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【マンガ業界Newsまとめ】2021年のマンガ売上の6割はデジタル、ピッコマの勢い止まらず。など |2/27-041

マンガ業界関連の日々のニュースをまとめるマガジンです。今週はNewsがとても多く、一部リンクだけ紹介というものもあります。
最近、業界の方にこのnote読んでいただいてる声をよく聞くので、Newsの広さと深さと両方意識して考えるようになりました。

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2021年コミック市場は紙+電子で6759億円、前年比10.3%増で過去最大を更新しシェア4割超に ~ 出版科学研究所調べ

毎年2月25日は、出版科学研究所による「前年コミック市場」の発表(出版月報2月号の発売)があります。日本のほとんどのマンガビジネスのデータはこの数字をベースとするものです。

さて、2021年のマンガ市場は2020年に続き大変好調に推移し、6759億円となりました。2020年時点で、週刊少年ジャンプがギネス記録の653万部発行され、マンガバブルの頂点とされてきた1995年の約6000億円を超えていたわけですが、そこから更に1割乗せての今年の数値となります。

電子コミックにフォーカスすると、2021年の電子コミック市場は4114億円となりました。これは現在の漫画市場全体の60%を超える数値となり、2019年に「デジタルが半分を超えた」と話題になった時から、2年でさらに10%インパクトが上がったことになります。

このマンガ市場データについて今年は、大きく分けて「紙のマンガ雑誌」「紙の漫画単行本」「電子コミック」という3区分でデータが作られています。

今後区分として大きくなりそうなのが、ここまであまり大きく取り上げられなかった「漫画の海外輸出」と、2026年には世界で1.8兆円倍規模に成長すると試算される「ウェブトゥーン」でしょう。また、出版社の財務を見ると、マンガをIPとした「版権収入」の割合が向上しています。この辺りのデータ別けについても、今後に期待です。


カカオピッコマの「ピッコマ」、1月の取引額が776億ウォンで過去最大を記録=韓国報道

日本の電子コミックの伸びが大きい中で存在感を見せるのが「ピッコマ」です。

そのピッコマの1月の月間取引額が日本円で約74.9億円に達したとのこと。これは単純に12倍しても900億円程ですが、同社のこれまでの取引額の伸び率を勘案すると、今年はTotalで見れば1アプリで1000億円に到達する勢いです。(2021年5月の取引額が約60億円というお話もあり)

先に出た、日本のマンガ市場全体と比べてもざっと1/4というインパクトで、最大と目されるアマゾンと比べても、同程度か鎬を削るところまでは優に来ていると思われます。すでにピッコマ社が一番大きな取引先となっているマンガを出している出版社もあると言われています。

昨年の大型出資を受けて、今年はカカオピッコマ社単体の動きとしてフランスへの進出も予定されており、更なる成長が期待されるところです。


Webtoon-韓国・海外ニュース

WATCHA2.0が示すサブスク型ウェブトゥーンプラットホームの未来

映画レコメンドサービスからエンタメ総合プラットフォームへ飛躍しようという韓国WATCHA2.0の話題なのですが、その中で気になる記述を見つけました。

NAVER とKAKAOが先導し、「待てば無料」モデルでウェブトゥーン産業は成功し、日本でもLINEマンガとピッコマは、同じモデルで成果を上げました。
しかし、「待てば無料」モデルは、作品の長編を前提として収益を上げる制約があります。ウェブトゥーンは今までスナックカルチャーと言われてきましたが、スナックというには、少しヘビーなスナックになりつつあります。

確かに、コンテンツの多くを「異世界系」に依存し、同タイプの作品を量産してきたWebtoonです。韓国では政府から、もっとジャンルや課金方法を広げるべきと、大手2社に通達が来るほどの状況という話もあります。

現在の流行にとどまらず韓国で打たれる次の一手が、総合エンタメサービスの中でリテンションを担うというのは、興味深い記事でした。次の流れは、こうしたところから来るのでしょうか。


WattpadのIPはNAVERウェブトゥーンのグローバルな多様性を牽引する

こちらも一つ前の記事と同様、NAVER社のグローバル戦略の一端です。

Wattpadは複数国にわたり月間利用者数が9000万人を超える小説系CGMです。世界展開している「小説家になろう」ということですね。NAVERはそこからの原作獲得を狙い買収を決めています。日本のなろう系とちがい、ジャンルにも偏りがないようです。LGBTなどのかなり多様なジャンルがタグとして流通していると本文にもありますね。

先のニュースが、韓国Webtoon業界の世界に向けての「販売」の打ち手と考えると、このニュースは「原作獲得」「新人獲得」という「仕入」まわりのニュースとなりましょうか。


