子供のためのオルセー美術館(141)白馬と戦うもの・ルドン/天井のドラクロワから(ルーブル美術館)
空飛ぶ白馬と
昔のお話に出てくる白馬は、空を自由に駆けまわってどこにでも飛んでいけます。ほら、こんなふうに。
ルドンは神話のお話を、夢の中にいるようなきれいな色のパステルで描きました。
白馬たちは、その背に光を受けて浮き上がり、
まっすぐ上へ行けば行くほど、空は晴れやかな色になります。青やエメラルドの緑はきらきら輝いてまぶしいくらい。
けれど、下の方では暗い不気味な闇に、なにかうごめいています。
あの黄色いしましまの丸いものは、いったいなんでしょう。
ルーブル美術館で見たものは
ルドンは、若い学生の頃、ルーブル美術館でドラクロワの絵を見ました。
天井を見上げたとたん、あっと息を飲みました。
この光と闇!
太陽の神アポロンや白馬たちは光り輝いて、勝利の喜びがあふれています。
ところが、暗闇には、恐ろしい獣の恐怖に苦しむ人。
ルドンは驚きました。
闇に勝利した光のお話の恐怖や喜び、その時のさまざまな気持ちが、この一枚の絵に全部描かれていたからです。
ルドンは、ドラクロワにならって、アポロンと馬の神話の絵を何枚も描きました。
これはなに?
さあ、もうわかりましたか?
あのニョロニョロした黄色いのは、トグロを巻いて火を吹く恐ろしいヘビの怪物ピュトン。
アポロンのとどめの金の矢がささっている!
そして、白馬のうしろ、輝くオレンジ色の中には、太陽の神アポロンがいるのかもしれません。
ルドンは、この恐ろしい戦いの勝利の後にやってくる喜びや幸せの気持ちを、パステルの色彩で表現したのでした。
ODILON REDON 1840-1916
Le Char d'Apollon vers 1910
Pastel et détrempe sur toile
オディロン・ルドン
アポロンの戦車 1910
キャンバスにパステル、テンペラ オルセー美術館蔵
Apollon vainqueur du serpent Python - Galerie Apollon
Eugène Delacroix 1850-1851
大蛇ピュトンを倒すアポロン - ギャルリー・アポロン
ウジェーヌ・ドラクロワ 1850-1851
ルーブル美術館蔵
お読みいただきありがとうございました。
ルドンはモネと同じ年に生まれた画家でしたが、自然や現代生活を描く印象派には全く興味を示さず、内なるもの、目に見えない自分の中で感じたものを表現しようとしました。
ドラクロワの絵に見えるロマン派の画家が細心の注意を払って描いた馬車とギリシアの神は、ルドンのキャンバスには見つけることはできません。でも、よくよく見れば、オレンジの光の中にアポロンの姿を感じられた方がいるかもしれません。
この絵でルドンは、自分が感じているものを色彩だけで描き上げました。パステルの繊細さも見事ですね。
ドラクロワとルドン、今回はオルセー美術館とルーブル美術館から、ふたりの巨匠の作品をご紹介しました。
オルセー美術館企画展2023 パステル・ミレーからルドンまで デモビデオ30秒