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「月光彫刻師」のイ・ドギョン氏に聞く、ウェブトゥーンシナリオ&コンテの作り方【前編】

こんにちは。
フーモアの佐々木です。

新潮社さんの新作「底辺魔術士~工作スキルでリスタート~」がピッコマで連載開始されましたね。

いまの売れ筋であるハイファンタジー転生ジャンルで、しかもややトレンドの転生後幼少期からのスタートなので国産ウェブトゥーンの中でも注目の作品だなと思います。


webtooninsight Japan主催のオンラインイベントで、月光彫刻師やテイミングマスターを代表作に持つArc Studio代表のイ・ドギョン作家の≪ウェブトゥーンシナリオ&コンテの作り方≫のまとめになります。

イ・ドギョンさんはD&Cメディア、Intimeを経て、一昨年ARC STUDIOを設立した韓国の有名ウェブトゥーン作家さんです。

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月光彫刻師

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以前の投稿でも取り上げましたが、ゲーム化もされています。


テイミングマスター

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イベントは参加者からの質問に答えていただく形式で、シナリオやコンテのみならず、ビジネスまわりやコンテ以降の制作に関するお話など盛りだくさんでしたので、前後編に分けさせていただきます。
前編は【原作】【シナリオ】に関するお話のまとめになります。


質問1:日本のライトノベルと韓国のウェブノベルの違いは?

キャラクター設定が日本と韓国では最も異なると思っています。
日本では個人の幸せやスローライフを追及するキャラが非常に多い一方、韓国では自分の成功のために頑張るキャラクターが人気です。
そのため、日本でAというキャラクターが人気でも韓国ではBというキャラクターが人気になるケースが多々見受けられます。

最近の傾向でいうと、いまの韓国の男性は恋愛に夢を抱かない傾向にあるため、男性向けラブコメが流行りません(悲しいです…)。そのため、作品内でも恋愛に関する要素がほとんどありません。最近のキャラ分析をしても強い男性主人公が多く、読者も魅力的に感じています。
愛の不時着など日本でも人気の作品はありますが、恋愛系のジャンルは女性目線のものが多く、女性に受ける作品が多いです。Kドラマと言いますが、日本の良いところと、アメリカの表現方式を混合したようなドラマが受けています。


質問2:質問1でのキャラクターの違いはあるが、日本で韓国のwebtoonが人気があるということは、日本でも読者が望んでいると思うがどういう印象を持っている?

キャラクターの部分は文化が違うので、差などは出てきますが、人間が感じる共通の感情があります。そういった共通の感情を描写した作品は、人間に訴えかけるので、国籍に関係なく人気の作品だと思っています。例えば、エジプトのピラミッドの文章にも書かれていますが、死に関しては共通の感情があり、自分の国にない文化を魅力的に感じる部分があります。
日本と韓国は似ているようで違うので、その辺りが受け入れられているのかなと思います。


質問3:日本だと、なろう小説からのコミカライズは人気がある。webtoonは韓国原作が日本でも受け入れられる。今回のイベント視聴者は日本原作がメインだと思うが、webtoon制作の際、何に注意したらいいか?

どう組み立てるかがもっとも重要です。
小説とwebtoonは媒体が異なります。媒体によってどう見せるか。小説の場合はキャラが多く登場しますが、webtoonはキャラが多いと大変です。その場合はキャラを削除したりします。作中のイベントもビジュアル的に必要であれば入れますが、必要がなければ削除します。原作はソースに過ぎないので、それを「どう組み立てるか」が大事です。

webtoonの基本は、横の漫画です。韓国webtoonは日本の横の漫画の影響を受けています。
webtoonは最初はモニターで読んでいたので、漫画の演出の影響を受けていましたが、最近のwebtoonは携帯になりました。デバイスが変わっただけではなくて、読者の経験が変わったため。演出も携帯がベースになっています。最近、夏に出てくるホラーwebtoonで幽霊が出てくると携帯が揺れるなど、携帯でどう演出していくかを意識した作品作りが活発です。


質問4:どう組み立てるかというのは原作をバラバラにしてウェブトゥーン用に再構築することだと思うが、どの程度どういう風な作業になるか?

原作をwebtoon化する場合、まず第一に、読者の立場でこの作品をどこが面白いと思っていて、どの個性をより良くするかを理解しなければなりません。キャラの個性などを理解すること。自分の好きなキャラはそうじゃなかったのに…と原作読者から言われないようにすること。例えば、ミュージカルでもキャラをどう理解するかが重要になっています。キャラを残して、話やストーリーは作り直す形でも良いです。キャラをどう理解し、webtoon化に際してどう作ってていくかという作業になります。


質問5:原作をバラバラにして再構築する手間を考えると、そもそもwebtoon向けに0から作るというのはダメなのか?一度、小説などにして原作を作る必要があるのか?