ネイバーウェブトゥーン、グーグル・コンテンツ振興院と「Kウェブトゥーン」のゲーム化を支援=韓国

こちらは、韓国におけるゲームとWebtoonの合わせ技の話題なのですが、出てくるプレイヤーがNAVERの他に、韓国にとっても外資にあたるGoogleと、韓国のコンテンツ政策の出先機関となるコンテンツ振興院が出てきているのがユニークです。

振興院がいなければ、単なるNAVERとGoogleの業務提携なのですが、ここで振興院が担う役割は「支援金支給と管理」とのこと。言わば国策機関がお金も口も出すということですね。

日本でこれをやった場合、あまり良い未来のイメージはわかないのですが、実際これが成立し、上手く行っているのが韓国ということだと思います。

マンガ大国日本、ウェブトゥーン大国韓国#1:日韓電子コミック市場とマンガアプリの普及

漫画に関する日韓比較の一連の記事です。

先の記事で、日本の電子コミック市場は4000億円超えなどお伝えしましたが、韓国におけるマンガアプリ利用率は、その日本をダブルスコアで上回ったり、50-60歳上がWebtoonを読んでいるようです。この記事、シリーズ物で第2回目はピッコマの紹介なのですが、さらにその続きが気になります。


中国webtoonプラットフォーム、同じ内容の作品を別タイトルで同じプラットフォームで出すも、異なるファンや読者がつく!

今度は中国の話題です。

これはいわゆる、同じ作品を同じプラットフォーム上でちょっと変えて販売して、いわゆるABテストをしていると読み取りました。

一般的に日本の漫画でそんなことをしようものなら、各方面から盛大に怒られてしまいます(事前に握れば良いのでしょうが、感覚としてこういうことはあまり発想しないと思われ)

実際に中国の方が、市場がでっかいから問題ないということを言っているのですが、ここまでの記事一連で言う韓国の戦略にせよ、巨大市場に育ちつつある中国ローカルの空気感にせよ、日本と大きく違うことが良くわかります。


Webtoon-国内ニュース

韓国出版プロデューサーが語る日本漫画の近未来 「作品性とスマホ向け 二極化する」

冒頭に韓国出版とあるのですが、双葉社による韓国作品の日本展開の記事ですので、国内記事としました。NetFlixで話題となった「地獄が呼んでいる」の原作Webtoon『地獄』の日本展開を行った、双葉社の尹勝鏞(ユン・スンヨン)さんのお話です。

「二極化」というのが、日本のマンガ作品はこれまでの通りの流れ、Webtoonは読み手も内容も価格も違う形でと、この2つの流れが出来ていきそうというお話ですね。まさに過渡期だなぁというところですね。


日本で一番クリエイターにフレンドリーなWebtoonスタジオによる「創作満足度No.1プロジェクト」始動!

早い段階からWebtoon進出に名乗りをあげ、すでにcomicoなどで3作品をリリース済みのSORAJIMA社から、特にクリエイター向けの記事が出てきています。「創作満足度No.1プロジェクト」ということで、以下4つを特徴に上げています。

・ 専属契約による囲い込みを推進しない
・信頼できる実績、ヒットにコミットします!
・質の高い編集者陣によるコミュニケーションの密度と圧倒的スピード
・良心的かつ明朗な報酬設計

なるほどと。

筆者はこの中で「ヒット」という言葉が気になったので、ツイートしたところ、ソラジマ代表の荻原さんよりレスをいただきました。

なるほど、リクープラインを超えたということなのですね。普通のマンガ制作で、初出から3作出して全てが黒字というのはなかなか無いと思いますので、3作全弾必中は凄いなと思いました。

また、ここまで様々なWebtoon進出企業がギャランティーや印税についての情報を公開しています。以下にここまで私が確認している、3社の例をご参考まで紹介させていただきます。
(公開タイミング順)

(1) Studio No.9
https://note.com/takuma828/n/n99f3ea7c81d4
(2) LOCKER ROOM
https://note.com/yutaasaoka/n/n6fc540e7f4c7
(3) ソラジマ(当記事)
https://note.com/sorajimastudio/n/na7fab87109a8

そのうち、表にしてみたいなと思っているのですが、私はデザインセンスが無いので、どなたかが綺麗にまとめたものをご紹介させていただきたいななんて思ったりします。それにしても、みんなnoteですね。


viviONの電子コミックストア「DLsite comipo」のWEBTOON作品の配信にセルシスが提供する電子書籍ビューア「CLIP STUDIO READER」が採用

DLsiteのcomipoも進んでいるようです。そもそもDLsiteのviviON社は自社開発力があると思うのですが、そこを敢えてのセルシスビュアー使用なのですね。何か狙いがありそうです。


