるところは少ないです。

ですが、ここで分析されている「めちゃコミ-アムタスグループ」「マンガBang-Amazia社」「アルファポリス-同名社」と行った国内上場各社は決算情報の開示を義務付けられます。

マンガ業界、電子コミックの市場は大きな成長を続けています。また、中でもピッコマなどは連日大きな成長が現在も発表されています。一方で、国内の雄ともいえる上記2社の決算数値を見ると、マンガBangは2017年から2019年にかけて驚異的な成長を見せ、そのあと横ばい。国内電子書店の雄めちゃコミは、2020年~21年にかけて減収しています。

一方でアルファポリス社は、小説投稿サイトから、ユーザー投稿コンテンツを、小説化、コミカライズなどして近年収益を伸ばし、その成長を維持しています。この動きは、他の電子書店も追随してはいます。

減収の2社も営業利益は維持・微増というところですので、オリジナルIP制作による粗利率向上により、マクロの変化をとらえ、収益構造を適応していっているところなのでしょう。こんな記事もあります。

ビーグリー社の「まんが王国」も、経営戦略を「新規顧客の獲得重視型」から、顧客1人当たりの収益を高める「LTV(顧客生涯価値)重視型」へと舵を切ったとのこと。

逆にいえば、既に国内の漫画市場については、新しいユーザーを獲得することは頭打ちとなっており、囲い込んだ読者一人当たりの売上を向上したり、PF側もオリジナルIP製作などによる収益改善が必要なタイミングになっているということなのでしょう。

これらは必ずしも市場成長を止めるとは限りませんが、少なくともその中身は変化していくでしょう。引き続き、マンガ読み以外の市場を狙うピッコマは成長し、各社は利益率重視の方向に進みそうです。


DMM、ウェブ縦読みマンガを含む電子書籍オリジナルコンテンツの企画制作事業を行うスタジオ「GIGATOON Studio」を設立

ついにと言いますか、あのDMMもWebtoonに参入です。その名も「GIGATOON」ということで、名前もでかくて予算もでかそうです。

昨年、キャンペーンに60億円を投じてやり過ぎてしまったという意味で話題になった同社のこと、「全裸監督」のPともコラボとのことで「お待たせしすぎたかもしれません!」の例の声の元、どかんと大きく打ち出していただきたいものです。

また、今週はDMMの他にも、Cricoと電通&ギークピクチュアズ、がWebtoonへ進出というリリースもありました。Cricoはイラスト制作系、ギークピクチュアズは動画系の会社のようです。

先行するフーモアもそうですし、実はDMMもそうなのですが、もともとサービスの中にイラストレーターや同人作家などクリエイターを抱えていたり、太い接点を持っている会社は、Webtoonスタジオとして立ち上がる際に、それが強い資産になることも実証されつつありますね。


「未だに日本が世界一だと勝手に考えているだけなのです…」中国に移住した“サラリーマン漫画家”が語る“日本漫画界”のリアルな現状

なかなかキャッチーな安定の文春砲ですが、中国在住の日本人漫画家、浅野龍哉さんのインタビューです。

どうも私には、この方がこのまま言ったというよりはライターの企画意図が文章に乗ってる気配が濃厚で何とも言えず。また、中国のほうが優れているというのは、書きぶりからすると市場規模や、IPの国際展開力など、データで語れておらず、そこはまぁ個人の感想として一旦。

そこで、私見も大いに超訳させてもらいまして、ざっくり中国・韓国の漫画事情なども踏まえて、勝手に補完してみます。

例えば、中国の漫画は無料が一般的で、その代わり映像展開やグッズなどのIPで「より大きなビジネス」(ここは超訳)をしているという考え方を取ったとします。

日本国内においてマンガ産業と言えば、先日「出版月報」により2021年分が発表されたものが一般的です。これは「単行本」「アプリ・Web課金」「雑誌」の売上のみを合わせたもので、映像・グッズ・ゲーム他のIP展開時の金額が入っていません。

以下、『俺だけレベルアップ』の日本展開などにも関わる、Red7の李代表のツイートですが、

そもそも韓国では、単行本の売上への依存度が日本より低く、現在はドラマ化の2次著作料金が40%弱とのことで、この構成比は日本とかなり違います。ビジネスモデルが根本的に違うわけです。

この両者をそのまま比べるのは、今のところ公正なデータでは難しく、そもそも日本において、例えば『鬼滅の刃』の全収益を把握するということは、出版社でもアニプレックスのようなアニメ製作会社でもちょっと難しいそうです。

過去日本では、広義のメディア産業は国内で10兆円程と、経産省による試算もありました。ただこれも、出版、映像、ゲームや、それに伴う周辺産業、中には聖地巡礼などを絡めた旅行産業なども入れたざっくりしたものです。

素直に考えて『鬼滅の刃』や『ドラゴンボール』が、マンガのみならず映像、ゲーム、グッズ、イベントなどで成す市場規模はグローバルでかなりの規模があると思われ、日本型のモデルとは異なる海外のコンテンツビジネス産業と競っていく中で、そうした更に広義な視点・データも持っておかないことには、そもそも比べることすら出来ないという点もあるかと思います。

ただ、一点言えるのは、出自として日本より新しい中韓のマンガ起点のエンタメビジネスが、配信など新しい枠組みが進展する世界市場の中で、スピード早く展開しそうである可能性は高く、その一点をもっても「中国のほうが優れている」という見方は、あっても良いかもしれませんね(という超訳結論でした)

