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子供のためのオルセー美術館(58)ジェローム・仮面のなぞ/ごっこ遊び(オルセー美術館新規購入作品)

勇者ゆうしゃごっこ

エメラルドのマントをはおって
には、木でできた古代こだい英雄えいゆうけん、ハルパー。
あの子はいったいなにをしているんでしょう。

あたまっかっているものは?


おめんだ。
不気味ぶきみかお土色つちいろ、大きく目を見開みひらいてあかがたれています。


あ、これは………

ヘビ!
あたまの上にもかおのまわりにもヘビがニョロニョロとはりついている。


あたまにヘビといえば……そう!
おぼえていますか? 前にも出てきた、

メドゥーサです。

この子供こどもは、メドゥーサのおめんをつけているのです。


ぼくは、いまたたかってきたところ

ひといしにしてしまうメドゥーサをやっつけた、
英雄えいゆうペルセウスなんだ。

男の子はくちびるをきゅっとむすんで、こちらをました。
正義せいぎ味方みかたペルセウスごっこをしていたのです。


画家がかのジェロームは、子供こども空想くうそうの中で夢中むちゅうになってあそんでいるのを見て
むかしのおはなしをまっすぐにしんじることができる子供こども純粋じゅんすい姿すがたきました。

メドゥーサのおめんのはげしい表情ひょうじょう、そして
正義せいぎ味方みかたえんじた子供こどもしずかな目。

この全然違ぜんぜんちが正反対せいはんたい様子ようすは、不思議ふしぎ空気くうきをよびおこして
ひとを、むかしむかしの見たこともないおはなし世界せかいれていきました。


Jean-Léon Gérôme
Enfant avec un masque
Entre 1840 et 1856
ジャン=レオン・ジェローム
仮面をつけた子供 1840〜1856

2023年春、オルセー美術館はジャン=レオン・ジェロームの絵画『仮面をつけた子供』を収蔵した。
この偉大な画家の作品の中でも特異なこの絵は、トンド(円形)形式で描かれ、謎めいた要素を残しており、すでにオルセー美術館に収蔵されているこの画家の多くの絵画や彫刻に加わる貴重な作品である。
その主題、モデルの正体、正確な年代、制作された背景など、さまざまな点でこの作品は非常に謎めいており今なお大きな魅力を持っている。
幼い子供の胸像と顔が描かれておりその目は見る者に向けられている。濃い青緑色を背景に、子どもはエメラルドグリーンのゆったりとした衣服を肩にかけ、頭には蛇と朱色の長い髪のついた薄茶色の仮面をかぶり、細い紐で固定されている。左手には小さな木刀の柄とガードを持っている。
メデューサの首を剣で切り落としたギリシアの英雄ペルセウスだろうか。仮面の赤い髪は、石化したまなざしを持つ怪物が流した血のことを指しているのだろうか?ジェロームは、真の神話上の人物を描いているのではなく、想像力を自由に働かせていくつかのオブジェで遊んでいる子供を見せているに過ぎない。

musée d’orsay 

お読みいただきありがとうございました。
小さな勇者の精悍な顔からは紛れもない本気を感じました。
大人もこんな目をした時があったのですね。たまにはこんな目で、まわりの景色を見たり絵を見たり、そして遊んだりしてみたらいかがでしょう。
まだまだ小さいお子様がまわりにいらしたら、この絵と同じ澄んだ夢中の目を、どうぞ大事にしてあげてください☺️
昨年春オルセー美術館が新規に購入した作品をご紹介しました。

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