ギークピクチュアズと電通、「WONDER TOON LAB」を発足 スマホに特化した縦スクロールコミックの制作から展開までをフルサポート

今週の新規参入ですね。電通とギークピクチュアズ社のWebtoon展開とのことですが、GP社は、映像やキャラビズなどに実績のある会社のようですね。


マンガー海外関連ニュース

売上げ前年比2倍以上? 米国で爆発した2021年の日本マンガ

既報の「日本漫画北米で好調」というニュースを、数土さんが掘り下げてくださったものですが、北米の漫画市場が試算によると270億円→700億円ほどに大躍進したとのこと。これはほとんど紙の話ですよね。

先の出版月報のデータの話ではないですが、長い間かけて定着してきた海外の漫画市場が花開いたのも、近年のマンガ業界の大きな変化となりそうですね。


マンガ制作会社・シュークリームがBLの海外展開を本格化、海賊版問題への対策として

シュークリーム社はBL作品制作で実績のある編集プロダクションで、近年「from RED」などオリジナル作品媒体も展開開始しました。

日本の豊潤で濃厚なBLを海外に出す際に、表現がネックになることが多く、例えば日本のBLコミックが人気というある国に、日本で一般向けで販売されているBLコミックを輸出すると、実に半分ほどのページを黒ベタで消されてしまい、それでも紙で出版されるなどという事例もあったりします。

近年は中国でもBLに強い規制がかかりました。ライトBLものが日本以外の原作をもとに次々とNetFlixなどで映像化されるなか、BL表現の先進国(作品が多かったり、業が深いという意味で)であろう日本のマンガが、なかなか輸出に向かないというような話題は、ここ数年続いていたりします。

そこで、海賊版対策はもちろんですが、日本を起点にする電子コミックなどでBLコミックを販売していこうというのがこちらの取り組みですね。多言語展開も欧米からアジアまで、広く行うようです。

当然ネット上での取組なわけですけど、日本で展開するので、日本に見に来てもらう形をとるわけですね。


漫画村問題、クラウドフレアを漫画家が訴えた裁判で逆転勝訴 足掛け4年、「少しでもいい前例になってくれたら」

日本の場合、漫画の著作権者は漫画家個人に帰属することが一般的なため、こうした訴訟については漫画家自身が強い意志を持って取り組まないとなかなか先に進まないことが難しいところでした。

このケースでは、漫画家のたまきちひろさん自身が強い意志を持って裁判を4年間もつづけたこと。そして、クラウドフレアの開示請求周りについて、マンガ原作者としても有名な中島博之弁護士が、日本国内からしっかりと開示請求を勝ち取ったことなど、海賊版対策の中では、いくつか進捗したところが見える明るいニュースと思いました。

日本の法曹界も、この件における米国事案に詳しい方が生まれていくことは歓迎できるのではないでしょうか。どなたかカワンゴさんに教えて差し上げてください。


マンガー国内ニュース

今週Twitterをにぎわしたものとして、今年参院に出馬予定の赤松健さんが「ここが変だよマンガ業界! 〜変なしきたり集&電子書籍の闇〜」というTwitterスペースを開催しました。以下ツイートからアーカイブも聞けます。

業界で陰に日向に話題になったことや、今後も物議をかもしそうな様々なことが論じられました。

個人的には、漫画家さんの著作権について「職務著作物」の扱いについての話題が気になりました。もともと広告漫画やDC/ マーベルと言ったアメコミの世界などでは一般的で、基本的に著作権を漫画家自身が持つ日本の創作系マンガ界とは違う体系のものなので、Webtoonのブームで、新たにここの話題が出てきた形だなと思いました。

ここは新しいところですので、しっかりこれから整理していく必要があるかなと思います。また、若い漫画家さんたちの意見も興味深かったです。

また、この流れから、あの長年マンガ業界でなぞのひとつとされていたことが一つ解決したような面白い展開もありました。

「漫画家の印税が10%ということについて、その始まりは?」という話題が出たのですが、これについて森川ジョージ先生が、後にツイートをしていて話題になりました。そこにひとつの解がポーンっとなげられました。

これは、現在の印税率の妥当性ということではなく、何が起源だったかということのついて「100年前からそうだった。これに経済合理性があった」ということが書かれていますね。わたしもこれは初めて見ました。すごい。


その他ニュースご紹介(コメント無し)

以下、コメントなしになりますが、ご参考まで。


イベント告知系

海外マンガ交流部会 第14回公開研究会「マクラウド『マンガ学』再考」

最後は告知です。3/13(日)にZOOM配信です。

マンガ学会は興味があってもなかなか行けなかったのですが、最近はこうして配信でみることができるのが良いですね。


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