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小説「オレンジ色のガーベラ」第2話

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第2話



「ちひろさんは、見える、聞こえるっておかしいことだと思いますか?」

 話はそこから始まった。

 わたしは、みずほに協力すると決めた。でも、認識が違っていたら、どこかで協力体制は崩れるし、不和が生じる。それを避けたかった。

 ……というのは表面上の話しで、みずほの考え方、底辺にある思想について知りたかったというのが本音だ。

「宇宙では知らないことがた〜くさんあるんですよ。今、解明できていることって、わずか5%でしたっけ?そのくらいわたしたちは何にも分かっていないんです。
 例えば、宇宙人がいるか、いないか?そういうことも。
 わたしはいるって知っていますけど」

 みずほは静かに微笑んだ。そして、頬を染めながら話を続けた。

「わたしの話しを理解してくれそうな人に出会えて、嬉しいんです。今まで話しを聞いてくれる人がいませんでしたから」

 わたしはうなずく。わたしだって、誰とも心の奥についての見解を共有したことはない。

「ねぇ、おかしいんですよ。昔は見えることを容認していたと思うんです。座敷わらしとか。あ、アニメの世界ではアリなのか。『まっくろくろすけ、出ておいで!』とか」

「あぁ、『となりのトトロ』ね!」

「大人になると、見えるのがおかしいというのが常識になっているみたいで。まぁ、霊媒師とかいますけど、そういうのって、怪しい職業扱いだし。ものすごく困ったときにこっそり相談に行って、多額の請求をされるイメージ!」

 たしかに。みずほの言うことは的を得ている。

「見えても怖くなれば、いいんですよ。聞こえたって、いいこと教えてくれるんなら。でも、怖いって思っちゃうんですよね。なんででしょうね?」

 そうか。そこを考えたことはなかった。

「見えないものは怖い、って昔から教えて来られたからですよ。ちひろさん、幽霊って言ったら一般的にどんなイメージですか?」

「柳の木の下で、足が無くて、恨めしや〜って」

「あはは、わたし世代はあんまりそのイメージないんですけど」

 みずほは、爆笑気味に答えた。

「わたしたちの世代は意外と漫画やアニメやライトノベルで異次元世界のことに馴染んでいたりするんです。だから、そこまで怖くない。どちらかというと、上の世代、大人からの刷り込みのほうが怖い」

「お!刷り込み、という言葉を使ったねぇ」

「はい。この世の中、あらゆることが洗脳、刷り込みだと思っていますから。だから、見えたり聞こえたりするだけで、病院送りとなるんですよ。
病氣ではなく、靈が見えている、聞こえるだけなんです。
 靈の存在を肯定する、そこからだと思うんですよね」

 靈の存在を肯定する。
 今の大方の常識からは外れている。
 靈は認めているけど、大っぴらに肯定していない。そんな世の中だと思う。

 そして、みずほは賢い娘だなぁと、改めてちひろは思う。

 キラキラと目を輝かせながら語るみずほには、迷いの微塵もない。それが若さというものなのか?

 みずほは続ける。

「実はほんの少しずつ、意識が変わっていったらいいなと思ってTwitter始めたんですよ。」

 みずほはスマートフォンを開いて、Twitterのアカウントページを見せてくれた。

「意識改革っていうと大きすぎるけど、興味持ってくれる人が一人でも、『あれ?今までの認識っておかしかったのかな?』って思ってもらえたらいいなと……」

 いきなりでっかいことをしようと思わないところに、誠実さを感じる。

 コツコツ、でも確実に積み上げていく感じ。

 みずほは病気する前から、何か一つのことに集中して取り組んでいたのかもしれない。

 みずほのTwitterアカウントをフォローし、これからみずほの活動を応援することを約束した。

「あ〜!こんな時間!油売ってないで早く帰ってきなさい、ってお母さんに言われてた!」
 みずほは、慌てて身支度を始めた。

「お茶、ごちそうさまです。
 そして、お話しを聞いてくださり、ありがとうございました。ちひろさんに聞いてもらえて、嬉しかったです。
 世界変えていきましょうね!」

 笑顔ででっかいことを言って、みずほは丁寧に頭を下げた。

「みずほちゃん、ありがとう!
またお話ししましょう。世界、変えようね!」

 純粋さと太い信念を持った少女とのストーリーの幕が開けた。

みずほのTwitter https://twitter.com/mizu_0123456789
アカウント @mizu_0123456789

(第2話1,735文字 トータル文字4,627文字)

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