以上から私としては2つのことを言いたく。

一つは、日本のエンタメ産業が国際展開を急いでいく中で、マンガ以外にもいわゆるIP展開する全方位に対して、市場規模をデータ化する枠組みは早く作ったほうが良いかなと。個人的にはそうしたThinkTankを目指してIMARTという場を作ったのですが。これはまだ道半ばです。

それと、これまた極私見として、日本のマンガ産業の強みは、その圧倒的な漫画家・クリエイターなどの層の厚み、裾野の広さだと思っています。

現在の商業プロ層はもちろん、同人誌サークル、デジタル同人、Pixiv絵師にファンクラブ型クリエイターなどなど、プロからアマまでこんなに豊潤なクリエイター層や、デジタル・アナログのPFを持つのは日本が今のところ最大で一種の狂気すら感じます。(そこがたまらなく良いのですが)これに比する豊かさを持つ国が現れたら、同系統における真の脅威な気はします。

これさえあれば、あとはその時代時代の新しい出口にクリエイター自身が向かっていくだけです。現に最近、Webtoon漫画家ですって名乗り始めた人、私の周辺でも激増しています。それも良いことですね。私見ですけども。


海外ニュース

英語圏へ絶賛展開準備中で、先日事前登録キャンペーンを発表したNTTソルマーレ社の「MangaPlaza」ですが、事前登録者5万名に到達したとのこと。

海外では、日本のように単純なWebマンガ広告だけではどうしても日本のようにシンプルにはいかないデジタルマーケティングの難しさがあると思うのですが、まずは5万人ということで順調のようですね。

ピッコマの本国本体KAKAOは、新ジャンルとして「大人のロマンス」の人気が高まり、公募展(新人賞に近いか?)も行うとこのこと。日本で言うとハーレクインのようなものでしょうか。NetFlix原作としても相性がよさそうですね。「愛の不時着」とか。

記事中にもありますが、現在の「待てば無料」全盛のWebtoonの在り方は、異世界系の偏重を生んでおり、そのことにはPFとしてのカカオもNAVERも危機感を持ってます。韓国に至っては、国がそのままではいけないと危機感を持って、両社にその心配の念を投じるということもあったとか。

日本に取って返すと、多くの新規参入Webtoonスタジオが異世界系の作品を作っていっていますが、これは韓国PFを睨んでのことですので、いずれ国内Webtoonスタジオにも、この「大人のロマンス」旋風が来るのやもしれません。男性社長や責任者が多いですが、頑張ってほしいところです。


「アマゾンは、リアル書店を一旦諦めた」ということのようです。

出すのも引くのも早かったので、このあとどうなるかがまたわからないところですが、文脈から読むに、アマゾンブックスとその周辺展開は完全撤退して、レジレスのコンビニ「Amazon-GO」やスーパーマーケットの「Amzon-Flesh」は続けるとのこと。

なるほどそうですかー、というところですね。
日本でマンガでやったら、どうなりましたかねー。

国内ニュース

日販、つまり紙の本の2月期前年度比データです。

出版全体で前年度比は82.4%で、わけてもコミックは65.6%で2/3とのこと。昨年はこの時期『呪術廻戦』『鬼滅の刃』両シリーズが売れていたということで、ブームは紙に顕著に来るというあたり浮き彫りになっていますね。

今年の状態で、各方面の紙における収支状況はどうなのでしょう。


講談社の昨年決算の内訳として、「デジタル売上」が「紙の売上」を上回ったとのこと。出版市場全体で見ると、

書籍に占めるデジタルの割合は 6.4%
雑誌で 3.3%
漫画で 60.9% (いずれも以下記事中表から手計算)

と、なっておりまして、おそらく講談社の書籍におけるデジタルの割合は全体よりはずっと高いと想定されますが、それでもデジタル売上率は非常に高くなっており、占める割合は相当のものなのだろうと思います。


ぶんか社による所謂マンガ動画展開なのですが、リリースというかイメージ画像を見ると、いわゆるストーリー漫画ではなく、Web広告などで良く見るタイプの作品が多いようです。電子映えですね。

マンガ動画展開は、主に大手出版によるストーリー漫画の宣伝要素やオリジナル展開が多かった中で、この領域にこの入り方をするのは興味深いなと思いました。


記事のみ紹介

マレーシアと日本を魅了した! K-WEBTOON 海外展示 「ON. WEBTOON」絶賛展示中↓



マンガ×学びの拠点「マンガピット」開設【3月3日クラウドファンディング開始】

監事をつとめます、一般社団法人マンガナイトの取り組みで告知です。

豊島区椎名町のトキワ荘マンガミュージアムの目前に、マンガ×学びをテーマにした施設「マンガピット」をオープンします。この味のある「味楽百貨店」の中です。

「マンガピット」は、新しい世界を発見できるマンガや学びにつながるマンガを選出・発表し、国内外に発信する事業「これも学習マンガだ!~世界発見プロジェクト~(https://gakushumanga.jp/)」に選出された作品を中心に、学びにつながるマンガや学習マンガを楽しめる施設です。

詳しくは記事をご覧いただき、是非クラウドファンディングにご協力ください!

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【編集後記】
今回の42回と前回41回から9本ほど記事をピックアップして、以下のSpaceで深掘りしたアーカイブです。
「マンガ業界News語り」の生配信版(編集無し)になります。3本分で長いですが、最後のほうに、当記事中ほどで紹介したRED7の李さんにもしゃべってもらったりしています。

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