実際webtoonはオリジナルから作られているものが多いです。0から作られているものが7割。原作ベースは3割。ノベルは原作が人気があるから投資をしやすく、その分たくさん陣営を確保できてクオリティ高くて目立っていますが、オリジナル作品が多いのが現状です。


質問6:批判的な意味ではなく、Webtoonは「キャラクターが立っていない」という指摘が出ることがあるが、その点はどう思うか?

キャラクターが立っていないという指摘には大きく2つ理由があります。
1つ目は、そもそも原作のキャラが個性的じゃない場合です。韓国ではサクセスストーリーが流行っており、ストーリーの部分に集中しすぎてしまうとキャラが死んでしまいます。
2つ目は、韓国ドラマはこうだよね、というパターンとして作るケースがあり、それがキャラの個性を殺します。それに沿って作るとキャラが立たなくなってしまいます。


質問7:日本のなろう小説はユーザーの反応が良ければ同じ章を延々と続け、悪ければ打ち切ってさっさと次の章に移ってしまうと言われる。韓国のWEB小説や、ウェブトゥーンの展開の早さはどういった理由から生まれたと思うか?

日本のなろうと、韓国のwebtoonは似た構造になっています。読者の反応を見れるという意味で似ています。作品が面白いか面白くないかが早く分かるから、作家がそれを見て、反応が悪かったら、作品を修正することもしている作家さんもいます。それが展開の早さに繋がっています。


質問8:シナリオの作り方についての質問!次の話にもっていくときのヒキの作り方のコツがあれば教えて欲しい!

次の話を読者に楽しみにさせるのが大切です。期待させて期待したものを出さずに終わる。読者に好奇心をもたせた状態で終わらせるのが大切です。昔は、主人公が何かに驚いて終わるというのが多かったですが、乱用すると結局離れていきます。読者の方が興味を持ってくれそうなものをつくり、それを見せずに終わらせるというのが必要です。


質問9:「Webtoonはスナックコンテンツ」と呼ばれている背景は理解できるが、一方で、世界観が練られた複雑な作品や、「テンプレ」に頼らない作品もヒットしているように思う。後者のような作品も受け入れられる理由について、どう考えているか。やはりそういった作品もWebtoonのフォーマットに合わせた脚色をしているからこそ、読者が離脱しないということなのか。

面白ければ良いです。
スナックコンテンツが人気がある背景は、読者が現実で辛いから、それを慰めるようにwebtoonを消費しているんだろうと考えています。なるべく読者が頭を使わなくて読めるようにというのが好まれています。
頭を使わなくても面白い作品であれば、フォーマットに合わせた脚本じゃなくても良いです。読者の興味を惹ける、魅力的な作品が重要であるため、面白ければ良いということです。


質問10:ヒットWebtoonは小説原作のものが多い中で、先生は、日本の漫画原作のWebtoonを作ったらヒットすると思うか?

ヒットすると思います。例えば、鋼の錬金術師は韓国でwebtoon化(バーティカライズ)されていてヒットしました。webtoonの演出が素晴らしかったと思います。BLEACHや呪術廻戦など特に変えずともヒットするであろう作品や、賭ケグルイなど演出を加えることでヒットする作品などがたくさんあると思います。


質問11:最後に、月光彫刻師やテイミングマスターの制作の際に意識した点は?

月光彫刻師はキャラクターの心理描写に注意しました。テイミングマスターはアクション。本人が戦うというよりは召喚獣が戦うため、効率よく見せるにはどうしたら良いかを考えていきました。


いかがでしたでしょうか?
まだこれで前編という。。。ちなみにイ・ドギョン先生のスタジオには”魔木刀「締切厳守ノ剣」”という木刀が置いてあるそうです。(非常に柔和な方なのに自分に厳しい!)

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”魔木刀「締切厳守ノ剣」”

また後編をお楽しみにしていただけると幸いです。


最後に弊社募集です!
フーモアはグローバルwebtoonスタジオとして最新かつ最先端の情報を持ちながらwebtoon制作をしています。このような環境で働けるのはある意味でチャンスだと思っています!是非クリエイターの方々のご応募をお待ちしております!

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 株式会社フーモア 担当:佐々木真史
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